第2話 終極の調律神に至るまで(中編)

 そして、私は倒れた。もはや限界だった。大部分は倒したとは言え、まだ、3000はいる。魔力はすっからかん。手も足も動かせない。秘奥義を使ったことでも使えない。

魔物が私の近くにゾロゾロと近づいてきた。そして、私は食われ始めた。手足を噛みちぎられ、殴られ、蹴られた。体にはあざが出来、血が吹き出ていった。これで終わりかと思った。ああ、死ぬ前に美人と付き合いたかったなぁ。⚪︎貞も卒業したかったなぁ。まあ、仕方ないか。

 

 そう、諦めていた時、あたりの魔物達の首が飛んだ。

「血だらけではないか、大丈夫か?生きているか?」

声をした方向を見ると、そこには、黒いポニーテールの髪に黒い目、袴を着て、刀を持った少女が立っていた。服装から東の方向にある、サムライという奴だろうか?

「何とかな。」

「そうか、ならこれを飲め。」

そう言われて差し出されたのは、魔力回復ポーションに超高級回復薬だった。

「こんな、高い物、受け取れぬよ。」

「怪我人が何を言っている。それに其方ほどの実力者を殺させるわけにはいかぬ。申し訳ないと思うなら、どうだ?私たちの旅についてきてはくれぬか?」

「旅?」

「ああ、私たちは言わば勇者パーティという奴だ。」

「いいだろう。私の名はゲイブ。貴女の名は?」

「私はカグラ・ツクヨミだ。気軽にカグラと呼んでほしい。どうか、よろしく頼む。」

それが彼女、カグラとの出会いだった。


 そして、私は高位魔族を討ち取り、魔物を倒し、被害を最小限にした功績で、報酬に大量の金と騎士爵、そして勇者パーティに加わる名誉を王族からもらった。都合よく利用しようという魂胆だろうが、こちらとしても都合がいい。乗らせてもらうとしよう。

 

 そして月日は流れ、魔王城に辿り着いた。途中の話もしたかったが、それをすると長くなりそうなので、割愛する。(メタいとは言ってはいけない。)

現在の勇者パーティーこんな感じだ。

勇者 男 カイロス・ラムニス

魔法使い 女 レニス・エルシア

僧侶 女 ラクシャ・ロベリア

戦巫女 女 カグラ・ツクヨミ

タンク 女 シャイラ・エスティマ

雑用兼魔法剣士 男 ゲイブ・アイン

勇者はこの国の第一王子でぶっちゃけ、騎士爵を持っているとは言え、私以外は全員貴族か教皇の娘とかである。それでも、平民差別をしないだけマシではある。雑用も、こちらから望んでやっていることだし。

「ここまで長かった。いくつもの艱難辛苦を乗り越えついにここまできた。勇者として、王子として、ここで魔王を討ち果たす。」

「私の魔法で敵を焼き払ってあげるから、安心してね、カイロス。」

「オレがお前を守ってやるよ王子。」

「悪しき魔族を討ち払う、これは聖戦なのです。」

「支援と友軍は任されよ。」

という感じで、士気はいい感じだ。

 

そして、魔王との戦いが始まった。

「フハハハハハハハハ!さあ、見せてみろ、お前達の可能性を。その上で、魔族の王として貴様らを討ち滅ぼしてやる。死んだ家臣達のために、我は負けぬ。」

「魔王よ、たとえどれだけお前が強くとも、俺たちは負けない。お前を倒し、平和を手に入れる。」

「平和など脆い。支配することで秩序を保つ方が良いに決まっておる。それが否だというのなら、力で示してみせろ勇者どもぉぉぉぉ!」

 炎が燃え上がり、雷が鳴り響く。魔王はかすっただけで死ぬような魔法が私たちに向かって連射されていく。それらを掻い潜り、魔王と斬り合うが、それすらもこちらと互角以上に斬り合ってくる。傷を負うたびにラクシャが癒し、カグラが支援し、シャイラが時間を稼ぐ。

「食らいなさいな、極級複合風・炎属性魔法 ヘブンズフレアストーム」

「無駄だ、極大魔法邪水龍・九十九首、同時発動、闇ノ業火」

レニスの魔法を受け切り、さらに魔法を発動していく。なんたる強さか。それでも仲間達の支援と勇者の聖剣での攻撃がどんどん魔王にダメージを与えていく。

「おのれ、人間風情がぁぁぁぁ!!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

そして永遠に続くと思った戦いは、カイロスの聖剣の一撃が魔王の心臓を貫くことで終わったのだった。

「ククク。我もここまでか。だが、魔族が居なくとも、貴様ら人間は戦争をやめぬ。敵が我らでなくなるだけだ。先に逝って待っているぞ。」

そして、我々勇者パーティは魔王を倒した。


国をあげて、それは喜ばれた。三日三晩祭りが繰り広げられた。カイロスはレニス、ラクシャ、シャイラと結婚した。カグラはどうするのかと本人に聞くと、彼女は

「ゲイブ、いや、ゲイブ・アイン。どうか私と結婚してくれ。」

そう言われ、勇者達の結婚式と同時進行で私とカグラの結婚式は行われた。色々な人々がそれを応援してくれた。今思えば、その瞬間が幸せの絶頂だったのだろう。

翌日、まさか、あんなことが起こるとは夢にも思わなかったのだから。










 

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