第19話 会いたいよ…


最近黎明の様子がおかしい。

蓮はそう思っていた。


3月は黎明が春休みなのを利用して結婚式の準備を集中的に進めていた。結婚式の準備といえば普通は会場探しとかウェディングドレスの試着とかそう言うのかもしれないが、蓮たちの結婚式はちょっと普通と違っていた。3月に集中的に行ったのはレコーディングだった。三木の会社が音楽を中心とした総合プロデュースを行う会社であったので、結婚式も音楽がテーマになっていた。そして一生に一度の2人の思い出として一緒に歌ったことがなかった蓮と黎明の曲を記念に製作していた。


様子がおかしいと気づいたのは3月の半ば頃だった。最近ちょっと甘えてくるようになったかなと蓮は思ったのだが、なんだかおかしい。


4週目の土曜、レコーディングが終わって黎明を家に送って帰るところだったが、帰り際に黎明が後ろからハグをしてきた。最近よくハグをされるな、と思って可愛いなと思っていたのだが、


(スンスン)


「何してるの」蓮が言う。


黎明は蓮の背中に顔を埋めたまま黙っている。


「なんか…嗅いでない?」


黎明がひくひく震えている。笑っているのだ。


「このパーカー好き」と黎明が言う。好きなのは蓮の匂いだ。


「来週から寮に入ったら会えなくなっちゃうから」と続けた。


「土日は会えるよ」と蓮が言った。


「蓮も仕事忙しいから今までみたいに私が時間の融通効かなくなるから会えないかも」

と黎明が寂しそうに言う。


すると、蓮はバッグを床に下ろすと着ていたパーカーのファスナーを下ろした。


何をするのかと黎明が驚くと。


バサッと黎明の肩に脱いだパーカーを掛けた。


「そんなに好きなら貸してあげる」


「ほんとに?」と目をキラキラさせている。可愛すぎるからやめてほしい。でもなんだか可笑しくて蓮は笑ってしまう。


笑う蓮をよそにパーカーを手繰り寄せてまたスンスンと嗅いでいる。


「どんだけ嗅ぐんだよ」と蓮が呆れて笑う。


「大好き」と、パーカーに顔の下半分を埋めたまま上目遣いで黎明が言った。


「…」ああ…もうダメだ。今すぐめちゃくちゃに愛したい。


しかしそれをグッと堪えて

「頑張ってこいよ」と頭をくしゃっとして蓮は帰った。我慢した自分を褒めてやりたい。


------------------------------------

「黎明は来週からいよいよ警察官だな」

風呂を上がった蓮に誠一郎が言った。


「ああ、どんな警察官になるか楽しみだよ」


「寮生活は、大丈夫だろうな」


蓮は先ほどの黎明を思い出したが、

「俺は1ヶ月だったけど、警視庁は半年だと少し長く感じるな」と言った


「昔は大分理不尽で俺なんかは散々しごかれた覚えがあるけど、今は大分変わったみたいだし、大丈夫だろう」

そういいながらも心配が滲み出ている誠一郎だった。


「この前考え込んでいたようだから、何か不安でもあるかって聞いたんだけどな、どこまで加減すればいいかって悩んでたよ」と、誠一郎が言った。


「ああ、なるほどね」しっかり活躍したい反面目立ち過ぎるてもいけないとジレンマに陥っていたのだろう。


「お前ももう大人だし、自分で決めたようにすれば良いと言ったよ、ただその能力は警察官としてとても役に立てるとも」


「何かあったら俺も親父もそれなりの立場なんだ。守ってやろう。俺はまだ若すぎるかもしれなけれど、一応キャリアだから。」と蓮が言う。


「もちろんだ、お前も警視総監目指して頑張れ」


「はは、それはどうかな。でもあいつのためになら頑張れそうだ」と蓮は言った。歴代警視総監に私大卒は誰もいない。しかし、蓮は名だたる国立大学出身者を据え置いて席次一位で試験を通過したのだ。それに加えて業務遂行能力も高く、寡黙ながら意外にも人当たりは柔らかなことから同期の国立大学出身者からも一目置かれる存在だった。権威主義的な組織だからこそ私大卒であることで逆に親しみやすさを感じる者も多かった。


