第46話

ガラにもなく文学の話になったので、少し小説風の言い回しで、ユキとの初対面のエピソードを書いてみよう。


ユキよ、私は多少酔ってるが、ユキのプライベートを侵害するような事だけはしない自信があるから、少しだけ書かせておくれ。




***




インターフォンの音がした。

そうか、取材の助手が来たんだな。


「はーい、どうぞ!」


寝ぐせと無精ひげを蓄えたまま、私はドアを開ける。

そして、一瞬現実感を喪った。


真っ先に私の目に、飛び込んできたのは、少し現実離れした美貌だった。

そして、スラリと高い背。


視線は、ほぼ私と同じ高さにある。


「ご連絡した、ユキです」


ユキは不格好な私を見て、少し警戒していたようだ。

・・・確かに、これは仕方がない。


「・・・どうも、スズキです」


部屋を片付けておけばよかった。


「ごめんなさい、散らかってて」


本当に私の部屋は汚かった。

うず高く積まれた書類、タバコの吸い殻、転がったウィスキーの瓶

・・・スケベなチラシなんかは無いよな?

内心焦って頭を巡らす。


「あ、ちょっと片付けましょうか?」

「良ければ、勝手にやりたいのですが」


几帳面らしいユキが言う。


「・・・申し訳ない、頼めますか?」


完全にユキにお任せすることにした。


なんとも情けない。

最初にユキがしたことは、俺の部屋の整理だった。



***


このくらいにしておかないと、叱られそうだ。








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