第4話 勝負の行方
試合は最終戦に突入した。両者は一勝ずつを取り合い、ここで勝利した方がマッチを制する。アクトは冷静な表情を崩さず、剣を構え直した。対するベルヴェールは少し焦りが見え始めている。魔導書を手に、今まで以上に迅速な詠唱でアクトに魔法を叩き込もうとしている。
『バトルスタート!』
開始の合図と共に、ベルヴェールはすかさず雷の言霊魔法を放つ。しかし、アクトは動じずにスペルブレイクを発動。剣が閃き、雷撃を真っ二つに斬り裂いた。ベルヴェールの魔法が完全に無力化され、アクトの剣は徐々にベルヴェールに迫る。
(焦るな…相手の動きを見極めて斬るだけだ)
ベルヴェールは詠唱を続け、次々と炎の弾や風の刃を繰り出してくるが、アクトはそれを全てスペルブレイクで処理する。攻撃をかわさず、常に【風】の術式で剣を加速させ確実に斬り払うことにより少しずつ距離を詰め、ベルヴェールを追い詰めていく。
しかし、ベルヴェールもただやられるだけではない。詠唱速度をさらに上げ、隙を見せずに反撃の糸口を探る。アクトは冷静に相手の魔法を斬り続けるが、急に剣が重くなるのを感じた。視界に映るゲージを見てアクトはハッとする。術式魔法の連続使用で魔力が限界に近づいていたのだ。
それによりベルヴェール放った光の魔法は、タイミングを誤って失敗したスペルブレイクをすり抜け、アクトにダメージを与える。冷たい痛みがアクトの身体を駆け抜けた。
「くっ……!」
術式が使えない。アクトは自分の魔力が尽きたことを悟り、剣を構え直した。だが、ベルヴェールも消耗が激しく、魔法の詠唱が止まっていた。お互いの魔力が尽き、場は一転して魔法なしの接近戦に突入する。アクトは剣を構え直し、ベルヴェールも魔導書を握りしめて身構えた。
二人の間で緊張が走る。アクトは素早い斬撃でベルヴェールの防御を崩そうとするが、相手も冷静に防御姿勢を保ち、決定打を許さない。鋭い打ち合いが続くが、ベルヴェールの防御は堅く、なかなか勝負が決まらない。
(くそ、攻めきれない……相手もかなりの腕だ)
アクトは焦ることなく、相手の動きを見極める。ベルヴェールの防御は安定しているが、攻撃に転じる隙を見つけることができず、完全に守りに徹している。アクトも無理に攻めることなく、相手の防御の隙を狙い続けた。
だが、均衡状態が長引くにつれベルヴェールが勝負を焦り始めた。魔法なしの戦いは彼女にとって不利であり、このままでは押し切られると感じたのだろう。彼女は意を決して魔導書を大きく掲げ、詠唱を再開した。最後の勝負に出る覚悟が見えた。
(ここで……決めにくるか!)
ベルヴェールの魔導書が光を放ち、周囲の空気が変わった。彼女の必殺技「ブリリアントバースト」の準備が整い、巨大な光の刃がアクトに迫る。ベルヴェールはこれまでに魔法のみを使い、スキルを控えることでマギアゲージを温存していたのだ。その結果、満タンに近いゲージを持ってこの勝負に挑んでいた。
一方でアクトは、魔法を斬り続けることでマギアゲージを溜めることに成功していた。魔力が尽きた今でも、アクトのマギアゲージは満タンに近い状態だったのだ。ベルヴェールの放つ光の刃が迫る中、アクトは冷静に心を落ち着けた。
(なら、俺も出すしかないな)
アンチマギアのスペルブレイクはあらゆる魔法を切り裂く魔断の技。しかし、必殺技を無効化することはできない。必殺技に対抗するにはアクトも必殺技を使う他なかった。
アクトは深呼吸し、アンチマギアの必殺技「スペルエンド」を発動させた。全ての魔法を断ち切り、敵を粉砕する最強の斬撃。アクトの剣が紅く輝き、魔法そのものを拒絶するかのようなオーラを纏う。光の刃とアクトの斬撃がぶつかり合い、激しい火花が散る。
「これで終わりだ……!」
アクトの剣は光を真っ二つに斬り裂き、そのままベルヴェールの防御を突破した。衝撃がベルヴェールを打ち倒し、画面には「勝利」の文字が浮かび上がる。アクトは深く息をつき、勝利の余韻に浸りながら剣を収めた。
「これがアンチマギアの力……そして、俺の戦い方だ」
アクトは初めての戦いで、自分のキャラクターと一体となった感覚を得た。そして、その勝利は次のステージへの期待とともに、新たな挑戦を予感させるものだった。
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