第5話 料理上手になった兄貴
家に帰ると、妹、
様子を確認した後は、装備を部屋において、着替えを持って風呂場へ向かう。どうやら、誰も入っていないようなので、ササッと浴室に入ってボディソープを泡立てて、体を洗い、泡も流して、体を拭くと、部屋着に着替えて食事前にストレッチをする。ノルマを済ませると、下ごしらえしていた素材を使って、加熱して豚の生姜焼きを作る。付け合わせのキャベツを加熱中に切って、更に盛り付けると、推定弟――、
そろそろ仕上げに入る。予約炊きだったご飯をよそって、インスタントの味噌汁を作って、陽射の方にも豚の生姜焼きを盛り付けて渡してやる。お代わりは自分でやるように手で指示は出しておく。陽射は驚きつつも複雑そうな顔をして、生姜焼きを見ている。オレは三席並んだダイニングテーブルの端に座って飯を食べ始める。
「いただきます」
「……」
それを見ると陽射も食事を始めた、
「……いただきます」
小さい声だが、いただきますの声が聞こえた。それを聞き届けると、少し気分を良くしながら食事を勧める。食べる時はよく噛んで腹に収める。食事を終わらせると、食器を食洗器に収めて陽射にサッと流して食洗器に収めるように指示すると、部屋に戻っていく。
やれやれ、今日は本気で頭が痛くなる日だよ。明日は吉田にあの後の話を聞かないとな。それに直近では部活関連でイベントが起きるよな、面倒がないといいけど。
* * *
快晴が出ていった後には双子の兄弟が残って、レトルトカレーを食べ終わった後と自炊された生姜焼きの跡が残る。
陽射がサッと洗って食洗器にぶち込むと、日向はお湯を沸かして紅茶を二つ入れる。
「なに、あれ?」
「知るか、なんか綺麗になってたんだよ」
「いや、えー、別に嫌な人って訳じゃないけど、なんか違うよね」
解釈が違うというような表情で紅茶をすする日向は、更に疑問を口にする。
「あんなに甲斐甲斐しく世話してくれるような人間だったっけ?」
「そこはオレも疑問に思ったけど、飯は旨かったぞ」
「そこはどうでもいいんだけど、で、なんか体調悪いとかない? あと、なんか言われたとか」
「お代わりは自分でよそえと指示された位だ。何を嫌ってるのか知らないけど、あの人は別に悪い奴じゃないだろ」
「分からないよぉ。今更私たちに取り入ろうとしているのかもしれないし」
訝しむように日向は陽射に忠告する。快晴と双子の二人は仲があんまり良くない。
会ったばかりの頃には無視や睨み付ける位の嫌がらせを受けていて、そこの印象が日向には強いため、あんまり快晴が信用できないのだ。
陽射の方は、迷宮学園に入学するために快晴が筋トレや勉強を頑張ってたり、勉強の方も偶に教えてもらったりする。なので、最初の頃より印象は悪くなかった。
「取り入る必要、あるか? あの人なら最悪親父から慰謝料でも貰って離れればいいしな」
「うん、確かに。じゃあ、何の目的でこんな事を?」
「さぁな、学校に入って中身が変わったとか?」
間違ってはいない、実際精神に別のものが混ざっている。
しかし、そんな事を知らない二人は外れた憶測のまま、話を続けていく。今度は自分達がダンジョンに行くために必要な話について話し始める。
「親父達の紹介の補助員はどんな人達なの?」
「お父さんの会社と契約している冒険者だって。三週間後にやると思う。それまでは企業の」
現在、中学三年生の二人は本来ならダンジョンへは入れない。ダンジョンへの入場規定では15歳以下は入場不可だし、冒険者への登録も認められていない。この世界では中学生までは一部を除いてダンジョンへの入場は認められていない。
その一部の例として、補助員付きでのダンジョンダイブだ。
補助員とは、冒険者の持つ資格の一つで、人格と実績を兼ね備えた人物しか取得する事が出来ない厳しい資格である。
この資格がある人間なら10階層までは、中学生を連れてダンジョンダイブを行える。
この資格は貴族やそれに準じる人間が、迷宮学園でスタートダッシュを切るために考えられた制度だ。強さを示すことで、貴族としての威と力を持つ事が出来るという。一応、冒険者ギルドが発行している資格ではあるが、ほぼ貴族の従者が獲得している資格である。
そして、企業の中には研究を進める為に補助員用の冒険者を大量に契約していたりする。そうすることで研究員や作業員をある程度鍛え上げて、成果を出しやすい環境作りをする。
二人の父親は立場を活かして、二人に補助員を付けてダンジョンへ潜らせようとしているのだ。一見、二人の父親が制度を乱用しているように見えるが、問題はない。今回のダンジョンダイブは彼自体のポケットマネーで補助員の冒険者達に冒険者ギルドを通じて依頼を出したので、なので制度の乱用や資金の横領はやっていない。
ちなみに快晴はそういうのはやっていない。
「親父も偶には役に立つよな」
「こういう時位は、特権を活用させてもらわないと」
「でも、よくこういう手続きしてくれたよな。兄貴の時はそういうのはなかったんだろ」
「父親面したかったんじゃない? あの人はもうお父さんの事、父親として見てないみたいだし」
「なるほど、そういや。色々知ってたのに補助員を頼まなかったよな、あの人」
陽射は兄である快晴の努力と能力を見てきたので、補助員の事を知らない筈のない兄が頼らなかったことを不思議に思う。
父親の紹介が気に入らなかったのか、紹介先の冒険者たちに思うところがあったのか。態々聞く事ではないので、真実は快晴の心の中である。
そこからは、話も盛り上がらないので解散しそれぞれの部屋に戻り、ベッドで眠りについた。
* * *
朝、目が覚めると、前でも日課だった運動を始める。
快晴の体は中年の体と比べても段違いに動かし易い。食事もそれなりの量を食べたというのに、胃もたれする感覚はない。若返りに加えて、能力的にはかなり性能の良い体が手に入った。これで【
「朝食だけでいいか。昼食は食堂でも行けるだろ」
朝食を作っていると、少し遅れて陽射と日向が下りてきた。陽射と日向が下りてきたので、とりあえず朝食の有無を聞く。
「朝食いるか?」
「ああ、うん。お願いします」
「お願いします」
「よし、来た」
欲しいというなら、よこしましょう。既にハムエッグとトーストが焼き上がり、スクランブルエッグも作り終わったので、更にプチトマトとレタスを水洗いして、同じ皿に盛りつけてやる。二人を呼んで配膳させると、お湯が沸いたので紅茶かコーヒーかを聞いて、リクエストに沿って飲み物を用意して、インスタントのコーンスープを用意すると席に着く。
「「「いただきます」」」
挨拶すると三人は食べ始める。むしゃむしゃ食べていく。快晴は二人の食べ方を見ると、綺麗に食べているようで育ちの良さがわかる。あの親父がそういう指導を行うとは思えないので、母親の方が指導していたのだろうと予想する。
集中して食っていると、直ぐに食べ終わったので食器を集めて軽く流し、食洗器に放り込む。一応、お弁当もいるか聞いておくか。
「昼食は、弁当いるか?」
「いや、いい」
「私も」
「そうか、必要なら晩に言え。作れそうな作る」
それだけ伝え、自分の部屋に戻って制服に着替え、必要な物を詰め込むとウェストポーチと剣を持って、学校へ向かう。
「行ってきます」
さて、吉田は何を喋ってくれるかな。
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