第2話
ここは小舎制の児童養護施設『猪木院』。現院長である
施設の特性上、同じ屋根の下で暮らしている子供たちのほとんどが過去に暗い闇を持つ。両親と死別した者。虐待を受けていた者。更に親戚を盥回しにされた者。大舎制の施設でいじめに合い、移ってきた者もいる。そして…何も無い者もいる。何一つ。
私には、何も無かった。両親も、名前さえも。
十八年前の秋の末。朝から降っては止み降っては止むを繰り返す優柔不断な雨が続いた、薄暗い日のことだった。私は捨て猫よろしく、猪木院の門前にダンボールに入って捨てられていたらしい。慧に発見され、当時既に児童福祉法改正がなされていたお蔭で、一歳未満である私も乳児院ではないこの院に引き取ってもらえることとなった。
時雨の中で出会ったから、
産まれたときからここにいてスタッフたちの愛情をたっぷりと与えられて育った私は、自然に慧を真似て助ける側に回るようになっていた。初めは失敗ばかりで、逆に傷を抉ってしまうことも多々あったけれど、慧の指導のおかげで今ではスタッフの手伝いをさせてもらえるようになった。
でも九年前―――
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