第2話 深淵の大魔女

 そして、食卓についた。朝食はどうやら、パンとシチューのようだ。

「召し上がれ。」

「頂こう。」

 神とはいえ、この世界の法則には従わなければならない。何より、私のために準備してくれた物を拒むのは良くないことだ。何より美味しそうだし。

 シチューを口に含んだ。ピリッとした辛味がし、その後に仄かな甘さが温かさと一緒に湧き上がった。シチューを口に含みつつ、パンを食べると、パン自体にある味と合って、胃を満たしていった。控えめに言って、美味であった。

 「美味いな。特にこのシチュー、好みの味だ。」

 「え、ええ。それはよかったです。このシチューにはこの森で取れる、栄養のある薬草を含んでいるんです。これは私のおばあちゃんから教えてもらったシチューなんです。」

 そう、彼女はどこか悲しい目をしながらそう話した。そして、彼女も一緒に食事をしていった。

 

 食べ終わった後、セシリアと一緒に皿洗いをしながら、雑談を交わした。

「そう言えば、あなたの名前は何ですか。」

「神名は無闇やたらに話してはいけないのだが、あなたなら大丈夫だろう。ただ、神名を全て言うと、流石にまずいので、ギルファルガと名乗ろう。」

「ギルファルガさんですね。全てを話せないと言うのは、話したらまずい、具体的には弱点看破につながったり、その名前を発しただけでも、何かが起こったりと言うことでしょうか?」

そう、彼女はその理由を言い当ててみせた。謙虚なだけでなく、かなり賢いようだ。魔術よりもこれは神学に近いのだが、この世界はどうなのだろうか。まあ、それはおいおい聞いていくこととしよう。

「正解だ、流石だな。」

「深淵の大魔女ですので。」

「しかし、その深淵の大魔女なんて大仰な二つ名というのは誰かからつけられた物なのか?」

「ええ。決して自称とかではありません。ただ、この森が深い森なのでこの森に住んでいるからそう呼ばれただけなんですよね。」

どうやら深い意味はないらしい。そう思いながら、作業を進めていくのだった。


 時は経って昼頃

「それでは、森の探索に行ってきます。部屋はご自由にお使いください。ただ、薬品とか触媒とかを保存している地下倉庫には入らないでくださいね?」

そう言って、彼女はローブを羽織り、魔女の帽子を被り、薬品や触媒などが入った瓶を装備し、杖を持って、玄関に立っていた。

「ふむ。これでも私は結構強いぞ。それに、あなたにはまだ、恩を返せていない。あなたの目的にもよるが、手伝おうか?」

「よろしいのですか?この森には危険な魔獣や恐ろしい罠などもありますよ。」

「構わない。それで死ぬのなら私はその程度の存在であったということだ。仮に私が危険に陥っても見捨ててもらって構わない。それに、深淵の大魔女たる君の力も見てみたいからね。」

そう言うと、彼女ははにかみながら、ついていくことを許可してくれた。






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