第02話 スキルがあったとしてもわからないものだ

記録:960年――月――日 転生者、ユノ・スランダード元より明輝 薫

   毒死により、スキル《生死生》が強制発動――。

 

 

 

 

 

 「うっ……」

 

 明るい……。夜が開けたのか……。

 昨日は確か……毒のある雑草を食べてしまって……。

 そのまま失神しちゃったんだっけ……。

 とんだ災難だ……。もう一生食べたくない。

 

 「はぁ……お腹すいたなぁ……」

 

 この体はまだ幼い子供だ。

 ご飯を食べなければ、数日で死んでしまうだろう。

 だけど、食べれそうなものが周りにない……。

 このまま飢え死にエンドは嫌だぞ……。どうにかしなければ……。

 

 「あぁ……そういえば水も飲んでなかったな」

 

 ご飯より水を先に見つけるべきだったか……。

 こんなときにスキルがあればな……。

 

 「川の水のろ過の仕方……忘れたしなぁ」

 

 早速詰んでないか?

 せっかく転生したのに、転生して早々に大ピンチ何だけど。

 

 あぁ……なんか頭がクラクラしてきた……。

 


 

 

 記録:転生者、ユノ・スランダード、餓死によりスキル《生死生》が強制発動。

    また、二度目の死亡によりボーナスとして

    《空腹耐性》《毒耐性》を取得。

 

 

 

 

 



 「はっ……!」

 

 また……僕寝てたのか……。

 こんなことしている暇はないのに……。早く食料と水を……。

 

 「あれ……お腹がいっぱい……?」

 

 なんでだ? 何もしてないのにお腹が膨れたぞ?

 あの雑草の中にないかそういう成分が入っていたのか?

 それともスキルか? でもお腹が膨れるスキルなんて持ってないぞ?

 そもそもそんなスキルがあるなら、とっくに使っていたはず……。

 

 「まぁ……わからないものは考えてもわからないのだ、次の目標を考えよう」

 

 水は……何かもういらない気がしてきたからいいや。

 次の目標といえば、あれだな。魔物を倒すことだな。

 この森を抜けるためには絶対に魔物を倒さなくてはならない。

 

 僕にできるか? 前世でも虫は殺したことあるけど動物はないぞ?

 それより倒す以前に武器がないじゃないか。

 

 「素手でも倒せる魔物……」

 

 スライムか? いやスライムは物理攻撃が効かないじゃないか。

 あんな下級の魔物も倒せないのか僕は。

 下級といえばゴブリンか。いやゴブリン……。

 格闘の知識はないぞ僕……。それにこの体がどれだけ頑丈かどうかわからないし。

 一撃でKOなんてこともあり得るな……。

 

 ザッ

 

 そんなことを悶々と考えていると、なにやら不穏な足音が……。

 

 「ギィ……! ギギィ!」

 

 うわー……ゴブリンだ。

 しかも棍棒持ってるし……。もう無理じゃん。

 

 「ギッ!」

 

 うわー……一匹じゃなかった……。

 一匹だけならワンチャンあるか? って思ったのに……。

 さすがに三匹は無理だよ……。

 

 「帰ってくれないかな……」

 

 僕が一歩下がると、ゴブリンが一歩近づいてくる。

 と、いうことは僕が走り出したらゴブリンは全速力で追ってくるということ。

 

 「ギィッ!」 

 

 「うわぁ!?」

 

 一番前にいたゴブリンが襲ってきた。

 僕は驚きすぎて尻餅をついてしまった。やばい……!

 

 ゴブリンが力強く握っている棍棒を僕の頭目掛けて振り下ろした。

 

 ゴッ!!

 

 頭蓋骨の割れる音と共に一瞬にして激痛が全身に走る。

 そしてまた僕は闇の中に潜った。

 

 

 

 

 

 記録:転生者、ユノ・スランダード 撲殺死によりスキル《生死生》が発動。

    他者からの直接打撃により、攻撃を仕掛けた対象に

    スキル《生死共有》が発動。対象は即座に死亡。

    また、三度目の死亡によりボーナスとして

    スキル《身体強化》《危険察知》《結界》《自己再生》を取得。

    さらに、スキル《身体強化》《自己再生》は常時発動型に進化。

 

 

 

 

 


 「ギィッ?!」

 

 うるさい……。

 この声は……誰の声だ……?

 そういえば僕……さっきまで……誰かと戦っていたような……。

 

 そうだ! 


 「ゴブリン!!……ってあれ?」

 

 バッと起き上がると、足元にはさっき襲ってきたゴブリンの生首が……。

 

 「はっ? えっ? 死んでるのか……?」

 

 残りの二匹のゴブリンはさっきとはまるで様子が違う。

 これは……僕がやったのか……? どうやって……?

 無意識のうちにしていたのか……?


 「ギィッ!!」

 

 「わぁ!?」

 

 急に残りのゴブリンが走ってきて、僕の脇腹に棍棒を打ち込んだ。

 コツンッという音が鳴って、僕には痛くも痒くもなかった。

 

 「あっ……あれ? 痛くない?」

 

 「ギッ……ギギィ!?」


 ゴブリンも意味がわからなくて困っているようだ。

 それにしてもなんで痛くないんだ? しかもダメージもないように見える。

 急にゴブリンが弱くなったのか?

 いや……それはないな。ということは……。

 

 「スキル……?」

 

 でもスキルなんて……。

 そんなものがあったなら、最初から使っている。

 

 でも、そのスキルが後から手に入ったものだとすれば……。

 待て、僕は今までに何回倒れた?

 

 「もしかして……」

 

 意味がわからなくて困っているゴブリンを押しのけて、まだ昨日食べた雑草が入っている石を持つ。これを……。

 

 「ばくっ!」


 ゴクンッと飲み込んだ。

 昨日の僕ならここで視界が暗くなってきて、そのまま倒れる。

 僕の憶測が正しいのなら……僕は倒れずに立ったまま。

 

 「……なんともない」

 

 ここである一つの仮説が浮かんだ。

 三度の暗闇の中とは、死んだということではないか? これだ。

 死んだことによって、僕はスキルを取得したのではないだろうか。

 

 「そうだとしたら……生き返るためのスキルがあるはずだ……」

 

 必然的にこうなるだろう。

 生き返るためのスキルなんて、そうない。

 前世でもそんなスキルはなかったはず。だから僕はわからなかったのか。

 

 「僕は死ぬことによってスキルを獲得する……しかも体は進化して……」

 

 となれば……。

 

 「よしっ! 死にまくってスキルを大量獲得してやる!」

 

 僕はゴブリン達の存在を忘れてそう意気込んだ。

 

 

 

 

 

【ステータス】

 個体名:転生者、ユノ・スランダード

 年齢 :9歳

 身長 :135 cm

 体重 :12  kg

 スキル:《生死生》《生死共有》《闇》《自己再生》《結界》《身体強化》《危険察知》

 耐性 :《空腹耐性》《毒耐性》《寒暖耐性》

 

 

 

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転生したので魔王5体ほど倒します 炎木神奈 @kaorukurumi

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