第17話 揺れる心と深まる絆

アルノたちはアイラの覚醒を見届け、しばしの休息を取ることにした。遺跡の奥から響く低い音が試練の存在を感じさせるが、今は一時的に穏やかな時間が流れている。だが、闇の静寂の中で、アルノを巡る乙女たちの感情は次第に高まり、官能的な雰囲気が満ち始めていた。


アイラは自分の使命を語り終えた後、まだ完全に覚醒しきっていない自分の体に戸惑いを感じていた。彼女の中で、力が目覚めると共に、新たな感情が湧き上がってきていた。それは、自分を助けてくれたアルノに対する、言葉では言い表せない特別な想いだった。


「アルノ…私は、あなたに感謝しているわ。でも、それだけじゃない。この胸の中で、何かが…」

アイラは照れくさそうに顔を赤らめながら、アルノの目を見つめる。その視線には、儚さと共に、何か甘美な誘惑が潜んでいた。


彼女は一歩、アルノに近づき、そっと彼の腕に触れた。その瞬間、アルノの心は大きく揺れた。アイラの透明感のある肌とその柔らかい指先が、彼の肌に触れるたびに、微妙な感覚が全身を走った。彼女の手が彼の腕をなぞり、そのぬくもりがアルノに伝わる。


「あなたは…私にとって特別な存在。だから、もっと私に近づいてもいいのよ。」

アイラの囁きは、静かな夜の中に甘く響き渡った。


その瞬間、リューナが静かに二人の間に割って入る。彼女の瞳には、優しさと共にわずかな嫉妬が宿っていた。

「アイラ、少し焦りすぎじゃない?アルノは、そんなに簡単に誰かに心を許すわけじゃないのよ。」

リューナはアルノにそっと寄り添い、その腕に自分の手を重ねた。


「私だって…アルノにもっと近づきたい。でも、無理に進めるつもりはないわ。私たちの時間はたくさんあるんだから…ね?」

リューナの声は落ち着いていたが、その言葉の奥には彼に対する深い愛情と独占欲が垣間見えた。


リューナはさらにアルノに近づき、彼の肩にそっと顔を寄せる。彼女の柔らかな髪がアルノの頬に触れ、その甘い香りが彼の心を揺さぶった。彼女の体が軽くアルノに密着し、そのぬくもりが彼の胸を温める。


「あなたを守りたいの。だから…私だけを見て。」

リューナの声には、愛情と切なさが混ざり合っていた。


シルヴィアはその様子を少し離れた場所から見守っていたが、ゆっくりとアルノの方へ歩み寄る。彼女の足取りは優雅でありながらも、どこか挑発的だった。

「アルノ、あなたって本当に罪な男ね。みんな、あなたに夢中じゃない。」

彼女の声には、軽い皮肉が混じっていたが、どこか艶やかな響きがあった。


シルヴィアはアルノの背後に立ち、彼の首元にそっと手を伸ばす。その指先が彼の首筋に触れると、冷やりとした感覚が走り、彼は思わず体を硬直させた。だが、次の瞬間、その冷たさは熱に変わり、彼女の吐息が耳元にかかる。


「私は、もっと違う方法であなたに近づけるわ。あなたが望むなら、すべてを教えてあげる。」

シルヴィアの囁きは甘く、そしてどこか危険な響きを帯びていた。彼女は挑発的な微笑みを浮かべながら、アルノの胸元に手を滑らせ、その指先で軽く彼を撫でた。


アルノはその誘惑に抗おうとしたが、シルヴィアの強烈な色香に、心が揺れ始めていた。


「ちょっと!何してるのよ、シルヴィア!」

リリーが顔を真っ赤にしながらシルヴィアに突っかかるように割り込んできた。

「アルノは…そんな女に引っかかるような人じゃないんだから!」

リリーの声には、明らかに嫉妬と怒りが混じっていたが、その中に不器用な愛情が垣間見えた。


リリーはアルノの腕を掴み、必死に自分の存在をアピールするかのように、彼の手を強く握った。

「私は…あなたのそばにいる。それで十分でしょ?」

彼女はツンデレな態度を崩さず、顔を赤らめながらも、アルノにしがみついていた。


カレンもまた、その様子を見守っていたが、不器用にアルノの方に歩み寄った。彼女は他の乙女たちのように感情を表に出さないが、その目にはアルノに対する強い思いが宿っていた。

「アルノ、お前が誰を選ぶかは…俺にとってはどうでもいい。ただ、俺はお前を守る。それが俺の役目だ。」

カレンはそう言いながらも、わずかに顔を赤らめた。彼女の強さと不器用さが、アルノの心にじんわりと伝わってきた。


カレンは一歩引きながらも、彼を守るために常にその背後に立つ決意を見せていた。


アイラが静かに口を開き、アルノたちに向けて新たな試練の存在を語り始める。次なる試練が彼らの絆を試し、アルノが乙女たちとの関係において重要な選択を迫られることになる——。

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