第2話 おれの初日
【
そして何回も見た覚えのある光景に疑問符が浮かぶ。
ここは、ダンメモのオープニングか。スキップしようとしたが、表示が見つからない。というか、メニュー表示すらない。
加えて、おかしい所が幾つかある。脳機能を利用してのVR技術だが、それでも感覚はここまでリアルにならないはずだ。スピーカーからの音量、空調の気流、体を動かす感覚も今までと違う。なんというか、質感がある感じだ。
「――以上で、第一学園の入学式を閉式する。新入生一組から順番に教室へ戻っていってください」
司会役の男性教師が終了の言葉を出し、新入生が起立し体育館を出ていく。
考え事をしていたら、式が終わったようである。オレは場所的に三組だと認識。三組で呼ばれると、その流れに沿って移動していく。
とりあえず、今は流れに沿って移動する。メニューが無いなら無いで仕方がない、初めにガジェットを貰えたらそこからはメニュー機能は使える筈だから、そこで試す。
というか、妙に視線が高いな。オレは170㎝丁度だが、今は180㎝位はあるぞ。しかも、筋肉質で日焼けした肌。これで金髪だったら役満だな。
教室にたどり着くと、黒板に座席表が貼られているので確認し、その席に着く。
窓側の端の列、後ろから二番目に座った。
五十音順になっているらしい。背が高いからな、後ろに迷惑かけないようにしないと。
座っていると、おそらく担任らしいスーツ姿の女教師が入ってきた。
「皆さん、初めまして。私は一年三組担任の
なんか聞いた事あるな。ゲーム内だろうけど、何だったっけ?
考え事していたら、俺の番が近づいてきた。
「吉田和樹です。趣味は剣術、武器は剣で、前衛希望です」
こんな感じか。初めの人間の自己紹介を真似したんだろう。というか、俺の本名で言ってもいいのか?何か手掛かりになるものは、……おや、内側のポケットに学生証が。ええと、【
お、次は俺の番か。
「八十島快晴です。趣味は筋トレで、武器はメイス。前衛希望です」
噛まずに言えた、これで問題はないだろう。
とりあえず、これで終わりならちゃっちゃっと残りのお話を聞いて家に帰りたい。家に帰って、現状整理を済ませたい。丁度、新品のノートがあるわけだし。
「自己紹介は終わりましたね。次に学生用の端末を配布します。出席番号の順に取りに来てください」
暫く待って、受け取った端末は腕時計型の通信端末とかなり大型のタブレット端末。空中にウィンドウを表示してそこをスマホの様に扱うらしい。ゲームで序盤に渡されるアイテムで、ゲームメニューのシステムの一部として使われる万能アイテムだ。タブレット端末の方は教科書とパソコンの代わり、授業で使うものらしい。通信端末はともかく、タブレット端末の方はゲームではあまり使わなかったので印象が薄い。担任の加賀谷が言うには最悪、この二つに学生証だけ持って学校に来れば授業は受けられるらしい。しかし、置き勉は認められていない、盗まれた時の損失が酷いかららしい。バレた場合は厳重注意になる。
通信端末の機能を確認してみると、ログアウト項目やセーブ、再ロードの機能がなくなっていた。おかしいよな、ゲーム機能でかなり重要な要素が削れている。今までの情報を総合すると、リセマラ、セーブができない。つまり、死亡イコール即終わりのハードコアな設定って事か?。
「最後に明日の予定を話します。明日は学校内を案内するオリエンテーションとダンジョンへの初入場になります。まぁ、今日から入ってもいいですけど、準備はしっかりするように」
全員に合わせて返事をすると、その場でサヨナラになる。今日は解散の様だった。
ダンジョンに入るには特殊な資格が必要だが、学校に入学した時点でその条件は認められているので資格は手に入っている。朝の早い時間で解散となったので、オレもさっさと教室から出ていくか。
「皆、注目!」
学生鞄を持って、立ち上がった時に教壇に誰か立って話し始めた。見覚えがあるが、聞く意味ないな。隣の奴に傾聴を任せて明日聞くか。
「すまん、吉田。話聞いておいてくれ、明日聞くから、頼む」
「えっ? あっ、おい!」
恵まれた体格と身体能力を活かして、静かにそれでいて素早く出ていく。体重移動もスムーズにやるのがコツだ。
少し騒がれたが気にせず、下駄箱へ行き。靴を取って、家へと変える。
場所は分からないが、学生証に住所がメモしてあったので、端末で調べてそこへ向かう。
* * *
「ここか」
見覚えのある感じと目新しい感じが入り交ざって、頭がこんがらがってくる。移動中に懐を探って出てきた鍵を鍵穴に差し込むとしっかり入って開けられた。三階建ての一戸建て、かなり良い家に住んでるな。
玄関入ると、身だしなみ用の鏡が目に入った。そこで、改めて自分の姿を確認する。
日焼けした褐色の肌、剃り込みの入った短い金髪、爛々と光る凶悪な目、新しい制服を虐めているとしか思えないほどに鍛え上げられた体。そして整っているが、挑発的な顔立ちは控えめに言ってもチンピラの様に見える。
「コイツは野獣先輩?」
「自分に先輩付けって、何言ってんの?」
鏡をマジマジと見ていたら金髪の少女が話しかけてきた。俺の身内、だよな。それ以外に考えられん。
ここは、自然に挨拶を。
「ああ、ただいま。今日は早いな」
「はは、頭でも打った? そんな、普通にするなんて」
ひどい返しだ、ドンだけ態度が悪いんだ普段のオレ。
「まぁ、おかえり。始業式だけだったからね、今日は早かった。
「そうか。部屋の掃除でもするわ」
それだけ言って、二階へ向かう。頭の中に自分の部屋までのルートが浮かんだのでそれに従って、部屋へと向かう。
どうやら正解の様だ。扉かけに『KAISEI』と書かれている。
扉を開けると、男子学生の部屋という感じの光景が目に入ってくる。パソコンが乗った勉強机、ベッド、筋トレ用品、漫画が詰まった本棚。あ、懐かしい、こっちでも連載されてるんだこの漫画。
まぁ、それは置いておいて、クローゼットに制服を掛け、動き易い服に着替える。この後は少しダンジョンに入ってみる予定だからだ。
「それはさておき、ゲームについて纏めるか」
机に向き合い、覚えているゲームについての内容を纏めていく。
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