第8話 『冷たい炊飯器』

「これいつ買ったやつ?」


弟の家に泊まりに行ったとき、ふと気になって炊飯器を指して聞いてみた。


「買ってない。昔貰ったやつ」

「確か友達が、恋人と暮らしていた時に使っていた炊飯器だったか?」


結局別れてしまい、そのとき友人がもういらないからとくれたのだという。


しかし弟はこの炊飯器をあまり使っていないらいい。というのも、これでご飯を炊くと、どうにも変なことが起きるからだそうだ。

ご飯の味は大丈夫なのだが、炊けた時のアラーム音がおかしいとのことだ。


普通はピーとか機械の音声が鳴る。しかしこれは


「ウウウッ」


「ウァァッ」


「ヴァうぁぁあァッ」


・・・うめき声のようなものが鳴ると言うのだ。


何事かと思って声の出所に行くとその炊飯器がある。

蓋を開けるとほかほかのごはんがあるだけだった、と。


「その炊飯器で炊いたご飯が、これ」


そう言って、白米を私の前に置く。


「さっきも聞こえたよね? 炊けた時の音」


暖かな湯気なのに、吸い込むたびに自分の肺が冷えていくのを感じた。

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