--------------------------------------

入寮前の最後の日、黎明は暁の家で過ごしていた。今まで住んでいた家は引き払ってしまったからだ。研修期間が終わり、結婚式が終わったら、蓮と新居を構えることになっていたのでその合間は暁の家に世話になることにしていたのだ。


お風呂上がり、パッキングをしていたところ、暁が後ろからハグをしてきた。


「黎明、休みの日は蓮だけじゃなくて僕にも会いにきてね」

お風呂上がりの暁からはとても良い香りがする。使っているシャンプーやボディーソープ、ルームフレグランスに至るまで暁のセンスは抜群に良い。どこから見つけてくるのだろうと思う。


「もちろんよ」そういいながら黎明はまだ濡れている頭をポンポンと叩く。


「髪の毛乾かしてあげる」そう言って黎明は立った。


黎明と同じく元々ストレートの髪の暁だったが、今は以前より少し長めで緩くパーマをかけている。光が乱反射して銀色に見えてとても綺麗だ。自分の双子だが、人形のように綺麗な子だと黎明は思う。


「ありがとう、黎明」嬉しそうなのが可愛い。


「今日一緒に寝よう?」上目遣いで暁に言われる。どうして断れよう。こんな時暁が弟なんじゃないかと思う。


「いいよ」黎明も笑顔で応じた。


そして柔らかい毛布を広げると白と黒の豹は丸くなった。普通の豹と比べても大きい2匹だったが、寄り添って寝るその姿は子猫と何ら変わらないように見えた。



---------------------------------------

緊張していた寮生活には意外とすんなり馴染むことができた。生まれた時から集団生活をしていた黎明はむしろ懐かしいほどだった。そして部屋も個室で良かった。カラーコンタクトの付け替えが非常に楽だ。

それに、規律のある生活あまり自由のない生活もあまり色々なことを気にしなくて良いので楽だった。


しかしちょっとやらかしてしまったと思ったことがあった。

女子は男子に比べてやはり割合が少なかったが、入校式で集まった時にロングヘアが自分だけだと気付いた。低めでお団子にしてまとめていたが、かなり見られているのに気がついた。


黎明が見られていたのはロングヘアだと言うのではなく不似合いにモデルのような美人がいると皆注目していたのだ。ミディアムの髪を後ろで纏めている女性もいたので実際髪型はそこまで目立っていなかった。


しかし、シャワーを浴びる時になると乾かすのにも時間がかかってしまうのですぐに切らないとと慌てた。


黎明は土日に美容院を予約しようとした。しかし、平日スマホを使うことが禁止されていたので、土日に予約が取れずに困った。さらに、自由時間も最初の土日はとても限られていた。そこで、慌てて三木に相談すると知り合いの美容師に繋いでくれた。結婚式のこと考えてできればあんまり短くしないで、と三木に言われたので肩くらいまで切ってもらった。流石三木の友人、黎明はただ短くすることだけ考えていたのだが、濡れた感じにカッコよくセットしてくれた。


「インナーカラーとか入れたら似合いそうですね〜」


と言われて、やってみたいと思ってしまったが、もう警察官になったら染められないだろうと思い、学生時代に一度染めてみれば良かったと残念に思った。


かっこよく写真も撮ってもらったので、蓮に


「髪切ったよ〜」と送ると、


「かわいい」

と、シンプルに返ってきたが嬉しかった。


こんなにかっこよくしてもらったのに数時間後にはシャワーを浴びて明日からは毎日纏めるのだと思うともったいなかった。


紹介価格で安くしてもらいらつくづく三木には感謝だった。


学校に戻ると、女の子たちに

「髪切ったんだね〜」

と言われて、話のきっかけを作ることができた。まだ出会って数日なのに気付いてくれて嬉しい。


頭も少し軽くなった気がしてシャワーも簡単になり少し無理しても切りに行って良かったと思った。


警察学校では、座学と訓練があったが、訓練は少々問題だった。


誠一郎に自分の決めたようにすれば良いと言われたがまだ悩んでいた。


持久走があった日に黎明は夜、ベッドに入ってから眠れず悩んでいた。警察官になる人は運動が得意なのかと思ったが、意外と千差万別だった。とりあえず、女子の2番目を走っていたが、息は当然少しも上がらない。教官がこちらを睨んでいる気がした。余裕そうなのがバレたかもしれない。


