第1話 駐在さん、女子高生イタコと遭遇する
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愛知県の片田舎、第二東名のインターチェンジもできた神代市。
土日は地元や外部の人がやってくるお陰でにぎわう道の駅で、女子高生が一人、音楽を聴きながら人を待っていた。
屋外カフェスペースで、女子高生が神代市の名物の五平餅を味わう姿は良くある。
ただ、異様なのは、味わっている五平餅がジャンボで休日というのにもセーラー服を着ていることだ。
僕は
「君、制服で何をやっているのかな?」
「何って……待ち合わせよ。それよりも、おにーさん、
「いや、僕の疲労なんて今は関係なくてね……」
女子高生は五平餅を食べる手を止めて、テーブルに置きブランド物のカバンからお札をだした。
なにやら呪文のようなものを唱えると、お札を僕の胸あたりに張り付ける。
パァンと何かが爆ぜる音が、聞こえた気がした。
そして、ここ最近続いていた倦怠感がなくなっていることに気づく。
「今のはいったい……もしかして君が……」
「狐山れいな、依頼を受けた女子高生イタコよ。うっわ、おにーさん、すっごい強いのが憑いてたね。お札がもう消失しちゃった」
れいながいうとおり、僕の胸に張られていたお札はさらさらと粒になって消えていった。
どういうことなのかわからなかったが、まずは名乗ることにする。
「僕は高橋宗一郎。神楽原戦史資料館の館長の孫で、神代市のこのあたりを担当している駐在員だよ」
「やっぱり警察かー。職質の雰囲気だったもんね」
僕が職業を明らかにしたとたん、れいなは嫌そうな顔をした。
悲しいかな、女子高生に好かれる警察官はほとんどいない。
彼女たちは僕らにとって保護対象であり、補導対象になりえるのだ。
「じいちゃんから聞いた話だと、狐山とめさんに来てもらうって話だったような……」
「ばあちゃんは今、京都へ湯治に出かけてるからいないよ。だからあたしが代わりに来たの」
「そうなんだね……。今のよくわからないことがあったけど、じいちゃんの頼みだから幽霊事件の調査に協力してもらうよ」
「ねね、いくら? あたし新しいアクセ欲しいからイロつけてほしいなー」
「問題が解決したら、その時考えるよ。僕は霊とかそういうのを信じてないから」
期待できなさそうな目の前の少女はお金の話にすぐ入った。
イロを付けるとか最近の女子高生っぽくない気がするが、どういう環境で育ったんだろう?
僕は話を切り上げると、道の駅の駐車場に止めてある軽自動車の方へれいなさんを案内した。
「へぇー、思ったよりいい車に乗ってるじゃん。給料イイの?」
「そういう下世話なことはいわないの。ほら乗って、資料館までいくから」
「きゃー、さらわれる―おまわりさーん!」
「僕がお巡りさんだからっ!」
冗談でも行っていいことと悪いことがあるというのに、この年齢の子達の考えることはよくわからない。
僕よりも一回り近く離れているんだもんなぁ……。
いつものようになかなかかからないエンジンを無理やり動かして、僕たちをのせた車は道の駅を出た。
「エンジンがかからないのって、いつものことなの?」
「まぁ、そうだね?」
「中古車?」
「不思議と事故にあったり故障したりしやすいから、中古にしているよ」
「ふぅーん、お兄さん
「何もツイてなんかないよ」
助手席で僕の方を興味深げに見てくる少女とくだらない話しをしながら、僕らは神楽原戦史資料館へと向かう。
いつも、猫が飛び出したりすることが多いのだが今日は不思議とならなかった。
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