第26話 『気持ちいい廃墟』

「いい廃墟があるんだよね」

と先輩が機嫌良さそうに言っていたのを覚えている。


廃墟に良いも悪いもないだろうとも思うが、そういうところも先輩らしいなと思った。


「まあ言ってみれば分かるよ」


言われた通り廃墟のある場所に向かうと一軒家が建っていた。

いかにも何十年も経過しているように見える。


「先輩…どこにでもある廃墟では?」

「いいから入るよ」


廃墟は木造で、大きめな地震が来たら倒壊しそうに見えた。

先輩は正面の入口から中へ入った。床からギシギシと音がする。


「あぶないですよ」

自分も後から続こうとすると、前にいたはずの先輩がいない。


「え?」


床が抜けている事に気づく。

下を見ると、落ちた先輩がとても大きな何かの破片に刺さって死んでいる。


大変だとか救急車だとか思う前に、あの人にされてきた嫌な事が全て思い出された。

清々しくなり、人が来るまで罵倒を続けた。

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