第7話

朝、無気力に起き、ボーっとコーヒーを啜っていると、ユキからのメールがあった。

予想外のタイミングだった。


正直、気持ちが明るくなった。


まぁ、美しい女性から連絡を貰って心が明るくならない男はいまい。


とはいえ、こんな良い気分で朝を過ごしたのは、いつぶりだろう?


こんな気分なら、仕事で気に入らない事があっても、飄々とやり過ごせるだろうなぁ・・・そんな気がしたが、もちろんそうだった。


その日は妙に面倒事が多かった。

とても良いタイミングで、ユキは明るい口調のメールを何度かくれた。

その度に、こっちも気分が明るくなり、自分でも少し驚くほど、要領よく面倒事を片付けてしまう。


正直、ありがたかった。


我ながら単純だが、素直な気持ちなのだから仕方がない。

恰好つけても始まらない。男の本音など、こんなものだ。



物語によく出てくる台詞に「自分のことを忘れないでほしい」というものがある。

私は正直、そんなことを思った事が一度もない。

誰に知られることもなく、眠るように去っていれけば十分だと思っている。


だが、もしかしたら矛盾なのではないか?


ユキのメールが来た朝、嬉しかった。

それは、ユキが私のことを覚えていてくれて、私の相手をしてくれたからではないのか?


本当は、私は自分が思っているより孤独が好きでも、忘れられたいとも、思っていないのだろうか?


単純な話だ・・・それが、ユキからの連絡だったからだ。


自分の心を難しくしているのは、素直な気持ちを抑え込もうとしているからなんだろう。


・・・素直さか。


それが、悪い意味での本音という言葉や欲望という感情に言葉に変わってしまうと、互いを不幸にしてしまう。


そうならないための素直さが欲しいな・・・そう思った。

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