第25話 『ベランダにぶら下がっていた男の子の事』

僕が小学校低学年の頃、秋ごろの話なんですが。


学校から帰ってきて、その時は友達と遊ぶ用事もなかったので、自分の部屋で宿題してたんです。午後四時くらいかなぁ。

ふっ、と窓の外を見たら、足が見えたんです。足。


窓の下から、つま先が見えたかと思ったら、足首、膝とどんどんと形が顕になっていきました。

小学生くらいの男の子が、空に向かっておちていこうとしているようでした


動けませんでした。胸を過ぎて、もうすぐ窓の前を逆さまの男の子の顔が通る。その想像は容易にできるのに、絶対に恐ろしいことなのに、顔を確かめずにいられませんでした。

そしてついに、顎の先が窓枠から覗きました


その子、顔がなかったんです。本当にのっぺらぼうのようで。

それなのに、ニヤッと笑ったような気がしたんです。


そして階下からドスっと音が聞こえた気がしたのですが、跡形も無くて……

あれは一体なんだったんでしょう。

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