第4話 影の少女、異世界に刻む新たな運命

アルノたちが冒険者ギルドの一団を退け、ほっとしたのも束の間、闇の中から一人の少女が姿を現した。彼女は黒いローブに身を包み、長い銀髪が闇夜に映えるように輝いている。アルノたちを見つめるその瞳には、深い知識と好奇心、そして何かしらの企みが宿っていた。


「あなたが、デスグリモワールの持ち主なのね。」

少女の声は静かでありながら、どこか冷たい響きを持っていた。アルノは彼女を警戒し、エリシアとリリーもまた緊張した面持ちで彼女を見つめている。


「君は何者だ?」

アルノが問いかけると、少女は微笑んだ。その微笑みは神秘的でありながら、どこか挑戦的でもあった。


「私はアストリア。デスグリモワールの真の力を知る者よ。」

彼女の言葉に、アルノたちは一瞬動揺した。デスグリモワールの真の力。それは何を意味するのか。


アストリアは、アルノの前にゆっくりと歩み寄り、その一挙手一投足には優雅さと威厳が漂っていた。彼女の瞳は深い紫色で、見つめられるだけで心を見透かされるような気がする。細身の体にぴったりとした黒いドレスを纏い、手には精緻な装飾が施された杖を持っている。その杖からは微かに魔力が放たれており、彼女が並外れた魔法使いであることを示していた。


「あなたがデスグリモワールをどう使うのか、私は興味があるわ。」

彼女の言葉には甘美さと危険さが同居していた。アルノは彼女の魅惑的な雰囲気に一瞬心を奪われそうになるが、エリシアがその前に立ちふさがる。


「アストリア…あなたの目的は何?」

エリシアは鋭い視線をアストリアに向ける。彼女もまた、アストリアの強大な力を感じ取っていた。アストリアの登場は、単なる偶然ではない。このデスグリモワールを巡る物語には、まだ知られざる秘密が隠されているとエリシアは感じていた。


リリーも剣を構え、警戒の色を浮かべる。

「怪しい女ね。アルノに近づくつもりなら、ただじゃおかないわよ。」

彼女のツンデレな態度はそのままに、アルノを守る決意が見て取れる。その姿にアルノは心が熱くなる。自分を守り、信じてくれる仲間がいる。彼は二人の後ろからアストリアを見つめ、その真意を探ろうとする。


「ふふ、怖がらなくてもいいわ。」

アストリアは軽く微笑むと、デスグリモワールに手を伸ばす。アルノは反射的にそれを引き寄せるが、アストリアはその動きを止めようとはしなかった。彼女の手がグリモワールの表紙に触れることなく、宙に浮いたまま、不思議な力を感じさせる。


「私はあなたに力を貸したいの。デスグリモワールにはまだ隠された力がある。それを引き出すためには…」

アストリアの声が囁くように響く。彼女の言葉に、アルノの心は揺れ動く。彼は復讐と成り上がりのためにこの力を使いたいと願っていた。しかし、その先に待つものが何なのか、彼にはまだ見えていなかった。


エリシアがアルノに向かって叫ぶ。

「アルノ、彼女の言葉に惑わされないで。デスグリモワールの力には代償がある。私はそれを知っているの。」

彼女の必死な声に、アルノは我に返る。エリシアの言葉には、彼を守りたいという強い意志が込められていた。


アストリアはエリシアの言葉に微笑を浮かべると、アルノに一つの提案をする。

「確かに、デスグリモワールの力には代償があるわ。でも、その代償を超えるための方法も存在するの。私はその方法を知っている。そして、その力をあなたに授けることができる。」


アルノは息を呑む。アストリアの言葉には真実が込められているように感じた。彼女の瞳は真摯で、ただ誘惑しているだけではないように見える。

「その力を得るためには、何をすればいい?」

彼の問いに、アストリアは微笑む。彼女の微笑みは、これから訪れる波乱を予感させるものだった。


「まずは私と共に来なさい。あなたがデスグリモワールの本当の力を解き放つために必要なものを教えてあげる。」

彼女の提案に、アルノは迷う。エリシアとリリーが反対するのは分かっていた。しかし、彼は彼女の言葉に何かしらの真実を感じていた。アストリアの目は、彼にとって未知なる道への鍵を示しているように見えたのだ。


アルノの心は大きく揺れ動く。彼はエリシアとリリーの信頼を裏切るわけにはいかないが、デスグリモワールの力を完全に解き放つためには、アストリアの助けが必要なのかもしれない。彼の選択が、彼自身と彼の仲間たちの運命を大きく変えていく。果たしてアルノはどの道を選ぶのか?新たな力と、さらなる試練が待ち受ける異世界無双の物語が、今ここから加速していく——。


次回、アルノの選択が運命の歯車を回し始める。裏切りか、忠誠か。そして、デスグリモワールの真の力とは——。

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