かさぶた

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  かさぶた



悲しさはいつか

時が経てば

むず痒いほどの

かさぶたになる


悔しさもきっと

月日が行けば

こそばゆいくらいの

かさぶたになる


憎しみも

かさぶたになる

歯痒さも

かさぶたになる


すべての負の感情は

時が経てば

いつかきっと

愛おしいかさぶたになる


かさぶたになっていけないのは


やさしさとか

うれしさとか

晴々しさとか

楽しさとか

心地よさとか

われわれを喜ばせる方の感情

これらはいつも

みずみずしくなければならない


ならば

「さびしさ」はどうだろう


少なくとも僕の中で

さびしさはいつもみずみずしい


さびしさはきっと

その見た目より

人なつっこいのであろう


仲間分けをすれば

正の方の仲間なのであろう


「さびしさ」は大切な友だち

正と負の感情の橋渡し

さびしさをもっと

しっかり抱きしめよう


そう

あなたと出会えたのも

きっと

さびしさのおかげだから


            (了)

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