修道院の中で
修道院の扉が破裂し、破片が飛び散る。轟音が冷たく暗い廊下にこだました。ヴェローネは一歩前に出て、真剣な表情で床に倒れ込んだ青ざめたシスターを見下ろした。彼女の目は虚ろで、まるで魂が抜け落ちたかのようだった。
「俺のパートナーはどこだ?」ヴェローネは低く、鋭い声で尋ねた。
シスターは震えながら、かすれた声で答えた。
「彼女は…下の古い牢獄にいる…でも…あなたたちは生きてここから出られない…ここのシスターたちは全員、深淵に住む悪に…蝕まれている…あなたたち二人は…死ぬのよ…」
ヴェローネは冷ややかに口元を歪めた。
「いや、俺たちは死なないさ。」
彼は振り返り、目を見開いたまま様子を見守っていたアダムに手招きした。
「行くぞ、坊主。下に行く必要がある。」
アダムは一瞬ためらい、ヴェローネの背中にある巨大な聖剣をちらりと見た。
「“下に行く”ってどういう意味だ? こんなにシスターがたくさんいるのに。その剣、使うのか?」
ヴェローネは頭を振り、目を細めて暗闇の向こうを見つめ続けた。
「いや、この剣は聖なるものだ。こんな場面で使うわけにはいかない。だが心配するな。道中に現れる奴らはすべて叩き潰すさ。俺の後ろについて来い。背中は任せたぞ。分かったな?」
アダムは深く息を吸い込み、緊張で心臓が高鳴るのを感じた。
「分かった。行こう。」
二人は冷たく湿った廊下を駆け抜け、靴音が石の壁に反響する。時折、狂気に満ちた瞳で現れるシスターたちが、影の中から姿を見せた。ヴェローネは冷静かつ正確な動きで、彼女たちを次々と打ち倒していった。それはまるで無意味な障害物を取り除くかのようだった。後ろをついていくアダムは、足元に何か重く邪悪なものが漂っているのを感じ始めた。
数分後、ついに古びた扉を見つけた。それは時の流れで崩れかけていた。ヴェローネは扉の前に立ち、風化した取っ手に手をかけると、奥深くから不気味な風が吹き抜けてきた。彼は背中の剣の柄を握りしめたが、まだ使うつもりはなかった。
「ここか…」彼はつぶやきながら、扉を押し開けた。扉は軋んだ音を立て、暗く急な階段が姿を現した。
その空気は重苦しく、静寂が周囲を包み込んでいた。しかし、その静寂を破るように、遠くから女性の叫び声が聞こえてきた。
「シスターたちのクソッ!ここから出せ!服を持って来い、クソ野郎ども!ここから出たら全員ぶっ殺してやる!」
ヴェローネは静かに笑った。
「リズか…」彼は足を速め、アダムもその後に続いた。
二人が階段の下にたどり着くと、錆びついた鉄格子に囲まれた狭い牢獄が見えた。リズはその中におり、恥ずかしそうに裸の体を手で隠していた。彼女の表情は怒りと屈辱で紅潮していた。
「俺はここにいる、リズ。助けに来た。」ヴェローネは微笑みながら言った。
リズは信じられないような表情で彼を見つめた。
「神様ありがとう、ヴェローネ!遅いじゃない!もう何日もここにいるのよ!」
ヴェローネは彼女の姿を見て、さらに笑い出した。
「お前…裸じゃないか?」
「黙れ、ヴェローネ!」リズは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに体をさらに覆った。「そ、そういうの忘れてたの!早く服を探してよ、バカ!」
「分かった、分かった…アダム、早く彼女に服を探せ。」
服を探しながら、ヴェローネはリズに質問した。
「一体何があったんだ? なんでこんなことになった?」
リズは深いため息をつき、緊張を隠せないまま話し始めた。
「ここに来たとき、最初はシスターたちも普通だったの。親切で、私を歓迎してくれた。でも、下の街は最初から妙だった。誰も話しかけてこないし、ドアを叩いても誰も出てこない。仕方なく諦めて修道院に戻ったの。しばらく調査してみたけど、特に問題はなかったの。だけど、この下にある階段の扉に近づいた瞬間、シスターたちの態度が急変したの。すごく怒って、私が降りるのを禁止した。だから、夜を待ってこっそり降りたのよ。」
彼女は一瞬話を止め、緊張した表情で続きを話し出した。
「地下にたどり着くと、何かがあった。でも、それを確認する前に、シスターたちに捕まったの。気絶させられて、気がついたらこんな姿にされてた。聞いたら、『蒼白の者』は服を着た“食事”を嫌うって言われて…武器を隠してないかも確認するためだって。あとは…『主を恋しがる』とか『蒼白の者が愛していた』とか、訳の分からないことばかり繰り返してるの。」
アダムが古びたシスターの服を見つけ、しかめっ面で持ってきた。
「これ見つけたよ。古いシスターの服だけど…」
ヴェローネは服をリズに渡しながら言った。
「マシだな。さっさとこれを着ろ。」
リズは鉄格子越しに服を受け取りながら、アダムに視線を向けた。
「この子、誰?」リズはまだ混乱しているようだった。
「あとで説明する。まずはここから出るぞ。」
暗闇はまるで生きているかのように息づき、修道院そのものが彼らを見守っているようだった。邪悪な何かが彼らを影から伺っていた。そして、彼らはそれが襲いかかる前に、ここから抜け出さなければならないと感じていた。
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