Episode 6 エレベーター


「村田くん。新しい情報はあったかしら。」

「はい。俺が提供した情報の中で、1番の情報です。20万でどうでしょう。」

「いいわ。」


 俺は典子先生から20万を受け取る。


「ピッタリですね。では話します。」

「いつでもどうぞ。」

「愛菜の自殺騒動のすぐ後から例のエレベーターにとある装置を設置しました。」

「不倫部屋に繋がるエレベーターかしら?」

「ええ。その通りです。ただ実際には何があるかわかりません。本当にただの不倫部屋かも知れないし、他にも何かあるかも知れないですけど。話を戻すとその装置は稼働履歴と重量が記録されます。」

「その話は大分前に聞いたわ。」


 黙って聞けよクソババア。

 だからババア嫌いなんだよ。


 突っかかってくる典子先生に少しイラッとしながらも俺は話を続ける。


「実は昨日エレベーターの稼働が記録されました。」

「いつぶり?」

「稼働記録は毎日ついています。」

「じゃあどう言うことなのよ。」


 そんな焦んなや。しっかり教えるんだから。


「いつもは2回記録されます。往復で。ただ、昨日は4回記録されたんですよ。」

「じゃあ2回上り降りしたんじゃないの。」

「確かにそういう日もありましたが、今回は少し違いました。」

「焦らさないで教えてよ。」


 別にババアを焦らしても可愛くねえから焦らさねえよ。

 

「エレベーターの稼働記録は何者かが乗った場合にのみ記録されます。すると上上下下の順で稼働記録が残っているんです。」

「明らかにいつもと違う人が訪れているということ?」

「ええ。さらに1回目の上はいつも乗っている人の体重がしっかりと記録されていましたが、2回目の上行きはおそらく2人が乗っている重さが計測されています。」

「つまり?」

「それ以降は知りません。ただ、明らかに何かがおかしいんです。1人の体重にしては重すぎるし、女性2人の体重もおかしい。となると男女2人で乗った可能性があるんです。」

「じゃあその2人が例の不倫部屋で不倫した可能性があるってこと?」

「ええ。その通りです。」


 こう言う時だけ頭の回転が早い。


「校長先生に情報を売らない方がいいと言ったのはそう言うことです。」

「校長の可能性があるってこと?」

「はい。校長先生の旦那さんは他界していて、不倫にはならないかもしれないですが、もし仮に性行為に及んでいたことが世にバレれば理事長が黙っていないかも知れない。それで校長のサイドについていると、俺は今後の昇進が危うくなりますし、典子先生だってまだ働かされるかも知れませんよ。」


 そういうと、俺はホテル街へと走った。


 この後どうするかはあのババア次第。

 俺はこの前ナンパした17歳の女と過ごすんだから。

 この20万で。いいとこでねー。


 ――――――――――――――――――


「ここ見てよ。」


 俺が指を指したのはエレベーターの建設台数の欄だ。


「うちの高校は、生徒用の2台と教員用の1台と客用の1台の計4台のはずだ。」

「でも5台って書いてあるよ。」

「そうだ。で、もう一台がどこにあるかって言うと…。」

「校長室の隣?あの例の空間だ。」

「そ。それが屋上にある変な小さな建物にまで繋がっている。これが答えだ。」


 終わったー。名推理だなー。俺。


「じゃあここに行こうよ。」

「はあ?依頼は謎の空間に何があるかだろ。エレベーターってわかっただろ。」

「でもさあ。ここ気にならない?」


 いつのまにかやってきた加賀がそう言った。


「別にお前がやれよじゃあ。今回お前が持ってきておいて何もしてないじゃないか。」

「まあまあ。俺がお前らに依頼しただけだから。お願い。」

「うちはいいよ?全然やるよ?ねえリーダー。」


 やらねえよ。嫌だよ。なんかありそうじゃん。


「よーしじゃあ決定!」


 勝手に決めんな…よ…。

 なんで他の3人こんなに乗り気なんだよ。

 すげー腹立つんだけど。


「悠介くん。決定だよ。」


 もおー。美波に言われたら断れないって!


「もうわかったよ!明日やるよ!」

「ナイスぅ!楽しみでもう今日眠れない気がする。」

「ちゃんと寝とけよ?やるなら夜だぞ。」

「まあ授業中寝るからいいよ。」

「ばーか。」


 こいつらは超絶楽しそうだが俺はめちゃくちゃ不安だ。


 ――――――――――――――――――


「愛菜ちゃん。調子はどうだい。」

「亮先生。大分良くなりました。」


 僕は愛菜ちゃんを監禁しているビルにやってきた。

 愛菜ちゃんは手錠で柱に結びつけられ、近くに犬用の水分を補給できる奴を置いている。

 まあ僕がやったんだけどね。


「記憶も戻ってきたかな。」

「はい。」

「道端で倒れた時はびっくりしたなあ。」

「でもなんで、病院じゃなくて知り合いの方に見てもらうことにしたんですか?」

「まあそれは愛菜ちゃんを僕のものにしたいからだよ。」


 この子がこの高校に入った時から僕のどこががずっと疼いていた。

 そして、手に入る時は一瞬だったなあ。


 そしてこのまま僕のものにするために自殺届を出したってわけさ。


 これでもう愛菜ちゃんはこの世にいないことになっている。

 僕の手助けがないと生きていけないのさ。


「愛菜ちゃん。はいおむすび。あーんして。」


 愛菜ちゃんは小さく口を開けておむすびを頬張る。

 はあ。かわいい。


 愛菜ちゃんがご飯を食べ終えると、いつものあの時間が始まる。


「愛菜ちゃん。いつもの時間だよ。」


 そういうと僕は愛菜ちゃんの手錠を外す。

 愛菜ちゃんを脱がしてあげる。


 そう。僕は愛菜ちゃんの治療費を立て替えてあげるために、行為で許してあげている。

 この時間は手錠を外しても逃げるわけがない。

 だってここから逃げても、外で戸籍のない人間が暮らしていけるわけがないんだもの。


 これで愛菜ちゃんは俺のもの。


 あとは学校を俺のものにするだけ。

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