第45話

さて、真昼間から酒を飲み始めた。

だから、ユキのことは書かないで、少し趣向の違う話をする。


実は私は文学には、まるで興味がない。

ただ、何かを書きたいという衝動にかられて、こうしているだけだ。


昔、新潮社に斎藤十一という、怪物的な編集者がいた。

彼曰く


「良い物書きにはデモンが住んでいる」

「彼らには、書かずにはおられない何かが住み着いている」


そんなようなことを語っていたそうだ。


詩にも興味は無いのだが、

アルチュール・ランボーの詩は、凄いと思ったことがある。

小林秀雄の訳がお薦めだ。


何がすごいと思ったかというと、え、そこでそういう言葉になるの?

という、言葉の選び方と展開だ。


ランボー曰く、実際に体感したことを描写しているだけだと言う。

頭の中で想像した景色ではなく、実際の光景を描写しただけだと。


それに何か、感慨を覚えたことがある。




ユキよ、私だって不届きなことばかり考えているわけじゃないよ。

たまには、まっとうなことだって書くんだ。

・・・今、少し酔いがまわってるけど。

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