第10話 忍ぶ奇術師
アクトの認定戦、2戦目が始まる。対戦相手は「忍ぶ奇術師ロキ」。影を巧みに使い、相手を翻弄するトリッキーなキャラクターだ。
『バトルスタート!』
開戦の合図と同時に、ロキは距離を詰めてきた。アクトは剣を構え、慎重にロキの動きを見極めようとするが、何か違和感をおぼえる。
「後ろだな?」
ロキの視線はアクトを見ているようで見ていない、見ていたのはアクトの背後に生成した影の分身であった。
──ロキのスキル「キャスリングシャドウ」。相手の背後に影の身代わりを作り出し、自身と位置を瞬時に入れ替える技だ。
初心者には対応が難しいとされる初見殺しのスキルであったが、人からの視線を感じ取るアクトの役者としての感覚が対応を可能とした。
ロキが影に沈むと同時に、アクトは後ろに剣を振りぬいた。【鋼】の術式で威力を上げた斬撃は、後ろから飛び出してきたロキを斬りつける。そして、アクトは続けて【雷】の術式を発動。剣が雷を纏い、麻痺効果を与える一撃を重ねる。【鋼】の術式によって、体勢を崩されたロキは次ぐ【雷】の術式もまともに受け麻痺状態となった。その隙を見逃さず、アクトはさらに連続で攻撃を仕掛ける。
最初の攻防で、アクトはロキの体力を半分以上削ることに成功し、そのまま1本目は無事勝利を収めた。
:ナイス!
:キャスリングシャドウよく見抜いたな
:舞台ではかっこいいな
:舞台やめろw
コメント欄が賑わいを見せるが、アクトはまだ気を抜いてはいない。視聴者のいう通りここはまだ舞台であり、集中を切らすわけにはいかない。
アクトは深呼吸し、気を引き締め直した。
『バトルスタート!』
ラウンド2が始まると同時にロキはすかさず術式【飛】を発動。アクトに向かって、鋭い刃が飛んでくる。アクトは即座に剣を構え、スペルブレイクで斬り払う。しかし、その背後から「雷鳴一閃」の詠唱が響き渡り、アクトは回避しきれずに雷撃を受けてしまった。
「くっ…!」
アクトの身体が一瞬痺れ、動きが鈍る。ロキの狙いはここからだった。すかさず、術式【光】が発動され、閃光がアクトの視界を奪う。アクトは目を細めてその攻撃に耐えたが、続く【飛】の連撃が彼の防御を突き破ろうとする。
「戦術を変えたか」
アクトは焦りを感じつつも冷静に状況を分析する。先程まだとは違い、ロキの戦術がスキルから魔法主体へと切り替わっている。おそらく、キャスリングシャドウが通じないと感じたのだろう。
「雷よ、連なれ、轟け、天を裂け、貫き、
遠距離主体の魔法を使うロキにアクトは風の術式を発動して、一気に間合いを詰めようとするが、その瞬間、ロキの言霊魔法「雷撃連鎖」が炸裂。連続して落ちる雷撃が、アクトの攻撃のタイミングを狂わせた。
「轟け、天を裂け」
ロキは続けて術式【飛】を繰り出し、アクトを遠距離から攻撃し続ける。アクトはスペルブレイクでいくつかの攻撃を斬り払うが、連撃の圧力に押され、徐々に追い詰められていく。
「貫き、
「……っ厄介な!」
ロキの連続した攻撃により、アクトの体力は削られていく。アクトは一度、後退して距離を取り、体勢を立て直すことを決意する。ロキもその動きを見て、間髪入れずにスキル「キャスリングシャドウ」を発動。影の中に溶け込み、アクトの背後に出現する。
「しまっ……!」
雷の連撃に気を取られアクトは背後の分身に気付くのが遅れてしまい、攻撃を受けてしまう。
ロキはアクトの体力が減少しているのを見て、攻めの手を強めてきた。再び影に潜み、姿を隠すロキ。しかしそれは、アクトにとっては読みやすい攻撃であった。
「決着を急いだな」
次の瞬間影から飛び出したロキに対してアクトはスペルエンドを叩き込む。
ここまで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます