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彼の何が魅力的だったかといえば、その脚は魅力的だった。綺麗な素足をときおり揺らしていることがあったけど、そういった瞬間は、子供のようにさえ見えた。とはいえ勿論、子供にしては余りにも落ち着き過ぎていた。
彼は絶対に、既に大人だった。
・・・
彼は楽に座って、誰かと話していた。相手の人は不自然に立ったまま、彼の言葉をただ受けているみたいだった。
こんにちは、と私は彼に言う。うん、と彼は返事をした。
ミツギ「今日もたくさん坂を昇ってくるね。この人もだよ」
彼から”この人”と言われた人は、ただ立っていた。何か動いた気もしたけど、分からない。
「あなたはここに居るの?」
ミツギ「だって、坂を昇って来る人たちがいるから。ここがいいよ」
私は彼のとなりへ座った。彼は少し私に驚いたけど、すぐに気にしなくなった。
不自然に立っていた人はもう居なかった。
見下ろせる坂道に、古い民家が建ち並んで、青空と雲があった。
見上げても、また続く坂道に、錆びている自転車とか何も掛かっていない洗濯竿があったりするだけだった。
ミツギ「きみもここに居るの?」
「分からない」
思う間もなく、すぐにそう言葉を言った。
ミツギ「分かったら教えてね」
で、彼は下から昇ってくる人に気づいたみたいで、そっちを眺めていた。
まるで月を眺めるみたいに、坂の上にある無機質な安楽死施設を眺めてみた。一緒の日差しも眩しい。
彼の名前が『ミツギ』だと、そのあと教えてもらった。
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