第34話「厄介な展開」

(まさかお家騒動に巻き込まれてしまうとは…)


待ち構えていた想像以上の厄介事に、ロス邸を訪れたことを既に後悔し始めていた俺ではあったが、今更判断ミスを嘆いてもすべては後の祭り。


(ここまで具体的な話を聞いてしまった以上は…)


(もう共犯者みたいなもんだしなぁ)


いまさら依頼を断っても、モリスたちの疑念を招くだけだし…


継母一派へ秘密が漏れることを恐れるモリスたちは、どんな手段を講じても俺の口を塞ごうとするだろう。


市中ではそれなりに名声のある身の上なので、この場で殺されることだけはないだろうが、相手は一国の大臣と英雄の子孫。


適当な冤罪をでっちあげられての投獄はもちろん。


最悪の場合、ヒットマンを送り込まれての暗殺劇すら考えられる。


事情を聞く限り、デビットが被害者には違いないし、命がけで協力を拒む理由もない。


とりあえずは、モリスたちに協力する意思を示すために、デビットの治療を試みることにした。


ちなみに、日頃の調合業務やご近所さんへの診療ボランティアの結果、薬師のLVが36まで上がっているこの俺。


こんな状況下で打ってつけの状態異常検知スキル「四診」も有している。


さっそく、デビットの奴に寝室のベッドの上に寝転んで貰いスキャンを開始すると


(食物アレルギーです)


との予想外のアナウンスが頭の中に流れて来た。


(そういや、体調不良の原因って…)


(何も毒物混入ばかりとは限らなかったよな)


物騒な未来を回避出来そうな展開に、ほっと胸をなでおろした一方。


まだまだ発展途上のスキルな「四診」。


現状の俺のLVでは、食物アレルギーの原因がなんなのかまでは特定出来なかった。


(アレルギーの概念なんて説明しても…)


(この異世界じゃ理解して貰えないだろうし)


それどころか、継母一派をかばっているとみなされ、信用を失ってしまう危険性すらあった。


デビットの体調不良の原因が、毒物混入のせいではないことを納得して貰うためには、まさに悪魔の証明が必要な状況と言えるが…


さすがは、貴族のロス家。


執事が、朝昼夕の献立の記録やデビットの体調管理日誌などをつけていたため、原因究明の手がかりくらいは存在した。


デビットの体調の変化などを参考に、問題となる食品を洗い出す作業は、1日2日で終わるものではないだろうが……


無用な抗争を避けるためにも、面倒臭がっている暇はない。


アレルギー症状を緩和する薬を調合した後に


「現時点では、断定的なことを述べるだけの物証に乏しい状況です」


「いくつか資料を持ち帰り…」


「気になる点を調べてみたいのですが…」


とデビットに申し出てみると


「そういうことでしたら…」


「気兼ねなく必要な資料をお持ち帰りください」


との返答が返ってきたため、いったん自宅に撤収し、名探偵になりきってみることにした。

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Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します 夏田スイカ @suika-otoko

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