第92話

ユキのお陰で、思いがけぬ楽しい昼休みを過ごし、午後の仕事につく。


職場のアルバイトの子たちから、


「あれ?オジサン、なんか舞い上がってません?」


と言われた。


バイトの子の一部は、私のことを「オジサン」と言って、結構気軽に接してくれる。


昼間の私は、なぜかテキトーで陽気なキャラなのだ。

ユキにしか見せたことのない本当の姿は、彼女たちは知らない。


「いや、そんなことはないよ」

「私は、見てのとおり暗くて悲劇的な、変なオジサンだ」


そう答えたが・・・そうか、やはりユキのメールで舞い上がっていたか。

ポーカーフェイスというのは、私には無理だな。



実際、私は満ち足りていた。

ユキとの、こういう何気ない、気軽で楽しい普段のやりとりを望んでいたからだ。

これ以上、何をユキに望むことがある?


私が与えてやらなければならないのに、いつもユキが与えてくれる。

ユキに、なにかを与えてやれるような男にならなければな。


アルバイトの子たちに、


「ささ、ちゃんと仕事してくださいね、オジサン!」


と、けしかけられながら、私は、そんなふうにユキのことを思った。

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