第4話 鍛錬

1.およそ、4000年前、日本が縄文時代後期のころ。中国では、多数の暗殺拳が存在していた。鴈王朝。突然の病死により、4人の子供は後継者争いを行った。だが、結局身内同士の殺し合いは何の生産性も生まないとして、国を均等に4つに分断した。それで平和的に解決かと思われたが、三男・江がこれに激怒した。与えられた土地のほとんどがやせ細った、資源のほとんどとれない土地であった。だが、王政の権限はあるため、そのころ、見つかれば極刑に処していた暗殺拳を特別に認可。そして、その中で選ばれたものを、”赤龍”と名付け、認可のしるしに、”赤龍”姿勢を掘ったとされる。江は赤龍を使って、兄弟を暗殺しようとした。まずは、一番良い土地を持っている。長男・楊。これにより、楊は赤龍により、斬首される。この動きを察知した、次男・慶は、江と同じく、暗殺稼業のものを認可する。その実力を持ったものを、”青龍”とし、江への、暗殺を試みるが、四男が認可した、”緑龍”によって慶は暗殺される。認可はされたものの、慶を失ったことにより、命令は取り消しとなった青龍は、慶によって一定の権限を与えられていたため、自ら、国を挙げることを宣言するが、慶の家臣だった者たちは、再び暗殺を極刑の対象に戻すと、言ったが、青龍とその従者たちは、慶の中枢部を制圧し、領主になることに成功する。そして、青龍は、軍事国家を見事作り上げ、暗殺ではなく、戦争を起こすことにした。そして、再び中国は、一つの国になることとなった。そして、青龍改め、陵をなのり、陵王朝を確立する。そして、より強固な軍事国家を目指すため、赤龍、緑龍を幹部にし、彼らが得意とする暗殺術を、軍事用に体系化させ、ついに、世界へその技術を伝えるため、使いを送った。そして、弥生時代の日本にて、緑龍、赤龍、青龍が持っている技術を伝え、その数年後、日本に、剣術、馬術、弓術が徐々に浸透していった。

2.それを聞かされた由比は、ある疑問が浮かんだ。「中国」に赤龍のルーツがあるとして、なぜ、日本人に3人も、、と思わされたが、多数の暗殺拳は存在したが、そのほとんどは、マイナーなモノばかりで、暗殺稼業のみでは、いつ死ぬか分からなかった。つまり、自ら”赤龍”や”緑龍”を謳うものが多かったもしくは、後継者の中で何かがあったのか。

「赤龍というものは、ほとんどは後の権力者によって淘汰されたりそうでなかったりでしょうね。少なくとも、日本では刀狩り以降赤龍を謳うものは、公にはいなくなったということです。だが、弟子たちは大量にいるため、解体してしまうと、路頭に迷ってしまう。そういった事情で、今もこうして、人を殺しては、金を稼ぐ汚い輩がはびこっているんだろう。」由比は、黙って聞いていた。青龍は、服を羽織り、白衣姿に戻った。

「君は再び、荒巻忍と戦うんだろ?」

「はい。」

「なら、修行が必要だね。君の筋繊維はもう十分に前よりも強い。だが、それでは、荒巻忍には勝てないだろう。剣術以外にも課題はたくさんある。まず、私の友人の元を訪ねるといい。」そういって、一枚の紙を渡された。

3.荒巻忍は、生殖器がまだ生きていたにもかかわらず、接合しようとはせず、青龍の元で女性器を作り、女性ホルモンを大量投与し、完全に性別をトランスさせた。2006年当時、日本では出生時に男性と割り当てられた人が「女性」として典型的な女性のような恰好で人前で活動することが、芸能や商業にて歴史的に脈々と行われていた。例えば、女形として女性役も男性が演じる歌舞伎、江戸時代に女装して接客やセックスワークを行った陰間などである。そうした中、1970年代にはアマチュア女装者を顧客とする商業的な女装クラブが生まれ、その流れで1980年代から日本社会で一般に普及していった言葉がニューハーフであった。だが、そのような人は、当時は「変態」、「おかま」などと呼ばれさげすまれていた。

