第6話『ぼろぼろの髭剃り』

夏休み、祖父の家に遊びに行った時のこと。

洗面所に、刃の錆びきったぼろぼろの髭剃りが置かれているのを見つけた。

決してちゃんとしたものではなく、ホテルのアメニティのような、至極簡単な作りのものだ。


「爺ちゃん、こんなの置いてたら危ないよ。破傷風になっちゃうよ」


最近知った単語を使ってみたくてそう言うと、祖父は「〇〇は何でも知ってて偉いな」と笑ってから、「爺ちゃんも捨てたいんだけどなぁ……」とこぼした。


妙に歯切れの悪い祖父に理由を問いただしてみたが、はぐらかされて結局その理由を教えてはくれなかった。


数日後の夜、下からの大きな物音で目が覚めた。

部屋から出て、音のする例の場所へ行った。


「なんだ・・・」


なんだ…がっかりした。


部屋にはぬいぐるみの顔を髭剃りで必死に引っ掻いている祖父がいた。

やっぱり何度ぬいぐるみや人形を与えても駄目だったのだ…。


結局おじいちゃんも同じか。次はどうしようかな。

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