第4話 暗殺者


 村に戻ると報酬を全額村に寄付した幻翠。村長は幻翠を大いに称えた。しかし


「幻翠、すまないがまた王国より依頼が来ている」

「…………、どのような、……………………」

「カイル家第三男の救助だ」

「…………」

「大商人の息子が悪党に誘拐された、奴らは灰山に潜んでいる。行ってくれるか?」

「…………、村長の頼みであれば断る理由は無い、……………………、しかし」

「しかし……」

「…………、物騒なことが増えた、……、私が居ることで村に迷惑がかかっている、……、今回の依頼を成した後、王国幹部に直接話をする、…………」

「そうか……」


 幻翠は明日準備を整え灰山へと向かうことにした。


 深夜、村は暗闇の中。幻翠も床に横になっていた。

 トントンッ

 戸を叩く音。……、こんな深夜に客か? 幻翠は愚痴る。戸を開くと一つの短刀が幻翠の左頬をかすり、ストンッと木壁に刺さった。……、物騒な客だな 幻翠はまたもや愚痴る。

 外へ出ると一人の男がこちらを伺っていた。


「キサマガ、ゲンスイ、カ?」

「…………、そうだが、……」

「キサマノクビガ、カネニナル」

「…………、賞金首にでもなったか? ………………、」

「ソノヨウダナ。オトナシク、ソノクビヲワタセ」

「…………、嫌だと言ったら? ……、」

「コウショウニナランナ」

「……、初めから交渉にはなってないがな、……、」

「フンッ」


 男は黒装束に身を纏い、暗闇と同化し動きが読みづらい。

 幻翠は瞼を閉じると精神を集中させ、すぐに物音に反応できるようにした。がしかし、その男はほぼ無音で短刀を投げ付け、幻翠の反応は遅れた。僅かに宙を切る音を確認出来るが、それは短刀が幻翠に当たる寸前のこと。それでも幻翠は深手を避けることができた。


 幻翠は暗闇での飛び道具に苦戦し、男に自らの拳を当てられないでいた。


「ホンモノカ? ウゴキガ、オソイ」

「……、ブランクがあんだよ、…………」


 焦りつつも男の動きを追うが隙を見せない。素早い動作で幻翠を翻弄する。


「スデジャ、カテナイナ」

「…………、そうか、……魔術もあんだぜ……、」

「フンッ」


 幻翠は透過率上昇の術を唱えた。

 幻翠の姿が夜に同化していく。


「キ、キエタ……カ?」

「……、こっちだ、能無し…………、」


 男が背後を振り返ると鼻っ面に正拳突きをくらった。


「カハッ……!」


 砂埃を上げ大きく後退する。


「キ、キサマ、スガタヲミセロッ!」

「……、こっちだ……、」


 膝をつき幻翠を探す男の腹部に強烈な蹴りをお見舞いした。


「グハッッ!」

「……、残念だが、王国の獄に入ってもらう…………、」

「フンッ!」


 男は色玉を懐から取り出すとところ構わず投げ付けた。飛び跳ねた色液が幻翠にかかる。


「ソコカッ!」

「……、小賢しい……、」


 男の短刀が幻翠の右脚に命中した。


「……、く、…………、」

「ミツケタゼ、ゲンスイ」


 男の放った色玉だったが、自分自身にその色液が付いていることに気が付いていなかった。幻翠はそのマーカーを目安に動きを追いやすくなった。


 幻翠は右脚の短刀を抜くと、速度上昇の術を唱え男に急接近した。背後から短刀を男の首元に寄せて内情を探る。


「……、誰の命令だ…………、」

「シラン」

「……、もう一度言う。 誰の命令だ…………、」

「クッ、イエン。 コロセッ!」

「……、あの世で後悔すんなよ…………、」


 男は自らの短刀で命を落とした。

 幻翠は男の身体を探るが、詳しい情報は見つからなかった。


 夜はまだ深い闇の中……。



//////

直接的残酷描写を避けました。



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