「これで弱点はなくなったわ。」

「そうか。」忍は、黒龍と対峙していた。

「あんたも、玉、つぶしてあげる♡」そういって黒龍の股間に、蹴りを入れたが、腕で防がれてしまう。そして、正拳突きで距離を取る。

「ははは。こんなことで俺に勝てると思ったのか。」沖縄の琉球空手には”骨掛け”という技が存在する。その技は、睾丸を体内に隠してしまう荒業である。

「そんな技があったなんて知らなかったわ。じゃあ、一物だけでもいただくわ!!」忍は空手チョップを繰り出したが、踵落としを決められ、ダウンしてしまう。

「どうした?絶好のチャンスだっていうのに。」忍は思った。ジャブより早い踵落としを受けれるわけねえよ。そして、忍は起き上がる。

「今まで倒れたことなんてなかったのにねえ。レディに容赦なさすぎない?」

「ふふふ。醜い。」

「それがレディにかける言葉かしら!!」そういって、背後に回り、バックドロップを掛けようとしたが、、一歩も動かなかった。そして、肩に肘打ちを喰らう。

「がはあ」完全に関節を外された。関節を決めることには誰よりも自信があった。その逆に、関節を決められないことにも自信があった。プロレスはあくまでエンタメの要素は強い。そのため、八百長と言われることもあるが、それは、強い体があってこそ成り立つもの。その忍が、一撃で関節を外される。そして忍は無理やり関節をはめた。

「はは。器用なことだな。」

「続きをやりましょう。」今度はドロップキック、さらに一回転し、三角絞めを決めに行く。

 ドロップキックとは、レスラーが飛び上がり、両方の足の裏を使って相手を蹴る攻撃と定義される。飛ぶ時に体をひねって、相手に当たる時に横向きとなり、体の横側あるいは前側で着地するやり方と、体が仰向けになるように飛んで、相手を蹴った後に背中で受け身をとるやり方がある。

 三角絞めとは、相手の首と片腕を両足で捕らえ、相手の片側の頚動脈を内腿で絞めながら相手自身の肩で反対の頚動脈を絞める技である。戦前の日本で盛んだった旧制高校の柔道大会、いわゆる高専柔道で開発されたものだが、近年、ブラジリアン柔術やMMAなど世界中の格闘技に広がっている。

 忍の三角絞めは、極太の脚によって、圧迫される。そして、反撃が来ぬよう、腕はしっかりと捕まっていた。後は失神するのを待つだけ。に思われたが、黒龍は膝を曲げ初め、そして、、

「ありえない....」そう言ったもつかの間、忍は後頭部を強打する。

 黒龍は、膝を曲げた後、膝を勢い良く伸ばしそのまま、前に倒れこむようにし、サブミッションを解除する。忍。意識を失う。そして、黒龍は、腹に貫手を行った。銃の弾丸、赤龍の刀さえ通らなかった、忍の頑丈の皮膚に、黒龍の貫手、全てを関数する。

「がはあ」忍は人生で初めて、吐血を経験し、勝負は決した。

4.由比は”青龍”からもらった一枚の紙を頼りに、ある場所を訪ねた。ある古い建物がそこにあった。”伊吹道場”

「いらっしゃい。権藤から話は聞いたよ。」そこに一人の男は立っていた。身長190㎝体重110キロの中年である。

「嘘...」あのときのテレビにも映っていた、伝説のプロレスラーアントニオ伊吹。その人であった。

「俺のところの稽古は、他のところの比じゃねえ。覚悟はできてるな嬢ちゃん。まあこれに耐えれなきゃ、忍に勝てっこないんだが」

 幼少のころから殺人のイロハを教わってきた、由比は鍛錬すること自体は慣れていると思っていた。どんな男よりも鍛錬してきたという自負はあったが、甘かった。

「じゃあ、まずはヒンズースクワット。俺がよしというまで続けろ。じゃあはじめえ」

 ヒンズースクワットとは、プロレスラーが足腰の訓練法としてやる腕を前後に振りながら下まで降ろす自重スクワット。プロレスラーは1000回、多い時は2時間以上かけて3000回もやるが、力を抜いて降ろし関節がぶつかった反動で立ち上がるという筋反射のない動作の繰り返しになるため、膝関節を傷めやすく、筋力アップには不向きである。有酸素運動と大腿四頭筋のストレッチとしては有効である。また、近年ではスクワットをやる際には膝を前に突き出さないことを強く推奨されているが、ヒンズー・スクワットは膝を大きく前へ突き出すフォームになるため、膝を痛める恐れがあるため注意が必要。

 由比は最初こそ軽々と行っていたが、徐々に疲れを見せ始めた。そして、疲労は徐々に痛みに変わり、気づけば、下半身の痛みは、熱を帯びるようになってきた。灼熱の痛み、この拷問とも思える、鍛錬。今までに感じたことのない痛み、だが、由比は休まずに続けた。伊吹の許可が下りるまで。伊吹は、神妙に由比を見つめる。パイプ椅子に座りながら、由比を見守っていた。そして、あっという間に3時間が経過した。数何て覚えていないが、やり終わるころには痛みを通り越し、下半身の感覚をすべて失った。

「よし、次は、指立て伏せだ。これも、俺が良しと言うまで。」今度は、腕の疲労、そして、痛み、熱、無痛の連鎖をたどることになった。

「よし、ウォーミングアップ終わりだ。じゃあ実践に移っていくか。まだ、刀は持つな。まあ刀なんて持っても、俺は忍のように皮膚までは鍛えちゃいないがな。」そして、由比はリングに上がった。

「まずは、基本中の基本、極め技の対応からだ。プロレスラーはプロレスの技を基本使いたがる。忍みたいなタイプならなおさらだ。関節技と言っても、いろいろある。絞め技、投げ技、極技。一番喰らったらきついのが、極技だ。あいつの場合はサソリ固め。それを避けても、連携技がある。それを練習する。」

 プロレス、柔道、総合格闘技などにおける極め技は、自分を体を使って相手の体を捕まえて固定して、その状態を維持することにより相手にダメージを与え、タップアウトを狙う技全般のことである。関節技、絞め技、締め技、ストレッチ技に細分される。ストレッチ技や締め技は、あまり使われないものであるため、それらをまとめた単語である極技もあまり使われず、知らない者も多い。

「まずは、俺の得意技。コブラツイストだ。」

 コブラツイストとは、日本名ではアバラ折りで、背後から相手の左足に自分の左足を絡める様にフックさせ、相手の右腕の下を経由して自分の左腕を首の後ろに巻きつけ、背筋を伸ばすように伸び上がる。可能な場合は、両手をクラッチするとさらに威力が増す。

 由比は、ミリミリと骨が裂けるような感覚に襲われた。このままでは、本当に肉と骨が裂き、内臓が飛び出してしまうのではと思われた。

「どうした?このままじゃあ、本当に裂けちゃうぜ。」由比は、この状態から抜けようにも、無理であった。すると、由比は何かに導かれるように、右に全速力で周り、腕を下ろさせ、逆にコブラツイストを掛けていったのである。

「やるじゃねえか。解いてよし。」由比は、関節技のことはよく知らないが、こういった膠着状態になったときの策を、剣術ではいくつか教えられていた。お互いが間合いを詰め合う。そして、刀を刀で防がれている時通常であれば、八双の構えからでないと(刀を立てて頭の右手側に寄せ、左足を前に出して構える、野球のバッティングフォームに似た構え方)できないが、下段の構え(刀が下向きにある状態)でも、できるように教わっていた、その対応策は、右回転袈裟切りである。力の流れを右に持ってくることによって、形勢を逆転させる技であった。

「じゃあ、そこに用意してある刀を使え。勿論真剣じゃないぞ。5分間だ。5分以内に俺をまともに切れたら、お嬢さんの勝ち。いいな。」重さも、形状も同じだった。一つ違うのは、真剣ではないということ。

 由比は、正眼の構えを取った。

「いい顔だ。じゃあ、いつでも来な」まずは、真っ向斬りから入った。大きく振りかぶり、伊吹の脳天めがけて、打った。。が、伊吹はあっさり、腕でガードした。

「いまのじゃ、まともに当たったとは言わねえな。あんた、俺の脳天めがけてうったんだろ。レスラーはよけることはしねえが、他の部位で受けることはあるんだ。忍のはやりすぎだがな。さあ、どんどん打ってこい!!」

 続いて、正中線3段諸手突き、上段廻し蹴り、そして、袈裟斬りを行った。だが、

「なかなか、いい線行ってるぜ。もっと打ってこい。」さらに、一文字斬り、納刀してからの居合斬り、そして、右回転袈裟斬りを行った。そして

「時間だ。」伊吹はそう告げた。

「なかなか惜しかったんだがなあ。だが、安心しろ。俺についてくりゃ、忍の強さには大分近づけるからよ。今日はもう帰って体を休めろ。あと、ちゃんと飯は食うんだぞ。量はちゃんとあんたの旦那に伝えてある。」

「え?」疑問を抱きながらも、由比は道場を後にした。

5.黒龍に敗北した、荒巻忍は、数時間もの間気を失っていた。そして、貫手による出血も収まり、ようやく立ち上がる。

「あんな貫手で私が死ぬわけないじゃない。馬鹿ねェ黒龍ちゃん。」内臓は破壊されたかと一瞬焦ったが、筋繊維との、境目で止まり、出血はしたものの、一命はとりとめた。すると、

「久しぶりだな。おかま野郎」

「夜倉ミルクだ。」

「ああ。あの時の。美月ちゃんは今元気かしら。」

「その名前を出すんじゃねえ!!」そして、いきなり、左ジャブを決めた。渾身の左ジャブであったが、

「あの時よりかは、早くなったわね。」きっちりと顔面で受け止めた。そして、そこから、右フック。顎にすれすれを狙う。当然耐えれる

が、忍はゆっくりと床が起き上がってくる感覚に捉われた。

 顎にもろに打ったところで、忍は耐えると考えた夜倉は、試みる、顎に対する、皮一枚のフック。そして、忍の脳に起こった、幾数千回の脳の揺れ、が起こる。忍前に倒れる。そして、顔面に蹴りを入れる夜倉。命中は必然に思われたが、

「足が動かねえ」忍命中する前に防ぐ、歯によって。忍は鼻に命中する寸前顔の位置をずらし、かみつく、夜倉の足に。そして、夜倉の足首を掴みそのまま置き上がる。夜倉は忘れていた。プロレスラーには、嚙みつき技が存在することを。そして、足を口から離し、足首を持ったまま、忍は夜倉を叩きつけた。夜倉、混濁する意識の中で、思い返す。

 3年前、夜倉は暴走族の副総長として、ストリートファイトに明け暮れていた。その時付き合っていた彼女、美月。彼女もまた、合気道の使い手であった。そんな中、当時やくざの息子であるという噂のあった荒巻忍を不良たちはほっとくはずもなく、15歳だった荒巻を執拗に追いかけ始めた。そして、夜倉は

「俺は弱い者いじめはしない主義だが、生意気な後輩は許せない性質なんだ。」カツアゲやパシリに使おうとする、夜倉の仲間たちを、荒巻は返り討ちにし続けた結果、暴走族・副総長まで呼び寄せてしまったのであった。

「タイマンで勝負だ。俺が勝ったらお前は俺の一生奴隷。お前が勝ったら、お前の言うことを聞いてやるよ。」

 ”悪魔の夜倉”と恐れられていた、夜倉は勝負に負けるはずもないと思っていた。この時までは、、いきなりの鳩尾蹴り。これでダウンするかに思われたが、荒巻、これに平然と耐える。そして、アッパーや金蹴り、そして、木刀を用いた、殴打。それらすべてに、荒巻忍、耐える。

「お前。どういう体つきしてんだ。」この時の荒巻の身長185㎝。体重100㎏であった。すでに夜倉よりもでかかったが、夜倉は自分よりでかい相手は何度も倒してきた。ましてや、自分より年下に等、負けるはずもないと思っていた、だが、現実は木刀でも倒せないというその事実のみ。そして、タイマンという勝負のはずが、いつの間にか、リンチに変更される。木刀から、金属バットに変え12人の高校生が荒巻忍を殴打し続けたが、出血などはある者の、これに耐え続けた。そして

「もう終わりかい。もうとっくに終わってるのか。タイマンを捨てた時点であんたらはもう終わってたんだ。」

「黙れ!!せっかくやくざの息子だから手厚く迎えてやろうと思ったが、こっちの思いを無下にされたんじゃ、黙ってられねえ。服従するまで叩きのめす。」そして、再び襲い掛かろうとしたその時、荒巻忍は反撃に出た。夜倉ミルクただ一人に対し、鳩尾蹴り、アッパーそして、ラリアットを決めた。

 ラリアットとは、片腕を横方向へと突き出して相手の喉や胸板に目掛けて叩きつける技である。ラリアットは自身のアメリカンフットボール経験を活かしたオリジナル技であり、激突時の衝撃を吸収する柔軟かつ強靭な下半身が必要」という。アメリカンフットボールのテクニックとしては、現在のルールでは禁止されているハイタックルの応用であり、腕を相手の首に当てると同時にそこを作用点として押し倒す技でもある。

 夜倉の胸骨は粉砕された。そして、折れた胸骨が肺を傷つけたことにより、吐血。それを見た、他の者たちは一目散に逃げる。

「勝負に勝ったら、俺の言うこと聞いてくれるんでしたよね。」夜倉は返事をしなかった。

「俺、高校生になったら彼女ほしかったんすよね。だから、夜倉さんの彼女くださいよ。」そういって、忍は立ち去った。「待てこの野郎!!お前の言うことなんか誰が聞くかよ!!」と叫びたかったが、叫べなかった。忍は見抜いていた。夜倉に約束などと言うものを果たそうとする気がないことを。よって、忍は親父の教え通り果たす。夜倉とした約束を。

 翌日、いつも通り、夜倉は彼女、谷川美月を迎えに行くも、出てきたのは、血の気を抜かれたような、顔をした彼女が立っていた。事のいきさつを聞いた、夜倉は、復讐を果たそうとするも、その道中で無免許違反で逮捕されてしまう。

「戦いの終わりの後、より高きに頭上があるもの。それが勝者。あなたは、5分もの間倒れてたのよ。あなたに約束を果たす気が無いのは分かってたけど、そんなこと関係ないわ。約束はね、片方が果たす気が無くても、果たさせることができるの。力ずくでね。」そして、ついに決め技の恐怖の技を繰り出す。

「ずっと、やってあげたかったの。あなたとのけんかの後、これをやったら最高なんじゃないって。これは、あなたの技でもあるのよ。さあ、悶絶のうちに死になさい。」

 忍のサソリ固めは他のものの追随を許さない。サソリ固めは、完全に極まれば相手の足首、膝、腰が締め上げられて、また気道や横隔膜の動きが制限されるため相手を窒息させる効果もある(実際、遊びや体罰でサソリ固めや逆エビ固めを一般人にかけて死亡させた例がある)プロレスは、相手の協力もあって成立する技が多い。つまり、実践には不向きなのである。しかし、忍は

「じたばたしても無駄よ。」仰向けに倒れている、夜倉を無理やり、うつ伏せにし、さらにひさを無理やり足首をもってクロスさせる。夜倉の必死の抵抗も虚しく、背中の上に座り、相手の協力なしで、否、相手の必死の抵抗によって完成した。サソリ固め

「ちょっと。動いたらやりにくいじゃない。」そう言って、忍は、クロスしている足をその勢いで折った。夜倉、膝の複雑骨折、胸骨圧迫、気道の確保ができず呼吸困難。そして、腰、脊柱、、完全骨折。夜倉、息絶える。

6.由比は部屋に戻ると、大量のご飯が用意されていた。

「ただいま、由比。びっくりしたよ。あのアントニオ伊吹から直々に手紙貰ってさ。ごはん作るの大変だったけど、由比のためだからな。まあ、プロレスラーじゃないのにこんだけ食べろって言われても困るよな。ははは。」と、一人見慣れない、中年が座っていた。

「お邪魔しております。わたくし、アントニオ伊吹のご紹介で参りました、合気道、谷川流師範の谷川と申します。」

「はあ。」由比は困ったが、朗は先にご飯を食べるよう促した。授乳や連日の戦闘、入院で体力を消耗していたのか、大量のご飯をぺろりと平らげた。そして、

「何か御用でしょうか。」谷川はここに来たいきさつを話し始めた。

 アントニオ伊吹から谷川の元へ連絡が来た。あんたの仇を取ってくれそうな女がいる。と、ぜひ会って、話を聞かせてやれ。

そう言われた谷川は、娘のことを思い出した。幼少のころから、合気道を厳しく教えてきたが、高校を入ると同時に、練習を怠り始め、ぐれる。そして、男の不良にからまれては、合気道で返り討ちにしてきたが、そんなある日、夜倉の獣のような眼を見て、すぐ惚れ付き合うこととなった。まだ、一年だというのにである。一方で荒巻に対しては、同じクラスにいる。程度でほとんど面識はなかった。夜倉と谷川美月が付き合っていることは、周囲のものは誰でも知っていた。そして、ある日

「谷川美月さんだよね。」荒巻忍は、コンビニでたむろしていた、谷川に声を掛けた。

「何だてめえ」

「夜倉さんと決闘をしたんですが。先ほど勝ちましてねえ。勝ったらなんでもいうことを聞いてくれると。なので、あなたを僕の彼女にしに来ました。」

「何勝手なこと言ってんだ。それにな、ミルクがおめえの言うことなんか聞くわけねえだろ。どうせハッタリだろ。」そう言ったが、携帯も写真を見せたすると、

「あなたと夜倉さんが何を言ってところで無駄ですよ。」そして、美月の服を持とうとしたとき、美月に腕を抑えられ、そのまま地面に押し込まれた。

「あんたの相手何かしてる暇ないんだよ。」美月がそういうと、忍は足を首にかけ、三角絞めを決めた。そして、瞬く間に気を失った。そして、一緒にいた友達に、「谷川道場を案内してください。」そう言った、2人はそれに従った。

