第3話 狩りの始まり、魔導書が導く異世界無双
アルノはエリシアとリリーと共に、夜の森を進んでいた。次の目的地は、彼らを追放した冒険者ギルドの拠点。彼らはそこで次の任務に就く予定であり、アルノにとっては最初の反撃の舞台となる場所だった。
デスグリモワールのページをめくりながら、アルノはその禁忌の力に心を奪われている自分に気づいた。しかし、エリシアとリリーの存在が彼を現実に引き戻してくれる。エリシアは魔法の杖を握り、冷静に周囲を見渡している。リリーは剣を抜き、いつでも戦えるように臨戦態勢を整えていた。
「ここから先は、敵の領域よ。油断しないで。」
エリシアの声には緊張が込められていた。彼女の瞳は暗闇の中でも輝き、どこか妖艶な雰囲気を纏っている。アルノはその瞳に一瞬見惚れながらも、自分の心を引き締める。
「わかってるさ。俺だってただの最弱のままじゃない。」
アルノはグリモワールを手に、次の一手を考えた。この力を使いこなすためには、ただの力任せではなく、戦術と知恵が必要だ。ノワールの存在もまた、彼にとっては指針の一つだった。
リリーがアルノの肩を叩き、彼を見つめる。
「でも、本当にアンタ、大丈夫なんでしょうね。あんまり無茶したら、私が助けてやらなきゃならなくなるんだから。」
その表情はツンとしたものでありながら、どこかアルノを心配する気持ちが見え隠れしている。
「それはお互い様だろ。リリーだって無茶をするなよ。」
アルノが微笑むと、リリーはぷいっと顔をそらす。
「ふん、誰がアンタのために無茶するかっての。」
しかし、その頬はわずかに赤く染まっていた。
その様子を見て、エリシアが小さく笑う。
「ふふ、仲がいいわね。でも、今は集中しましょう。敵は油断ならないわ。」
彼女の微笑みは、いつもの冷静な表情からは想像できないほど柔らかい。アルノはそんな彼女の表情に、心を奪われそうになる。
突然、周囲の木々の間から複数の影が飛び出してきた。冒険者ギルドのガレスとその仲間たちだ。彼らはアルノたちを待ち伏せしていたのだ。
「見つけたぞ、アルノ。今度こそお前を完全に叩き潰してやる!」
ガレスの声が森に響く。彼は剣を抜き、アルノに向かって突進してくる。
「ここで決着をつけるつもりか…!」
アルノはグリモワールを掲げ、心の中で呪文を唱えた。しかし、エリシアが彼の前に立ちふさがる。
「待って、まずは私が彼らの動きを封じるわ。」
エリシアの瞳が淡い青に光り、彼女は杖を振るう。瞬間、ガレスたちの足元から氷のツタが現れ、彼らの動きを封じる。彼女の魔法は精密で、敵の動きを封じるだけでなく、その美しさにアルノは一瞬見惚れてしまう。
「エリシア…すごい…」
「今のうちよ、アルノ。デスグリモワールの力を使って!」
彼女の言葉に、アルノは我に返り、魔導書に手を置く。心の中で、彼を追放した者たちへの怒りを再確認し、彼はページをめくる。
「ガレス、これで終わりだ…!」
アルノはガレスの名前を書き込み、彼の動きを封じる死因を思い描いた。しかし、その瞬間、彼の背後からノワールの声が響く。
「さて、君はどう使うつもりだ?」
ノワールの声に、アルノは再び自分に問いかける。この力は復讐のためだけに使うものなのか?彼を見守るエリシアとリリーの視線を感じ、彼はグリモワールを閉じた。
「まだ、今じゃない…」
彼はグリモワールを使わず、リリーに目を向けた。
「リリー、あいつらを頼む!」
「言われなくても!」
リリーは剣を振りかざし、ガレスに突進する。彼女の動きは鋭く、一瞬でガレスの剣を弾き飛ばす。彼女の瞳にはアルノへの信頼が宿り、全力で戦う姿に彼は心を打たれた。
エリシアはガレスの仲間たちに向けて魔法を放ち、次々と氷の壁を作り出す。彼女の魔法は精密でありながら、敵を圧倒するほどの威力を持っていた。
「アルノ、リリーが戦っている間に私たちで奴らを封じましょう。」
彼女の冷静な指示にアルノは頷き、再びグリモワールを構える。しかし、彼の目に映るのは、リリーとエリシアが自分を信じて共に戦う姿だった。
「俺には…二人がいる。」
アルノはデスグリモワールの力を使わず、剣を取り出す。自分の力で戦い抜く決意をした瞬間、彼の中に新たな力が目覚めた。それはデスグリモワールの力ではなく、彼自身の成長によるものだった。
ガレスたちを退け、アルノたちは勝利を収める。しかし、戦いの後に現れたのは、闇の中から現れた謎の少女だった。彼女はアルノをじっと見つめ、不気味な微笑みを浮かべる。
「君がデスグリモワールの持ち主か…興味深いわ。」
次回、アルノの前に新たなヒロインと謎の敵が現れる——。
彼の異世界無双は、さらに複雑で魅力的な展開を迎える。
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