第4話 死神
何で俺は……。あの日、俺は癌で死んだ。家族に何も恩返しができないまま死んでしまった。生き返るはずも無いのにどうして俺はここに居るんだろう。
「ここはどこ?」
目が覚めるとそこは自分の部屋だった。
「なんで?俺は生きてるのか?」
物を掴もうとしたが、掴めなかった。俺は幽霊になったのか。すると、後ろから不気味な足音が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、骸骨のような見た目をしたボロボロのお爺さんが、俺の方に近づいている。
「お前……未練が残っとるな」
「あなたは誰ですか?」
「ワシは死神。お前さんの未練を無くしてやろう」
「何をするんですか?」
「お前に願い事を叶える能力を与えよう。誰かの願い事を叶えることが出来る。お前の大切な人に恩返しをしなさい。ただし、願い事が叶ったら――」
その言葉を聞いた瞬間、俺は嬉しかった。最後の死神の言葉は耳に入らなかった。家族を助けたい……。まず娘を探そうと頑張ったが、見つからなかった。
その時、落ち込んでいる娘の友達の美香ちゃんを見つけた。美香に声をかけたら、由美も見つかるかもしれない。そう思い、願い事を叶えてあげた。
すぐに由美も見つけた。由美に話しかけると、お母さんに会いたいと泣きながら言っていた。その時、大切な妻が病気で死んだことを知った。
妻に最後に何か恩返しをしないといけない。由美の願い事を叶え、妻に会いに行った。
妻は、アイデアが出なくて悩んでいた。もし、商品化出来たら喜ばれるかもしれない。そう思い、妻にも声をかけ、願いを叶えてあげた。
一人で歩いていると、死神が近づいてきた。
「お前の家族は全員死ぬ……」
「何を言ってるんだ?」
「願い事を叶えた人間は死ぬ運命にある」
「……え?」
その死神の言うとおり、十月二十日。妻と由美と美香が交通事故に遭って亡くなった。俺は、何も出来なかった。
「俺は……なんてことをしてしまったんだ」
魔法使いの願い事 緑のキツネ @midori-myfriend
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