 道場には誰もいなかった。そして、忍は全裸になり、こう告げた。

「ビデオを撮ってください。逆らったらどうなるか...」2人は首を縦に振った。そして、谷川は目を覚まし、何で道場に?と不思議がったが、すぐに、徒手攻撃に移った。が、一切手を出してこず、そして、両手で服を掴んだところを、再び技を掛けようとしたが

「二度も同じ技は喰らいませんよ。」そして、そのまま服をびりびりにちぎり、無理やりキスを迫ったところをかみつくも、全くひるまず、下着をずらし、無理やり行為に及ぶ。まだ、処女だった美月は、プライドをすべてズタボロにされたのであった。抵抗しようにも、まるで、はたから見れば、受け入れているようにしか見えなかった。背面を向き、後ろから突き続け、美月は何度も果ててしまった。

 その後、道場で倒れている美月を父親が発見し、すぐ警察を呼ぼうとするも、娘からは止められてしまう。すべてのことを聞いた、父親は、この怒りをどこにぶつけていいか分からなかった。だが、泣き寝入りは良くないと、美月を説得。警視庁の同級生に相談するも、「上官から止められたよ。お前の気持ちには答えられない。」黒澤会が、警察内部とのつながりがあり、捜査すらさせてもらえず、事件は闇に葬られた。その後、アントニオ伊吹をたずねるも、「荒巻の居場所?こっちが知りたいよ。先週辞めていったきりさ。」と、告げられる。完全に姿をくらましたのであった。

 それを聞いた、由比はやるせない思いになった。

「自分が娘にしてきたことは、正しかったとは思いません。でも、私にとっては大切な娘なんだ。お願いです。娘をあんな目にやらせた奴にせめて、相応の思いを....」

「分かりました。必ず勝ちます。」荒巻への思いを同じにしたものに出会ったことで、覚悟が決まった。

7.「暴対法」1991年に初版が発行され、何度か改正されていたが、また新たに、指定暴力団以外にも、半グレややくざのこども、さらに、違法な派遣業者までも、その対象に入れた。一斉摘発の波がすぐに押し寄せてきた。そして、捜査や逮捕、押収などを一任されているのが、「組織犯罪対策課」通称マルボウであった。はたから見ればやくざと変わりないが、そうでもしないと、逆にこちらが狙われるリスクをはらんでいるのであった。そして、その中のひとり、公安出身で孤高の柔道家であった男、その名は、井上直樹であった。主務官庁は警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課で、同庁警備局公安課、法務省刑事局公安課および公安調査庁調査第一部と連携して執行にあたる。

「フラフラだな。荒巻忍。殺人、及び組織犯罪対策法の違反で逮捕する。」

「あなた一人できたの?随分と手のひら返しね。今までさんざん甘い汁を吸ってきたくせに。」

「すまんなあ。でも、おかみの言うことには逆われへんのや。」井上はかつて、やくざの犯罪をもみ消す代わりに、毎月お守り料をもらっていた。だが、それは井上だけでなく、他にも数人いたらしい。

 忍は、ローキックを入れた。井上はそれに対し、逆足を払った。そして、背負い投げを決めた。そして、すぐさま、腕挫十字固を決める。

 技をかける側は、相手の上腕部を自分の両脚で挟んで固定して同時に親指を天井に向かせる形で相手手首を掴み、自身の体に密着させる。この状態から骨盤のあたりを支点にして相手の腕を反らせると、肘関節が可動域を越えて伸ばされて極まる。受け手が肘を曲げて逃れようとしても、かけ手の背筋力のほうがはるかに強いため、1度腕が伸びてしまえば体格差があっても技を外すことは不可能に近い。

 井上は、日本柔道選手権で、オリンピック選抜選手になれるほどの、実力を持っていたが、警察官になるため、それを辞退する。そんな、井上の腕十字は、脱出不可能であった。そして、井上の恐ろしさはもっと別のところにあった。

 忍は、腕を振り回して、井上の顔面を地面に打とうと考えたが、無理であった。そのまま折れることは必至で会った。

「ぎゃああああ!!!」そして、手錠を掛けられた。

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