第8話 『冷たい炊飯器』
「これいつ買ったやつ?」
弟の家に泊まりに行ったとき、ふと気になって炊飯器を指して聞いてみた。
「買ってない。昔貰ったやつ」
「確か友達が、恋人と暮らしていた時に使っていた炊飯器だったか?」
結局別れてしまい、そのとき友人がもういらないからとくれたのだという。
しかし弟はこの炊飯器をあまり使っていないらいい。というのも、これでご飯を炊くと、どうにも変なことが起きるからだそうだ。
ご飯の味は大丈夫なのだが、炊けた時のアラーム音がおかしいとのことだ。
普通はピーとか機械の音声が鳴る。しかしこれは
「ウウウッ」
「ウァァッ」
「ヴァうぁぁあァッ」
・・・うめき声のようなものが鳴ると言うのだ。
何事かと思って声の出所に行くとその炊飯器がある。
蓋を開けるとほかほかのごはんがあるだけだった、と。
「その炊飯器で炊いたご飯が、これ」
そう言って、白米を私の前に置く。
「さっきも聞こえたよね? 炊けた時の音」
暖かな湯気なのに、吸い込むたびに自分の肺が冷えていくのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます