第3話 恋の始まり

 目覚ましの音が部屋に鳴り響く。その音で僕は目を覚ました。一人の部屋はやっぱり寂しい。お母さんが交通事故で亡くなり、お父さんは去年、病気で亡くなった。妹も交通事故に巻き込まれて死んでしまった。


 不幸に巻き込まれてばかりの日々。一ヶ月近く何もすることが出来なかった。ウーバーイーツを頼んで、食べる毎日。でも、前を向いていかないといけない。そう思い、ウーバーイーツをやめて、料理を作ることを決めた。


 朝ごはんは卵焼きと目玉焼きのローテンション。少し飽きてきたが仕方なかった。僕は料理が苦手だった。料理ができる彼女が欲しい。最近、ずっとそんなことばかり思っている。

 

 制服に着替えて、鍵を閉めて学校に向かう。教室では女子たちが昨日のテレビの話で盛り上がっていた。僕はずっと一人の子だけを見ていた。彼女の名前は、桜田美桜。僕はずっと彼女の事が好きだった。想いを伝えたい。付き合いたい。そう思い、筆箱からシャープ鉛筆を出してラブレターを書くことにした。



 あなたを見ると胸がドキドキします。あなたはまるでプリンセスのようです。僕はずっとあなたの事が好きでした。付き合ってください。


「岡田、何してるの?」


 男友達が話しかけてきた。慌てて、ラブレターを机の中に隠した。


「いや、何もしてないよ……」


「今、なんか隠したよね?」


「何もないよ……」


「まあ良いや。次、体育だから早く行こうぜ!」


「うん!」


 体育の準備でみんながいなくなるのを見て、その手紙を彼女の机の中に入れ、教室を後にした。体育が終わり、帰ってきて英語の授業が始まった。授業中、手紙が回ってきた。



 すいません。あなたが誰か分からない以上

付き合う事は出来ません



 ノートに涙がこぼれ落ちた。振られることはわかっていた。もう無理だとわかっていた。僕には彼女が一生できない。帰り道、一人で歩いていると、黒い男の人が現れた


「誰ですか?」

「君の願いを叶えてあげるよ」

「嘘ですよね?」

「本当だよ」


 めちゃくちゃ怪しいはずなのに、少しだけ懐かしい気持ちになる。


「それより願い事は何だ?」

「僕は願い事は良いや。彼女は欲しいけど、他人に頼っても意味がないと思う」

「そうか。なら良いや。祐希、頑張れよ!」


 僕の名前を知っていることに驚きが隠せなかった。あの人は一体何者なんだろう……。


 地面には新聞紙が二枚落ちていた。一枚目には大きく『飲酒運転で電柱にぶつかり死亡』と見出しがあった。二枚目には大きく『交通事故に巻き込まれ、小学生二人が死亡』と書かれていた。このニュースに聞き覚えがあった。

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