第3話 マダムと青年

「今回は随分派手にやったみたいね。」


「はい、すいません。」


「仕事をしたのならいいのよ、でも警戒されるようなことはしないでちょうだい。」


「はい、次は気をつけます。」


「それで?弁護士の依頼人が誰かわかったの?」


「はい、衆議院議員の金田康次郎でした。彼の指示で、研究所に関わった者の関係者にアプローチしていたようです。」


「それで、彼らはまだ生きてるの?」


「すみません。何か知っていた人たちはもうほとんど残っていません。」


「いいわ、あなたのせいじゃないわ。私のところに来てから動いたんじゃどっちみち遅かったのよ。」


マダムはカチャリと紅茶のカップを置いた。


「金田ね、まだ当選回数だって多くはないわ。彼をやってもただのトカゲの尻尾切りね。」


マダムは実際の年齢よりかなり若く見えたし、美しいひとだが、こういう時はひどく冷酷だ。

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