第1話千葉狂想曲

-2年後-



この2年間。

風霧家現当主、風霧綾音の継続的な資金提供によって生活水準は一定を保てたと同時に風霧家の主に綾音の護衛を任じられた俺は、現在、風霧家の家でご飯を食べていた。

風霧家には長男長女がおり、末娘の綾音が家督を継いで以降、長女との確執が増えていると聞く。

今は長男の風霧正人と共に綾音の自宅で三人、焼肉をしている訳だが。

「大河様、お肉が焼けましたよ!」

お高いであろう肉をキラキラした目で渡してくる綾音におぉ?って感じで受け取る大河と酒を呑んでゲラゲラ笑う正人。

この二人はホント仲良いよなと思いつつ渡された肉を頬張る俺は、次に白米を頬張るのであった。


「僕はさ」

お手洗いで離席した状況で正人は酔っ払いだと思っていた人間がする目じゃない顔で、真剣に目を鋭くさせ大河と向き合う正人。

「妹達の争いを心苦しく思ってるんだ。沙織、僕の妹は僕が当主になることを望んでいたんだから。綾音には可愛そうなことをした」

「それを俺に伝える意図が見えませんが?」

「気付いてる癖に鈍感な振りするなよな?」

箸を箸置きに置き、俺は風霧家の影の君主たる風霧正人と真っ向から見つめ合う。

風霧正人が妹に当主の座を譲った。これは適切で間違いない。

彼が当主になれば間違いなく88柱本家ある

序列のトップになれたのに、風霧家はその機会すら失ったとさえ言われてる。

今のトップは俺の本家、春日なのだから。

「綾音との婚姻。考えてくれたのか?」

「護衛の身なれば、そのような下克上考えることこそ不遜きまわれりと存じます」

「風霧優香。彼女の存在が大きいのは重々承知している。綾音とはまるで姉妹のような間柄でもあることも。綾音には支えがいるんだ。変わらないモノ、絶対的な肯定者、共に隣で歩める者。このどれにも風霧正人はない。だからこそ妹が好いている君が隣で居てくれるだけで僕としては嬉しいんだ」

「はっ。善処致します」

「堅いね。まぁいいさ。でもいいかい? 僕はね、自分でもどうかと思うほどしつこいよ」

独自の険が取れた正人はおおらかに笑いながら酒を呑んでいた。

ちなみに空き瓶が30何本ほど辺り床に散らばってるのを見る限り、大物だ。







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