修道院 - 最終部分

リズを救出した後、3人のハンターは廃墟の建物の暗く湿った廊下を進んでいた。足を踏み出すたびに、苦痛と絶望が押し寄せてくるような気配が感じられ、遠くからは何かの叫び声がこだましてきた。


「ご主人様... 私があなたを救います、ご主人様... 返して...返して...」


その悲痛な声が途切れ途切れに響き、3人がその声の元へ近づくほどに、声は次第に大きくなり、凄まじい緊張感に包まれていった。


アダム「おい…これは不気味すぎる。あいつって一体何なんだろうな?」と小声でささやいた。


ヴェローネ「多分、失敗したヴァンパイアの変異体かもな。変身が失敗した場合、人間とヴァンパイアの中間の状態になることがあるんだ。通常、こういう失敗作は殺されるか、ヴァンパイアの奴隷として酷い扱いを受ける。中には怪物のように変形して、使い捨ての兵士にされる奴もいる。でも、こいつは主に執着してるようだな。」


リズ「あいつ、ムカつくわ…さっさと片付けましょう。」


アダム「でも、どうやってあんな奴を倒せるんだ?一応、半ヴァンパイアなんだろ?」


リズ「うん。でも、映画みたいなもんじゃないわ。日光や十字架なんかじゃ効かないの。」


ヴェローネ「その通り。日光で弱くなる奴もいるが、それだけだ。首を切り落とすか、灰になるまで焼くのが確実だ。よっぽどのことがない限り、こんなに暴れることはないが…。」


やがて3人は音のする部屋の前にたどり着いた。ヴェローネが最初に入り、続いてアダムとリズが入室した。部屋は薄暗く、邪悪な気配で満ちていたが、他には何も見当たらなかった。


ヴェローネ「さあ、出てこい。お前の話を聞いてやるから、何が起きているのか教えてみろ。それで、もし俺たちを助けるなら、助けてやるかもしれない。」


リズ「ヴェローネ、何をしてるの?」


ヴェローネ「心配するな。策がある。」


すると、異形の姿が姿を現した。それは背中を丸め、白い肌で、異常に長い腕と脚を持ち、完全に禿げ上がっていた。その目には憎しみが宿っていたが、悲しみも見え隠れしていた。


クリーチャー「人間なんかに取引するつもりはない!お前たちが主を騙したんだ!忌々しい…」


3人はその男を見つめ、予想していたほど恐ろしいものではないことに少し驚いたが、邪悪な雰囲気は消えなかった。


ヴェローネ「俺たちはお前を騙しに来たわけじゃない。ただ、主に何が起きたのか知りたいだけだ。話してくれれば、安全な場所へ連れていってやる。ヴァンパイアが騙されて誘拐されるなんて普通じゃない。誰がそんなことをしたんだ?」


クリーチャー「お前たちは、あの機械の半分の頭を持つドクターの仲間だろう!あいつが主を騙したんだ…私は強くなって、復讐してやるんだ!」


ヴェローネ「このドクターのことか?」 – ポケットから取り出した写真を見せると、クリーチャーが震えた。


クリーチャー「あいつ…なぜその写真を持っている…あいつが主を騙したんだ…」


ヴェローネ「俺もそいつを追っている。数年探しているが、見つけたら俺の手で殺してやる。」


クリーチャーは少し躊躇したが、やがてゆっくりと話し始めた。


クリーチャー「主と私は、人里離れた森の中の塔で暮らしていた。村人たちは彼を尊敬し、生きた動物を差し出してくれていたんだ。そしてある日、あの男が奇妙な依頼を持って現れ、主はそれを断った。でも、何度も訪れる度に主は追い返していたが、最終的に奴は不気味な怪物を送り込んできた。主は全ての怪物を倒したが、ある時血の無い怪物が現れ、やがて主は疲弊し、私を捕らえられてしまった。それで彼は屈した…。」


ヴェローネ「なるほど。そのドクターはそんな危険を犯すような奴じゃない。主の能力はなんだ?」


クリーチャー「彼には驚異的な再生能力があり、血を操る力を持っていた。世界中で彼ほど血を自在に扱える者はいないだろう。」


ヴェローネ「そうか。強力な力だな。続けてくれ。」


クリーチャー「ある日、血のない怪物が毎日現れるようになり、彼はその度に戦っていたが、とうとうある日、異形の怪物が私を捕らえ、脅迫したんだ。あの怪物が主を奪って以来、私は何をすればいいか分からなかった…」


ヴェローネ「なるほど。じゃあこうしよう。俺たちの本部に来て、安全な場所で血と治療を受けてくれ。その代わりに、君が支配している人間たちを解放しろ。いいか?」


クリーチャー「もしお前が約束を守れば、私は従う。」


ヴェローネ「俺の誓いの証として、血の契約を交わしたいか?」


クリーチャー「必要ない。お前が本当にドクターを追っていることは分かっている。ヴァンパイアはお前たちの敵ではなさそうだ。」


ヴェローネ「ああ、俺たちとヴァンパイアは平和な関係だ。200年前の大戦以来、古いヴァンパイアとは不干渉の協定を結んでいる。さて、人間を解放してもらおう。」


クリーチャーは古代の言葉をつぶやき、部屋を覆っていた霧が消え始めた。窓から差し込む光が部屋を照らし、青い空が現れた。組織の増援が到着し、町の住民は次々と解放されていった。


リズ「本当に良かったわ、助けてくれてありがとう。」


ヴェローネ「別に。けど、本当の仕事はこれからだ。報告書を書かなきゃならない。これが本当の化け物だな。」


アダム「はは…組織に入るのは簡単じゃなさそうだな。」


リズ「まあ、命をかける覚悟があれば大丈夫よ。」


アダム「(緊張した笑い声)そうか…やってみるよ。」


ヴェローネ「きっとうまくいくさ。さあ、ここを出よう。次の目的地は…イタリアだ。」

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