第2話 田舎者への洗礼ですか?

 僕と女神様の距離は彼女の呼吸を…息遣いを…感じる程に近づいていた…


『ゴゴンッ!』

「痛あい!」


 そうなんだ!彼女の美しすぎる顔に急接近した事(結局キスはできてない)と、彼女の甘い香りに出会えた事は引籠りの僕にとっては空前絶後の『幸』だった…

 続けたくは無いけれど、続けて『不幸』の方を説明しよう…


 僕と女神様の距離は彼女の呼吸を…息遣いを…感じる程に近づいていた…


『ゴゴンッ!』

「痛あい!」


 頭の前と後ろに痛みを感じた僕は徐ろに目を開いた、『!!!』僕は後頭部を殴られた勢いで身体が流れ女神様のオデコに頭突きをかましてしまったらしいっ!!これが『不幸』の始まりの方だ…


「うわあっ!スイマセン!スイマセン!!」コメツキバッタの様に何度も頭を下げて女神様に謝る僕を輩男やからおとこは強引に振り返らて渾身の一撃を僕の顔面に御馳走してくれた…

 

『ボタ…ボタボタ…』


 確かに鼻血なんて何度も経験しているさ…でも二十歳に満たない僕でも…いや!80歳になる老人だろうが滝のように流れる鼻血なんて滅多に拝めないよね!僕だって初めてだよ!

 鼻の血管をやられたんだろうな…痛くて鼻をおさえてうずくまる、てか鼻曲ったりしてないよね?!


「てめぇ何やってんだよ!」

『バリバリバリッ』

『ゴキッ!』


 痛くて目を閉じていた僕だけど、女神様が堕落して悪魔か邪神の様に怒号を発して怒り狂う様が感じられた。

 そっと目を開くと女神様の左脚だけが見える…(あれ?右脚は?)恐る恐る目線を上げると…『赤っっ◎☓□%!!』因みに言っておくが自分の血の色を言っているわけではない…女神様の御御足おみあし御御足おみあしの間の布地の色だよっ!!髪やドレスだけで無くさ何処までも赤だったよっ!!

 いやいや(有り難いが)そんな箇所を注視している場合じゃない!僕は目線を女神様の右脚に沿って送ると僕の頭の上を通過して…って!それじゃあ…!!!『ハ…ハイキック!!』が炸裂していた。

 女神様は悪魔か邪神へと堕落し赤いロングドレスの裾は縦に裂けて大胆なスリットの入ったチャイナドレスに変化していた、後日談だが女神様曰く「ハイキックじゃないよ上段蹴り!」だそうなんだが僕にはその違いが判らないよ…


「ナンダドシタ…heyツバキAre you OK?」


 椿と呼ばれた女神様の後ろに黒いスーツを着た大柄な二人の男が駆け寄ってきた…けど!

 なになに!ひとりは身長2メートル程の白人男性…てだけならまだしも筋骨隆々ゴリゴリのゴリマッチョ…いやいやそれでは足りない!本物のゴリラだよ!スーツなのに全身に纏う筋肉のシルエットがわかり過ぎる!!何食べたらその様な上腕二頭筋に育つのですか?!

 もう一人は更に背が高い黒人男性みたいだがどちらかと言うと細マッチョ?でも長い脚に長い腕…恐らくその身体能力は黒人特有の全身バネなんだろうね!きっとあだ名はMr.パーフェクトとかなんでしょ?!

 (ヤバイヨヤバイヨ)本日2度目のヤバイヨ頂きました…

 その二人の外国人男性をみて輩男達は歯止めが効かなくなっのかポケットからナイフを取り出した。


「ナニ?オレタチトヤルノカ?オマエホンキカ?」


 二人の外国人男性達は片言の日本語でそう言うとにやりと笑ってファイティングポーズですか?!


「だ…ダメですよ!これじゃあ喧嘩で済まないですよ!」


 僕は勇気を振り絞って言ってやった…その場から少し離れてからだけど…、そしたら輩男達が「お前は引っ込んでろ!」て怒られちゃった…いやもう肩外れたことも無かったことになってますよね…そしたら…


「おいおめえらそこ迄だ…」


 僕の後ろから声がした、警官登場か?!って振り向いたら「でたぁー!」紋付袴に白いストレートロングヘアーとロングおひげ!何処ぞの書道の仙人みたいな人!!


「おめぇら此処が鮫島組のと知ってて柄物エモノ抜いてんだろうな?!」


 嘘っ!本職来ちゃったよ!さっきエントランスに居た人ですよね!なに?今日の僕は大殺界ですか?!星座占いも12位ですか?!折角千葉から東京湾をまたいで都心での一人暮らしが始められたのに…ひと月経たずに千葉方面に逆戻りですか?何でもしますからで東京湾は勘弁してください!


「鮫島組の…鮫島平八!…会長…さ…ま…」


 輩男達は仙人みたいな人の名を口にしたら急に大人しくなったが更に「この赤髪の女はワシの娘じゃがそれを襲うとはおめぇ等度胸あるの〜…まぁ其処の事務所で茶飲んでいけや」と言われて身震いしながら仙人の従者みたいな人達にへと連行されて行った。


「椿よ…今日のは貸しじゃからな!あんまり御痛しちゃいかんぞ…」

「ありがと!先生!」

「これ!ワシのことはパパと呼べと言うとるじゃろ…ハッハッハッハッハッ」


 仙人…会長様は高笑いの声を上げながら事務所へと向かって行った、世の中には嘘のようなこんな話もあるものなんだと痛む鼻を押さえて呆然としていると不意に背中の方の襟を掴まれ、まるで猫でも持ち上げるように僕は宙に浮いた…


「ツバキ!コイツハドウスル?」


 !ゴリラの方に持ち上げられた僕はこの後どうなるのでしょう…


「マイク!その子は被害者なんだから持ち上げちゃダメ!」

「オー sorry! boy!」

「イエス!イエス!オッケーソーリーソーリー!」


 ここ数年間は受験の為に必死に勉強したさ!英語だって成績は良い方だった…なのに…外国人相手には無理だった!日本の英語教育はこれで良いのか?!!と心のなかで叫ぶ僕…

 

「君…鼻血大丈夫?はいこれ使って!」


 女神様が突然僕の前に立つとキレイな白いハンカチを渡そうとしてくれた、汚れるからダメですよ!て断ったけど強引に手を取られて持たされた…その時に触れた女神様の手は小さくてやわらかかった…


「君…さっきはアタシを庇ってくれたんでしょ?オデコは痛かったけどね!フフフ…」

 「すすすスイマセンでした!ありありありがとうございましたーっ!」

 

 恥ずかしくて情けなくて嬉しくて痛くて…色んな感情が溢れて抑えられなくなって…僕は脱兎の如く逃げ帰ってしまった。


 昭和ヤクザに始まってゴリラにバネ人間からの本職登場!でも極めつけは…赤パン女神♡…って!駄目だ駄目だ今日の事は忘れよう!悪夢でしかない!!

 まだ血が止まらない鼻を押さえながら僕は今年一番の速度で街を走り抜け病院を探した。


「クソッ!東京ってこえーっっっ!」





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