第二傷重症、重症からの新たな絆 第21話

 利一がどことなくソワソワと落ち着かない様子だった。

 きいろは何があったのか、と心配になる。


「何かあった? なんでもでも言って」


 利一がすっと息を吐く。


「俺……きいろがずっと好きなんだ」


――え?


 時間が一瞬止まる。


「三年生に勝って、一番になったら言おうと思ってた。その、だから、俺と付き合ってほしい、です」


 利一は珍しく顔を真っ赤にして言った。

 

――利一はずっと弟だと思ってた。

 だから今更そんなこと言われても……

 それにさっき沙々から間接的にだけどフラれたばっかで、気持ちの整理がついてないのに、こんな大事なこと……。


 長考しているきいろを見て、利一は言った。


「いいよ、答えはすぐに出さなくて。

 こんな急に言われると困るよな。俺、待ってるから、ゆっくり考えて。あと先帰っていいよ。俺、打ち上げあるから」


「……わかった。ありがと、ちゃんと考える」


「あ、これ水。

 応援で喉乾いたろ?」


 そう言って利一は自販機で買ったであろう水を差し出した。

 まだ冷たいが、利一が握っていたとろだけ熱い。


「……ありがと。じゃあわたし帰るわ。今日、よく頑張ったお疲れ。今度さ勉強会も兼ねて優勝パーティーしよ」


「あ、ああ」


 利一は耳まで紅潮していた。


――本当にわたしのこと好きなんだ。

 ずっと気付かなかった。

 だから、わたし鈍いとか言われるのか。


 妙に納得し、ちょっぴちきいろは心が落ち着いた。

 まるで、告白されたのは自分の事ではないかのようだった。

 あれだけ利一は一生懸命だったのに、どこか冷めている自分がいた。


 その場で解散し、きいろは一人で帰路についた。

 一人になり、外の風に当たる。

 信号待ちの時間、ふと一筋の涙が頬をつたった。

 ハンカチで拭う。

 沙々が忘れた時用の沙々のために持運んでいるハンカチで。

 一度拭くと、もう片方の目から涙が流れる。

 もう片方を拭くと、もう片方から流れる。

 その繰り返しで次第に嗚咽が上がり、ハンカチを両目に当て、きいろは息を殺してむせび泣いた。


――取られた。あのレイって女に。

  わたしの方がずっと一緒にいたのに、どうして?

  お試しなら、憧れてたならわたしでいいじゃん。

  どうして?


 頭に疑問符ばかり浮かぶ。

 そして悔しさと妬ましさがめまぐるしく襲って来る。


――これは公開処刑するしかない。


 きいろはそう決意し、ハンカチの下にドス黒い笑みを浮かべた。

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