回想編①

第1話 終極の調律神に至るまで(前編)

※この回想編では鬱展開がありますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。



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 突然だが、神というのは2種類ある。善神や悪神とかいう分け方ではない。それは、純粋な神、いわば「純神」、もう一つは後天的に神の力を得て、神と至った存在、これを我々は「準神」と呼んでいる。私は、後者だ。

 では、なぜ、私は神となったのか。それを示すには幾星霜の時を遡る。


 私はかつては無限に近くある世界線の既に滅んでしまった一つの世界に存在した一人の人間だった。名はゲイブ。平民出身の魔法剣士であった。

その星には、魔獣、そして物語のように魔族、そして魔王がいた。私はそこで冒険者として働いていた。魔物を狩り、クエストをクリアして、仕事終わりにエールを飲む。そういう毎日を送っていた。


 ある日、私が冒険者として働いていた街に、魔物の大軍が現れた。高位魔族が率いて攻め込んできたらしい。その数、なんと5万。同僚の冒険者達と一緒に倒すなどと言える数ではなかった。故に、私を含め、その冒険者ギルドにて働いているトップレベルの冒険者が時間を稼ぎ、その間に街の人達を逃がさせた。

 

 もう、どのくらいの時間が経っただろうか。通信魔法でギルド長から全員逃げることができたという報告を受けた。故にほどほどに討ちつつ、逃げようと思った。だが、魔物はかなり殺したとは言え、まだ2万は残っており、高位魔族は未だ健在だった。対してこちらは幸い、死者はいないものの、戦闘離脱した者が殆どでまだ、戦えるという者は私を含め5人しかいなかった。そして、ここを抜かれれば、王都まで一直線に攻め込まれる可能性があった。

 「ギルド長、王都や貴族からの援軍とかはあるか?」

 「王族、そして貴族がそんなまともならそもそもここまで攻め込まれなかった。あいつらは自分の身可愛さに兵を出さず、引きこもっている。ここの領主も同様にな。」

 「要するに私たちは捨て駒にされたということだな?」

 「ああ。残念なことにな。だからこそ見捨てた奴らのためにお前らが戦うこたぁねェ。今すぐ逃げろ。俺が許す。」

 「そうしたいところは山々だが、敵に囲まれている上に、高位魔族も健在な故、背を打たれるのはまずい。せめて高位魔族は討つ。そして、私以外の冒険者をそちらに送る。受け入れは任せた。」

 「やめろ。自己犠牲などはやらない。何より、友人を殺されてたまるかよ。」

 「安心しろ、ギルド長、いや、ハルグス。死にはしないし、むしろ巻き込まないためだ。ただ、そうだな。生きて帰れたら、一杯奢ってくれよ。」

 「ああ、もちろんだ。高いのを奢ってやる。だから、生き残れよ。」

それを以て通信魔法を切った。そして味方全員が入り込むよう、結界魔法を作り、転移魔法を私以外の全員にかけた。

 「お前らまで死ぬことはない。あとはまかせろ。」

そう言ったら一人の女冒険者が声を上げた。彼女はいわばヒーラーだった。

 「それでは、ゲイブさんが。一緒に逃げましょう?」

 「すまない。援軍をよこさず、引きこもっている貴族や王族どもはともかく、私たちと同じ平民を殺させるわけにはいかない。そして、友人も死なせたくない。」

 そして、その言葉を皮切りに全員をギルド長の元へ転移させた。


 「ふむ、一人残るとは。もしや見捨てられた可能性もあるが。お前の行動に敬意を払って、一瞬で殺してやる。」

魔物の死体が溢れる戦場で倒れ込んだ私に奴はそう言った。そして、敵の高位魔族が持った大斧が私めがけて振り下ろされた。




「秘奥義 滅尽穿華ウガチバナ




その声が戦場に響いた時、その高位魔族の心臓に剣が突き立てられた。











*高位魔族視点*

何が起こった。奴は魔物どもとの戦いでもはやボロボロだったはず。魔力も尽きて、剣も持ち上げられなかったはずだ。なぜだ、なぜだぁぁぁぁ!?まさか、隠していたというのか!?いや、あり得ない。そのような面倒なことをせずとも、全力で戦っていればいいはず。わざわざ、こんなことをするはずがない。どういうことだ?どういうことだぁぁぁ!?

いや、それ以上にたかが人間如きにこの魔王軍魔獣部隊の隊長たるこの私を、オルドス様を殺すなど、許さない、許されないのだぁぁぁぁぁぁ!


「ごちゃごちゃ騒ぐな。所詮お前はその程度だったということだ。さあ、死ね。」

そしてゲイブの振り上げた魔法剣カルナグがオルドスの首を刎ねた。



 



 


 

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