第27話 『放置するダンボール』

「ダンボール箱の放置はやめてください」


そんな注意書きが、マンションのエントランスやエレベーターの中に貼られるようになった。

誰か、宅配物やゴミを置きっぱなしにしているのだろうか。


自分の見ている範囲に段ボールが見当たらなかったので、きっと件の段ボールは別の階の住人の事なのだろうと思っていた。


数日後、そうではないと気づいた。

自分のいる階の共用通路にも張り紙が出始めたからだ。


「あの段ボールはサカイさんの物です。見た方は以下の電話番号までご連絡下さい。〇〇〇−〇〇〇〇−〇〇〇〇」


サカイさん?住人にそんな名前の人はいないはずだが…?


そこである可能性に気づいた。

もしかして自分が見えていないだけで、実は段ボールがあるのではないか。


とはいえそれを確かめる方法もなく、特に実害もないのでほっといていた。


さらに数日後、買い物から帰ると、自分の郵便受けに紙がぐちゃぐちゃにいれられていた。

イタズラか?と思いその紙を拡げてみると、


「見つけたぞ見つけたぞ見つけたぞ見つけたぞ見つけたぞ見つけたぞ見つけたぞ」


と書いてありました。結局段ボールなんて無かったんですけどね。

さすがにダメだな、と思いすぐに引っ越しました。

なんだったのでしょうか、あれは。

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