警察学校でのパフォーマンスはその後の配属に当然関わるだろう。


黎明は自分の能力が何のためにあるのか考えた。駅で大城を助けた時、そして箱根で奥平さんを暁と救助した時のことを思い出した。もし必要な場所に自分がいれば、もっと自分を必要としている人を助けられるかもしれない。


もう警察の組織に囲われているのだから、黎明は「人外」な動きでない限り組織内で目立つのみで、多少周囲との関係が変わったとしてもそれは自分の問題で市民には関係がないと考えて、ちょっと実力を発揮してみようと思った。


次の日から黎明は男子も追い越した。


当然周囲の目も変わった。教官たちは慌てて履歴書を確認した。


「和泉黎明…受賞歴も何も書いていないじゃないか。スポーツ経験…趣味でMMA等ってなんだそれ。でもボディガードの経験ありか。趣味はと、運動と音楽?」


これだけ運動できたらどこかで名前が上がっててもおかしくないと、教官は悩んだ。


「どうした?堀内」と、先輩の相沢が聞いてきた。


「この和泉黎明って子何者でしょう?訓練で選りすぐりの男子負かしてるんですけど」と言った。


「ああその子ね。一課の真木刑事の息子の婚約者か。真木刑事が息子と一緒に鍛えた秘蔵っ子らしい。」と相沢が言う。


身辺調査があり婚約者のことも報告が必要だったのだ。婚約者ということであれば外出の許可も取りやすかった


「はあ…それにしても、男子、剣道全日本選手権優勝とかいるんですけどね。」


「その刑事も機動隊にいたことあるからね。大分みっちり鍛えたんじゃない?」と、相沢は言った。


「今年の新入生はどうだい?」と統括係長和田現れた。


「ものすごい子がいますよ」と堀内が言う。


どれどれと履歴書を覗き込む和田。


「女の子じゃないか」と言った。


「そうですこの子です」と堀内が答える。


「ああ、この子ね。キャリア蹴った子だ。言語もすごいだろう」


確かに、国家総合職合格と履歴書にあった。言語…英語TOEIC満点、ドイツ語C2、フランス語B2、スペイン語C1、中国語(日常会話レベル)、イタリア語(日常会話レベル)


「は?Bとか Cとかはよくわからないけど、6カ国語?何で警察官に?」と相沢が言う。


「何やら結構苦労人みたいで、弱い立場の人たちを現場で助けたいんだとさ」と係長が言う。人事からおおよその話は聞いていた。


黎明は、TOEICは学校の割引価格で、ドイツ語はドイツ語クラスにいたので定期試験の代わりに受験できた。フランス語は大学のゼミで扱った文献が多く、B2が目安というのでとりあえず受験。スペイン語はあまり難しくなく楽しかったので自分で受験した。中国語はゼミに中国人留学生がいたので教えてもらい、イタリア語はスイスで話せなかったのが悔しかったので暁に会話ができるレベルくらいまで教えてもらったのだった。韓国語も孤児院に韓国アイドルファンの女の子がいて、一時その子の中で韓国語ブームがあったのでその付き合いで多少はできたが実際に使ったことがなかったので書かなかった。

警察官の採用試験で国家総合職合格は一応能力の証明として書いたが、国家ではなく地方公務員を選択する理由は面接で必ず聞かれると言われていたので綿密に準備して自分の経験ベースで話したのだ。 



