第16話 アイラの覚醒、試練の影が迫る

アルノたちは、魔物との激戦を終えてしばらくの間、静けさを取り戻していた。だが、目の前に現れた新たな乙女・アイラの存在が、彼らの心に新たな波紋を広げていた。彼女の肌は、まるで闇から解放されたばかりの光のように透き通っており、その姿に乙女たちの視線が集中する。


アイラは未だ震えている状態で、アルノにしがみつきながら、少しずつ自分の状況を理解し始めていた。


「私は…この魔物の中に封印されていた…誰かが、私をここに閉じ込めたんだ。」

アイラはゆっくりと声を出し、その言葉が遺跡の中に静かに響いた。彼女の記憶はまだ完全には戻っていないが、何か重要な力を秘めていることは明らかだった。


リューナは、優しい微笑みを浮かべながらアイラに近づき、彼女を包むように布をかけた。

「大丈夫よ、私たちは敵じゃないわ。あなたを助けるためにここに来たの。無理しないで、ゆっくりでいいから話して。」

その言葉に、アイラは小さく頷き、リューナに感謝の意を込めた微笑みを返す。


しかし、その場にいたリリーは明らかに不満を抱えていた。

「まさか…また新しい女が現れるなんて。アルノ、アンタってほんとにモテすぎじゃない!?少しは私の気持ちも考えてよ!」

彼女の声には明らかに嫉妬の色が混ざっており、その表情はどこか苛立ちを見せていた。


シルヴィアはそんなリリーの反応を見て、微笑みながらアルノの肩にそっと手を置いた。

「リリー、そんなに焦らなくてもいいのよ。アルノが選ぶのは彼自身なんだから。それに、彼が誰を選ぶかは…まだわからないわ。」

シルヴィアの挑発的な笑みに、リリーは顔を赤くして何か言い返そうとしたが、言葉が出なかった。


カレンもまた、不器用ながらも静かにアルノの側に立ち、彼を守るように剣を握りしめていた。

「アルノ、俺はどんな状況でもお前の味方だ。だが、この女が敵じゃないかどうか、俺はまだ完全に信用したわけじゃない。」

カレンは警戒心を隠さず、アイラをじっと見つめていた。


その時、アイラの瞳が再び光を放ち始めた。彼女の中に封印されていた力がゆっくりと解放され、周囲の空気が変わった。アイラの周りには静かな風が舞い、まるで彼女の存在を祝福するかのように光が集まっていく。


「この力は…一体何?」

アルノは驚きながらも、アイラの変化に目を見張った。彼女の中には強大な力が眠っていたが、その力はまだ完全には目覚めていない。しかし、その一部が今、彼らの前に解放されつつあった。


「私は…守護者。この遺跡の奥に隠された力を守るために存在しているの。」

アイラの言葉は、静かでありながらも強い意志を感じさせた。彼女が守るべき力とは何なのか、それはまだ誰にもわかっていないが、明らかに次なる試練に関係していることは確かだった。


アイラの覚醒と共に、遺跡の奥から再び低い轟音が響いた。それはまるで次なる試練が彼らを待っているかのような、不吉な音だった。


「どうやら、私たちは休む暇もないようだな。」

カレンが剣を構え、再び戦闘態勢に入ろうとしたその時、アイラは手をかざして彼女を制止した。


「待って。この先に進む前に、私にはまだ語るべきことがある。私の力が完全に覚醒しなければ、この遺跡の奥にあるものを封印することはできない。それが…私の使命。」

アイラの言葉に、アルノたちは次の試練が一筋縄ではいかないことを感じ取った。


「そうか…でも、君一人で抱え込む必要はない。俺たちが一緒にいる。」

アルノは力強く言い、アイラに優しく微笑んだ。彼の言葉に、アイラは一瞬戸惑いながらも、頬を赤く染めた。


アイラの覚醒が進むにつれ、彼女の記憶が徐々に戻り始める。彼女の中に秘められた力と使命は、遺跡の奥に眠るさらなる危険な力と深く関係していた。次回、アルノたちはアイラの力を使い、遺跡の最奥部へと進むが、そこには思わぬ真実が待ち受けていた——。

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