第16話

朝、目が覚めて「ああ、やっちまった」と思った。

昨晩、少し飲み過ぎた。


僕の悪い癖で、少しおセンチになる。

人と飲んでいる時は、確実に陽気なオッサンだが、一人で静かに飲むと、ときどきこうなっちまう。


それはそれでいい。

一人で済むなら。


ところが、あろうことに、ユキにメールを送ってしまった。


朝起きて、その事を思い出し、俺は頭を抱えた。

・・・これは、さすがに呆れられたな。

数日間、仕事で一緒にいただけの女性だ。


私とユキは、それだけの関係でしかない。

そんな彼女に、こんなことを言ってしまうとは。


確かに、嘘ではないし、これが本当の私なのだから、仕方がないが、

それにしてもなぁ・・・。


おそるおそるスマートフォンを見る。


夜中なのに、ユキはちゃんと向き合って、優しい言葉を贈ってくれた。



彼女に対し、真の敬意が湧く。

まるで幼子みたいな私を、包み込んでくれているようだった。


彼女は、絶対に幸せにならなきゃいけない。

私は本気でそう思う。

私にできることは、何だろう?


何もするな!が答えなら、それだって受け容れられる。

私みたいな男が、軽々と触れてよい女性ではないのかもしれない。




大袈裟な言い方に聴こえるだろうが、ユキが聖母のように本当に感じた。


こんな文章を、朝目覚めてすぐに書いている。

・・・時間は、仕事前、朝の6時台。


こんな時間に、こんな気持ちでこんなことを書いたのは、初めてだ。

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