第3話 初陣
アクトは待機エリアの石造りの廊下を歩きながら、キャラクター選択画面を見つめていた。目の前には12人のキャラクターが並んでいる。それぞれが異なる特性と魔法を持ち、プレイヤーに多様な戦術を提供する。アクトは一つ一つのキャラクターに目を通しながら、どのキャラクターを選ぶべきか考えを巡らせていた。
「アンチマギア……魔法を斬る剣士か」
アンチマギアはチュートリアルで使用した術式魔法のみを使用する、魔法を斬る力を持つ剣士だ。機械の鎧に身を包み、冷徹な目で相手を見据える姿は圧倒的な存在感を放っている。魔法に対して圧倒的な優位性を持ち、どんな魔法も一閃で斬り捨てるその設定に、アクトは強く惹かれた。
「これにするか」
画面には「キャラクター選択完了」のメッセージが表示され、次の瞬間、アクトの視界は一瞬の光に包まれた。フィールドへの転送が始まり、彼の初めての戦いが幕を開ける。
眩い光の中で、アクトはフィールドに転送された。そこは崩れた石柱や朽ちた壁が並ぶ、古代遺跡のようなステージ。月の光が静かに降り注ぎ、戦場に幻想的な影を落としている。対戦相手は「言霊の魔導士 ベルヴェール」。冷静な表情でアクトを見つめ、手には魔導書を持っている。マギア・アリーナの試合は二本先取で行われる。まずは戦いに慣れる必要があると、アクトも冷静に剣を構えた。
『バトルスタート!』
開始の合図と共に、ベルヴェールは詠唱を始めた。空中に浮かぶ文字が輝き、雷の言霊魔法がアクトに迫る。アクトは瞬時に反応し、反射的に横に飛び退いた。しかしアクトはその行動の違和感にすぐ気がついた。
(魔法を避けてどうする……斬るべきだろう)
アンチマギアの特徴は、魔法を斬る力を持つこと。だが、これまでのゲーム経験から、アクトは攻撃を避ける癖が抜けない。ベルヴェールはすかさず次の魔法を詠唱し、炎の弾を放ってくる。アクトはまたもや一瞬躊躇し、再び避けようとしてしまうが、途中で思い直し、剣を構え直した。
「斬れ…!」
アクトは冷静に剣を振るい、アンチマギアのスキル「スペルブレイク」を発動。剣が輝き、雷撃を斬り裂いた。避けるのではなく斬る感覚が、アクトの中にしっかりと刻まれていく。だが、ベルヴェールは隙を見てさらに攻撃を重ね、アクトに再びプレッシャーをかける。アクトは慣れない動きに惑わされ、一本目はベルヴェールに奪われてしまった。
「まだ慣れていない……だけど、これで終わらせるわけにはいかない」
アクトは自分の感覚を整理し、冷静さを取り戻す。次の二本目が始まると、ベルヴェールはさらに攻撃速度を上げてアクトに迫ってきた。だが、アクトは動揺せず、ベルヴェールの詠唱に合わせて剣を振り、次々と魔法を斬り裂いていく。剣がまるで自分の手の延長のように感じられ、アクトはスムーズに相手の攻撃を処理するようになった。
(そうだ、焦るな……一つ一つ確実に斬るんだ)
ベルヴェールの詠唱が途切れる隙を見て、素早くベルヴェールに接近する。相手の驚いた表情が見えたが、アクトは冷静に間合いを詰め、素早い斬撃でベルヴェールの防御を崩す。炎の言霊魔法も雷撃も、全て【風】の術式で加速させた剣で払いのける。
次第に、アクトは自分がアンチマギアとして戦っている実感を得始めた。ベルヴェールが放つ攻撃はすべて見切り、斬り裂く。攻撃をかわす必要はない。斬ればいい、ただそれだけだ。
(これが
アンチマギアは機械の鎧を纏う剣士で、魔法を切り裂く力を持つ戦士。術式魔法に特化し、他の魔法に対して圧倒的な優位性を誇る。鋼のような鎧と冷徹な眼差しが特徴で、無駄のない戦闘スタイルが持ち味のキャラクター。どんな強力な魔法も剣で斬り払うその姿から、魔法使いたちの天敵として恐れられている。
これがアンチマギアの設定だ。そして魔法を次々と切り裂くアクトの姿はまさしく魔法使いの天敵そのものであった。
アクトは【飛】の術式で遠距離からも攻撃を仕掛け、ベルヴェールの防御をかいくぐる。【雷】の術式による麻痺で相手の詠唱を邪魔し、隙を突いて剣を叩き込む。ベルヴェールはなんとか防御を整えようとするが、【鋼】の術式で重さの乗った剣撃がさらに防御を崩し、アクトの一撃がベルヴェールの残り体力を削り切った。二本目の終了のアナウンスが響き、アクトの勝利が宣言された。
「これで一本取り返した……次で決める」
アクトは深呼吸し、冷静な目でフィールドを見つめた。次の一本が最終決戦だ。今の自分なら、必ず勝てるという確信があった。
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