Episode 5 仏壇と


「加賀くん。どうだったかな。」

「現在、校長室から学校の本を盗んでいる最中です。」

「そうかいそうかい。僕の時代がだんだんと近づいていますねえ。」

「お姉ちゃんはいつ返していただけますか。」

「そりゃまあ。」

「いつですか?」

「だから成功したらと言っているだろう。早くしたいなら、あの4人に言えよ。僕に言うんじゃないよ。というか、何回この話させるんだ。」

「すみません。さようなら。」

「あ、そうだそうだ。君のお姉ちゃん気持ちよかったぞ。」


 殺す。殺す。あいつだけは殺す。

 全てが終わった後、この手で殺してやる。


 ――――――――――――――――――――


 見てはいけないものを見てしまった僕だったが、どうやら美波も見てしまったらしい。

 笑いを必死に堪えながら、撮影していて、手がプルプル震えている。


 ピンクのワンピースをいつも着ている校長先生がピンクのパンツを履いている。

 これほど面白いシーンはないだろう。

 ただ、常識的に考えて文化祭本番ではこの写真を使うことはできない。

 僕らの心の中で留めておこう。


 そしてある程度撮影も終わったので、元の服に着替えてもらうことにした。


 校長室の外に出ると…。

 俺たち4人は全員で、床を転がりながら大笑いし始めた。

 もう声が出ない程に大笑いを。


 どうやら校長の後ろにいた大星と絵梨香もどうやらパンツが見えてしまっていたらしい。


「ピンク…パンツ…。」

「おもろ過ぎるだろ…。」


 みんな笑い過ぎて死にそうになっている時、絵梨香がまた余計なことを言い出す。


「ちょっと待って。濱野先生なんて言ってたっけ。」

「なにが?」

「女性は本当に狙っている男性と一夜を過ごすときピンクか赤のパンツを履くって。」

「そんなん濱野先生の冗談でしょ。」

「しかも、校長の旦那さん亡くなってるでしょ?」

「じゃあ仏壇とセッk…。」


 美波さん!?やめなさい?

 ただ美波のその発言はおもろ過ぎた。


 あとは校長と適当に話を合わせて終わらせた。

 もう無理だ。こんなんやるんじゃなかったよ。


 そうやって無事終わったって思ったが…。

 俺は大事なことを忘れていた。


「あ。本は?」


 俺がそういうと、絵梨香が、


「じゃーん。しっかりゲットしましたぁ。」

「さすが。」

「てか悠介忘れてたのかよ。探偵失格だぞー。恥だぞー。」


 この前自分が言ったことがブーメランとして帰ってきて、自分の腹が立った。


 この後の典子先生の古典のときも、村田先生の地理のときもピンクパンツで頭がいっぱいだった。


 ――――――――――――――――――


「塩澤先生。何故君をこの学校で雇ったか覚えているかな?」

「記憶喪失の薬を作成できるからです…。」

「そうですよね。記憶喪失の薬を作ればいいんですよ。殺さないでください。あなた今1人殺害してますからね。」

「娘の件ですか?」

「ええ。そうです。彼女は本校にとっても優秀な存在だった。数年ぶりの東大合格者が出るかも知れなかった。ただし、本校の秘密を知られては記憶をなくすしかありません。殺害すると、こちらに不利にしか働きませんから。記憶がなくなれば十分なんですよ。」

「すみません。」

「今回はなぜか自殺で処理されてますけど、あなたが殺されたってなったらどうするつもりなんですか?」

「すみません。」


 こう言う謝ればいいと思っている奴は嫌いだ。

「あなたの能力不足で、娘さんは亡くなってしまった。可哀想な娘さんですね。塩澤愛菜さんは。」

「すみません。」


 こいつは謝ることしか脳がないのか?というか僕に謝っても意味ないだろ。


「謝るのは娘さんに対してでしょうが。」

「はいすいません。」

「どうやらあなた再婚するようですね。加賀さんと言いましたっけ?」

「やめてください。なんで知ってるんですか?」

「あなたの弱みを握るためですよ。あなたが逃げ出さないように。」

「影山先生。もうやめていただけませんか。」

「やめませんよ。」


 僕は土下座をしている塩澤先生の頭を踏みつけた。


「早く開発してくださいよ。ここにまた生徒がやってくる気配があるそうですよ。まあブローカーの情報なんですけどね。でも、あなたの危険な研究もきっと知られたくないでしょうからねえ。」


 僕はそう言い残して奥の部屋に向かう。

 奥のこの部屋にあるベッドに女性が座っている。

 そう。校長先生。


 ちなみにこの部屋は学校の屋上にある小さな小屋みたいなところ。

 校長室にある秘密の通路を辿らないとやってこれない。

 歴代の校長先生が不倫をする際に使っていた部屋らしい。


「校長先生。お待たせしました。」

「全部聞いていたわよ。」

「そうでしたか。」

「私を守っていただけているようで、かっこよかったですよ。」


 校長先生にかっこいいと言われて悪い気がするわけない。


 僕は、校長先生をベッドに押し倒して上から見下ろす。


「かっこいいなんて言っていただけて光栄です。」

「うふふ。案外かわいいところもあるじゃない。」


 笑っている校長先生が妙に美しく感じる。


「影山先生。早く私を襲ってください。」

「言われなくてもそうするつもりですよ。」


 僕は、校長先生とキスをしながら、ピンクのワンピースを脱がしていく。


 そして現れたのはピンクのブラとピンクのパンツだ。


「ピンクの下着の校長先生も美しいですよ。」


 僕はそう言って、このまま一夜を過ごした。

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