「いやぁ、これはどこに配属されるでしょうね」と堀内はいう。


「本人は生活安全課と面接では言っていたそうだよ」と校長が言う。


「生活安全課は女の子の希望者がとても多いですが語学力も身体能力も必須じゃないですから、通るかどうか」と、相沢は言った。


「まあ研修でゆっくり他の子の適性もみつつだな」と校長が言った。


その夜、短い自由時間の中で、隣の部屋の女の子に声をかけられた。


「和泉さん、今日すごかったね、びっくりしちゃった」


「持久走のことだよね」と黎明はいう。


「もちろん!?」


「警察官のおじさんと小さい頃から走ってたんだ」と、黎明はありえそうなことを言った。


「そうだったんだ〜。私運動全然できなくていつもビリ。音楽隊目指して入ったのにこれから着いて行けるか心配になっちゃった。」と、彼女は言った。


「音楽やってたの?私もバンドやってたよ。何の楽器やってたの?」と黎明が少し嬉しくなって聞いた。


「マーチングバンドでトランペットをやってたの」と彼女も嬉しそうに答えた。


「トランペットか、私もトランペットの音楽よく聞くよ。歩きながら演奏って難しそう」



「そうだね、中学までは吹奏楽部だったから高校に入ってマーチングバンド初めてからは、慣れるまで大変だった。てかトランペットの音楽聴く人なんて初めて会った!」と彼女は笑った。


「ちょっとジャズっぽい感じ音楽なんだけど、よく寝る前とかに聴いてリラックスしてた」と、黎明は言った。


「バンドってジャズだったの?」


「うーん、、、リーダーの気まぐれでジャンルが変わる変なバンドだったからジャズも含むって感じ」と笑った。


「へえ〜かっこいい…あ、そろそろ時間だね、ありがとう!私伏見葵!葵でいいよ!」


「私も黎明でいいよ!こちらこそありがとう!また明日!」

そう言って2人は部屋に戻った。黎明は人の目が変わることを恐れていたのに逆に友人ができてホッとして嬉しかった。


しかし、次の朝のランニングから体力に自信のあった男子達は頭を抱えた。黎明に抜かされると、スピードを上げるが、スピードを上げても上げても距離が変わらないのだ。当然であった。異常な速さで走らないように黎明は2位との距離を一定に保って走っていたからである。


「おかしい。絶対におかしい」

剣道全国大会優勝の阿部はランニングが終わった後に呟いた。黎明のせいでスピードを上げすぎてクタクタになっていた。


横目で彼女を見ると走る前と様子が変わらない。なんなんだ彼女は。初日から綺麗で目立っていた彼女は、彼の中で運動ができる枠に入っていなかった。大抵運動ができる女子は、ショートカットやスポーツ刈りに近い髪型で、厳しい部活によくいる険しめの顔をしていた。また陸上をやっていたタイプの顔は決まって日焼けして頬が特徴的な痩せ方をしていた。彼女はどれにも当てはまらなかった。


しかし、女子たちは知っていた。風呂に入った時に痩せているのに筋肉質で腹筋が6つに割れていたのを。女性は皮下脂肪が多いのであのような引き締まった体型に並大抵の運動ではならないと知っていた。それは猫化の肉食獣の筋肉を彷彿とさせた。


シャワーの時間帯に

「部活何やってたの?」と聞いた剣道女子が黎明が


「バンドやってたよ」と、答えると、


「ああ、バンドね…」と相槌を打ったきり、てっきり部活で何か成果を上げて入ってきたと思っていたので、次に何を聞けばいいかわからなくなった。


その会話を聞いてた周りの女子も

「バ、バンド?」とつい言ってしまった。


「そういえば楽器何やっていたの?」と葵だけが楽しげに聞いた。


「ボーカルだったの」と黎明が言うと


「ぽい〜」と言って呑気に笑っていたが、ほかの女子は目を見合わせていた。


黎明としては、周りの女の子たちもしっかりとした身体つきをしている人がたくさんいたので、何も自分が特別だとは少しも思わなかった。服を着ているとがっしりしている女の子も実はギュッと引き締まった体型をしていて内心驚いたりしていた。


