第91話

内容は割愛するが、

いずれにせよ、夜の夜中にあんな鬱陶しい口調のメール(しかも長文)を送り付けてしまった私は、当然、凹んだ気持ちでいた。


世の常識として、長文や鬱陶しいメールは、女性に嫌われる。

しかも、真夜中と来た。


典型的に嫌われるメールのお手本のようなものだ。


唯一、救いがあるとすれば、その内容は心からの真実であるということだけだ。



朝、少しだけ早く目覚めた。

ユキに送りつけてしまったメールを読み返す。


自分の行動は、自分の意思で行ったもの。

自分の言葉は、素直で正直な気持ち。


そのことだけは、何の変りもない。


だから、朝、目覚めて

口調だけ落ち着いたものにして、酔って眠りにつくときも、朝、目覚めた瞬間も、同じ気持ちだ・・・と、再びメールを送る。



深夜と早朝に、鬱陶しい長文メールだ。

決して、やってはならないことを、酔っても素面でも、した。


正直な気持ちだし、これが私なのだということは間違いない。

妙にスッキリした気分で、その日の午前中は、妙に静かで穏やかな気持ちで仕事が出来た。


あれだけやっちまえば、さすがのユキだって引くだろう。




昼飯を食い終わり、コーヒーを飲んでいると、


「おはよ! メール長いから、読んでる途中に寝落ち」

「あれじゃ、できそこないの小説だね!」


突然、ユキからメールが入る。


ユキは、私のやや変則的な昼休み時間を知らない。

それなのに、見ていたかのようなタイミングで、メールを送ってくれる。

それに、また驚いて、そのことを書く。


「お~!すごい!!」


いつものとおり明るい言葉。


「毎回、驚きだよ」


そう返して、数瞬後、メールのスタンプ?が届き、それを開くと


「えぇ~!?」と音が出た。


絵文字から音が出る事を知らなかったので、私は少々驚いた後、大笑いしてコーヒーを吹き出しそうになった。





ユキには、まるで敵わない。

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