第15話 闇を制す光、禁断の力が導く勝利

アルノたちは、遺跡の奥深くに進み、ついに新たな試練の場に辿り着いた。そこには巨大な魔物が姿を現し、今までとは比べ物にならない強烈な力が放たれている。闇の霧が渦を巻き、遺跡全体がその恐ろしい気配に包まれていく。


「ここが最終決戦の場…だな。」

アルノは目の前の光景に身震いしながらも、決して退くことはなかった。彼の手には、デスグリモワールが握られており、その力が今、解き放たれる瞬間を待っていた。


「アルノ、私たちがいるわ。あなたを守るために全力を尽くす。」

リューナが最初に動き、強力な魔法の光を放つ。その光が魔物を貫こうとした瞬間、魔物の闇が反撃を開始する。だが、リューナはすぐにアルノを振り返り、彼に微笑みかける。

「あなたがいるなら、どんな敵でも怖くないわ。私にもっと頼っていいのよ。」

彼女の言葉は柔らかく、アルノを鼓舞するようだった。


その瞬間、リリーがリューナの前に割り込んできた。

「私が行くわ!アルノを守るのは私なんだから!」

リリーは剣を振りかざし、全力で魔物に突進する。その攻撃は鋭く、魔物の闇の一部を切り裂いた。

「見たか、アルノ!私だって強いんだから!」

彼女の誇らしげな言葉に、アルノは微笑みを返しながらも、その心にはまだ不安が残っていた。


アルノはデスグリモワールを強く握り締め、意を決したように口を開く。

「このままじゃ、今の俺たちじゃ倒せない。デスグリモワールの力を使う時が来た…。」

デスグリモワールは禁断の書だが、アルノはその力を制御しなければならないと感じていた。彼は静かに呪文を唱え始め、デスグリモワールのページがゆっくりとめくられていく。すると、黒い霧が彼の周りに広がり、強力な力が彼の体を包み込んだ。