黎明は最初こそ驚かれていたものの、理解を超えるものを目にすると皆受け入れる以外になく、「別枠」としてもはや鑑賞対象にされつつあった。もちろん女子たちは誰も競おうだなんて思わなかった。嫉妬は自分も追い越せると思うからこそするものだ。


最初の2週間はあっという間に過ぎた。

しかし黎明は土日に外出の機会を得られず蓮に会う機会がなかったのがとても辛くなってきていた。


2週目の休日、ビデオ通話をした後余計に寂しくなり、3週目の後半は毎日蓮のパーカーをぎゅっと抱きしめて会いたくて少し泣きそうだった。大学に入ってから思えばかなり頻繁に蓮に会っていた。家も近かったので一回一回の会う時間は短くても、夕食を蓮の家で食べたり、作ったものをお裾分けしたり、大学に送ってもらったりと、長く顔を見ない期間はなかった。高校まではたまにしか会っていなかったのにこの4年間ですっかり自分は変わってしまって蓮なしで生きられなくなってしまったと思った。


3週目の日曜日はやっと蓮の家の方まで外出できて、蓮とも都合がついた。その日は誠一郎、暁、蓮で食事に行った。


就職祝いをしていなかったと言って、お寿司をご馳走してくれた。また、蓮と誠一郎からは、就職してから使えるようにと革のカードケースをプレゼントされた。


離れてから家族の有り難みがわかり、黎明は泣きそうだった。


「学校生活はどう?」と暁に聞かれた。


「うん、よくよく考えれば人生のほとんどが集団生活だったからそこは問題なかった。あと、男の子たちより早く走ってみたけど、今のところ大丈夫」


「そうかそうか」と誠一郎が言う。黎明が自分で選択したことを喜んだ。


「何かあったらすぐに言えよ」と少し心配そうに蓮が言った。


「うん、わかった。ありがとう。」と黎明が微笑んだ。



「蓮、今日は予定ないんだろう?黎明を送ってあげたら良いよ」と誠一郎が気を遣って言った。


「うん、そうするよ」と蓮も言う。


「黎明、今日はこっちまで出てきてくれてありがとう、がんばってね」そう言って暁は黎明にハグをした。


本当につくづく美しい子どもたちだと誠一郎は見ていた。


蓮の運転する車の助手席に座り、黎明は都会の中心からだんだん遠ざかっていく風景を見て、寂しくなっていた。


「黎明、君はもう大人だから昔みたいに突然屋根の上にジャンプしたりしないと思うけど、もし何かあったら俺がなんとかするから」

そう蓮が言った。先ほどの話を聞いて嬉しい反面恐れもあった。



「うん、ありがとう。屋根の上にジャンプしたり、人を片手で投げたりもきっとしないから。」と黎明は笑った。


「ははっそういえば暁の首根っこ掴んで投げてたな」荻野目の邸宅でのことを蓮は思い出した。


「蓮も無理しないでね」黎明はあの日蓮が倒れたことを思い出して少し心細くなった。


「うん、ちゃんと健康第一にするよ。黎明、もし万が一何かあって、俺の力でも親父の力でも、また暁でもどうにもできなくなった時」


蓮は一呼吸置いた。


「そしたら、海外でもどこでも遠くへ逃げてしまおう。俺と黎明ならどこでも生きていける。」


黎明は笑った。でも蓮の目が真剣だった。


「ありがとう。蓮」黎明は真剣な眼差しで言った。


2人は学校の近くに車を停めると黎明が帰らないといけない時間ギリギリまで車の中で話をした。


「来週は、出張で会えなそうだ」蓮はそう言った。


「わかったわ、また来月会えるの楽しみにしているわ。」


そして、長く、しかし優しいキスをした。


「じゃあ気をつけて帰ってね。送ってくれてありがとう。明日からも仕事がんばってね。」


「ありがとう!黎明も頑張れよ」


名残惜しい気持ちを抑えて黎明は背一杯の笑顔で手を振った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る