第23話 『磨くと白くなる手形』

私の両親は芸術家だ。特に造形をよくしているので、実家は模型の類いが多く置かれていた。そんな家だったので自分は幼い頃から模型を見慣れていた。


あるとき、実家に戻ると見慣れない模型があることに気づいた。

真っ黒な手形だ。


誰の手なのだろう? 親のサイズではない子供の手形の模型に見える。

自分が子供の時に? いや、やはりこんなものは記憶にない。


両親に聞いてみると、ただ布と水を渡され


「磨いてご覧」「気に入るよ」


とだけ答えた。


木彫りの、見たことがない手形を親に言われるまま濡らした布で拭いてみる。

今思えば研磨作業のような。

木彫りだと思った茶色の表面は、繰り返し拭いて、磨いていくと、徐々に白んでいく。

面白くなって続けていくと、


「丁寧に扱え」


何かに頭を押さえつけられて、ものすごい力で握られた。

視線の先の手形は、少し赤くなっていた。

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