「アルノ、気をつけて!デスグリモワールの力は…」

エリシアが驚いた表情で叫ぶが、アルノはすでに覚悟を決めていた。彼の中で渦巻く闇と光が交差し、次第に彼の手に一つの力が宿っていく。


「これが…デスグリモワールの真の力か…」

アルノの瞳に映るその力は、圧倒的なものだったが、彼はそれを利用しようとしていた。


その時、シルヴィアが彼の後ろに立ち、そっと彼に触れる。

「アルノ、気をつけて。この力はあまりにも強力すぎる。でも、もし私がいれば、もっと安全に使いこなせるわよ…」

シルヴィアは甘く囁きながら、その指先をアルノの首筋にそっと滑らせた。彼女の艶やかな声がアルノをさらに引き込もうとするが、アルノは目を閉じてその誘惑を振り払った。


「ありがとう、シルヴィア。でも、これは俺が背負うべき力だ。みんなを守るために使う!」

アルノは覚醒した力を全身に宿し、再び魔物に向かって走り出した。


アルノが魔物に向かって突進するのと同時に、リューナが魔法で彼を援護し、リリーが横からサポートを入れる。

「アルノ、今がチャンスよ!」

リューナが叫び、魔物の防御を破壊するために強力な魔法を放つ。


カレンも剣を構え、後ろから魔物に斬りかかる。

「俺もいるぞ、アルノ!今こそ、俺たちの力を合わせて勝つ時だ!」

彼女の一撃は強烈で、魔物の動きを鈍らせた。


そして、エリシアが魔法でアルノの攻撃を補佐する。

「アルノ、この一撃で決めるのよ!」


アルノはデスグリモワールの力を最大限に解き放ち、巨大な黒い光の剣を生み出した。

「これで終わりだ!」

アルノはその剣を魔物の心臓に突き刺し、凄まじい光と闇のエネルギーが魔物を包み込んで爆発した。


魔物の咆哮が遺跡全体に響き渡り、その巨大な身体が崩れ落ちていく。そして、遺跡には再び静けさが訪れた。


「アルノ、よくやったわ!」

リューナがアルノに駆け寄り、彼を抱きしめる。リリーも照れくさそうにしながら、彼の隣に座り込んだ。

「もう、あんた無茶しすぎよ。でも…さすがね。」

彼女の頬が赤く染まっていた。


シルヴィアは少し離れた場所から、意味深な微笑みを浮かべながらアルノを見つめていた。

「あなたの力、ますます魅力的ね…。でも、まだ私が教えられることは残っているわ。」

その言葉に、アルノはわずかに微笑みを返した。


---


アルノの一撃で、魔物は崩れ落ち、強烈な闇の力が消え去った。勝利の瞬間、遺跡に静けさが戻り、乙女たちは安堵の表情を浮かべていた。しかし、次の瞬間、魔物の心臓があった場所から微かな光が漏れ出し、その光は次第に強さを増していった。


「何かが…いる?」

リリーが剣を握りしめ、警戒する。魔物の崩れた残骸の中から、まるで生命のような光が周囲を照らしていた。


アルノが近づくと、その光の中に人影が見えた。そして、次第にその姿が明確になり、そこに現れたのは、透明感のある肌と長い髪を持つ、全裸の女性だった。彼女はゆっくりと目を開き、アルノたちを見つめていた。


「まさか…この魔物の中に封印されていたのか?」

アルノは驚きながらも、彼女に手を差し伸べる。


乙女は、ふらつきながらもアルノの手を取った。彼女の肌は輝き、まるで魔物の力を受けていたかのように、その存在感は圧倒的だった。

「私は…長い間、この中に閉じ込められていた…」

彼女の声はかすれていたが、どこか儚げで美しい響きがあった。


その瞬間、リリーが驚きと嫉妬を隠しきれない様子で叫んだ。

「な、なによ…この子!アルノ、何してるのよ!?」

彼女はアルノに抱きつくようにして、彼と乙女の間に割って入る。


「落ち着いて、リリー。彼女は敵じゃない。封印されていたんだ…たぶん、俺たちの仲間になってくれるはずだ。」

アルノは優しくリリーをなだめながら、目の前の乙女に微笑みかける。


リューナはすぐにその女性に近づき、優しい目で見つめた。

「大丈夫よ、私たちはあなたを助けに来たの。名前は…?」

リューナの言葉に、乙女は少し考えた後、静かに口を開いた。

「…私は、アイラ。この魔物に囚われ、封印されていたの…長い間、ここで眠っていたわ。」


シルヴィアは少し後ろからその様子を見守りながら、意味深に微笑んだ。

「ふふ、アルノ。あなたの周りには、いつも魅力的な女性が集まるわね。でも、彼女も私たちと同じようにあなたに力を貸してくれるかしら?」

シルヴィアは挑発的な口調で囁きながら、アルノの耳元にそっと近づいた。


「アイラ…君も、俺たちと共に戦ってくれるか?」

アルノが尋ねると、アイラは静かに頷いた。


アイラはまだ完全に覚醒していない状態だったのか、その身体は震えており、彼女はアルノに支えを求めた。アルノが優しく彼女を抱きしめた瞬間、リリーが再び声を荒げた。

「ちょっと!なんでそんなに密着するのよ!?私がいるのに…!」

彼女の嫉妬心は全開で、その顔は真っ赤になっていた。


リューナも、リリーとは対照的に落ち着いた態度でアイラを見つめていたが、アルノが他の女性に近づくたびに、その表情にはわずかな焦りが見えた。

「アルノ、気をつけて。彼女はまだ完全に正気に戻っていないかもしれないわ。」

リューナは冷静さを保ちながらも、どこか彼の側にいたいという気持ちが滲み出ていた。


シルヴィアはその様子を見て、少し楽しそうに笑った。

「ふふ、アルノ。これからはもっと大変になりそうね。あなたを巡る競争が、ますます激しくなるわ…」

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