寝取らせの凡例とちょっとした異例
寝取らせ、それは通常のNTRを発展させた高度…俺に言わせれば低度なプレイだ。
男が自分の最愛の妻、もしくは彼女を他の男(よくあるのは汚えおっさんとか、自分の友人)に抱かせて、自分はそれを遠くから見てシコるという非生産的なプレイだ。正直俺にはあまり理解出来ない。
偶に男側が子供が出来ない体質なのだが、それでも子供が欲しいという時に、自分の血の繋がった親戚に子作りを頼むというパターンもあるが、そっちの方は少し理解出来る…? かもしれない。
正直養護施設とかから子供を預かればいいんじゃない? と思うけれど、自分の血が少しでも混じった子供が欲しいという感情は捨て難い。
そういう場合は妻の方が了承している場合が多いので、やはりそれは夫婦の事情としか言えないのだろう。うーんと、少し納得がいかない気持ちもあるが、それは俺の事情だ。捨て置いてくれていい。
前者と後者の違いはただ一つ、性欲により寝取らせるかそうでないかである。
前者は完全にアウト、どう考えても自分の欲望を優先しているので気持ち悪いという感情しかない。
後者に関しては…体質的な問題なのでなんとも言えない。色々と話し込み、悩み…その果てに出た結論がそれなのなら、それは仕方のないことなのだろう。まぁ最終的に快楽オチするのが常なんだけどね。悲しみ。
さてまぁ、そんなこんな色々と思考したが、今回のいいんちょの件はどうなのだろう?
断言しよう。前者だ。
まず学生ということで子供を作る云々は論外、もしその方向だったら今すぐあのキノコ頭をぶん殴ってやる。学生という無責任な存在が責任の塊である子供を作るとはどういう了見だってな。
だがそれには及ばないだろう。あのキノコ頭は興奮出来ないと言った。興奮とは即ち性欲のこと。
更にタチが悪いのは、あの男は自分の欲求しか優先していないということだ。
寝取らせを頼むこともそうだが、俺が一番気になったのはキノコ頭のあの言い方だ。
なんというか…自分の考えが絶対に押し通すという絶対的な思念の強さを感じる。でなけりゃ前向きな返事を待ってるだなんて言えるわけがない。
総論としてあのキノコ頭は確実に脳が終わっている。まぁそれはわかっていたことだが。
一番わからないのは何故いいんちょがあの男に妙に甘いところ。俺はいいんちょの全てを知り得ているわけではないが、なんとなくの性格はわかる。
いいんちょは例え身内であろうとも間違っていることは間違っている。やりたくないことはやりたくないとキッパリ言える人間…だと思う。
もしかしたら身内にはだだ甘なのかもしれないが…キノコ頭が言った言葉に対して強い不快感を示しているのは見ていた…。
なんというか、断りたくても断れない…みたいな感情を持っているように思える。
何か弱みでも握られているのか? とも思ったけどいいんちょの反応を見るにそうでもないらしい。いいんちょは普通にあのキノコ頭に好意を持っていたからな。
まぁその好意にはちょっとだけ違和感を感じたけど。…なんだろ、純粋にあいつのことが好き…というわけではない気がする。多分そこが話のキモになってくるだろうな。
…
……
………って、何を考え込んでいるのやら…。
帰りのホームルーム中、ぼーっとそんなことを考えていた。
別に俺が気にする必要のないことなのに、なんでこう考えてしまうのかね。
何故俺はこんなに不安感を覚えているのか? それは簡単、いいんちょの件が頭から離れないのだ。
いいんちょはああ言っていたが、多分いいんちょが俺に相談することはないだろう。
こういう時のテンプレとしてはやはり一人で抱え込む場合が多い。
多分誰かに頼ることを良しとしないのだろう。そうやって一人で解決しようとして、何も出来なくて、最終的にどうしようもなくなり最悪の結末を辿る。
まぁ、その考えはわからんでもない。誰にも頼れない状況というのは存在するし、そうなったら意地でも人に頼らないなんて考えも生まれる。ソースは俺。
いいんちょの件は悲しいことだがもうどうにもならないだろう。あの態度ではキノコ頭の提案を受けることになるのだろうし、俺がそれに介入する隙間は全くない。
他人事とはこういうことだ。どうあっても関わる余地がないのなら関わらない。余人は立ち入り禁止とはよく言ったものだ。
ま、仕方ないことだと割り切るのにはもう慣れている。所詮は知り合って数週間しか経ってないしな。
自分の家族のことですらどうにもならねぇーと投げ出した俺だ。赤の他人なら尚更そういう考えになってしまう。
くわばらくわばら、せめていいんちょがそうなった後でも気軽に接してやろう。いいんちょがイイ奴なのには変わりないのだから。
─
{一週間後}
「名取に相談があります!」
どどんっ! と、効果音が入りそうな感じの声が響く。
「………?」
その言葉には自分の席で弁当を広げている俺も思わずあんぐりといった感じだ。
「…あ、あれ? 相談聞いてもらえるんじゃなかったっけ…もしかして嘘? 最低野郎?」
「…ヤ、全然覚えているぞうん。…こほん、それは屋上のあの件…ということでいいんだな?」
俺に声を掛けてきた主は当然のことながらいいんちょ。まさかの声にちょっとだけ声が裏返る。
「勿論それ。…アレからずっと考えて考えて…それでも考えが纏まらなかった。自分なりの答えは出せたと思う。けどそれを自分で納得出来ない。…だから、前に言った通りに名取に相談しにきたというわけ。わかる?」
「いちいち煽んな、ちゃんと理解しているよ」
「あらそう?」
あっけらかんとした様子のいいんちょ。首をちょこんと傾けんな美人が映える。
(んー? んー…お、俺の想像していた展開と違うぅ?)
なんだろ、全然テンプレ通りに進まない。何故だ?
別にそうなって欲しかったわけじゃない。むしろこっちの展開の方が俺には喜ばしいが…これまで人生経験から外れた事柄が起こって困惑している。
人生経験というのはその個人の全てだ。考え方生き方、行動理念もその個人の人生経験によって多々変わる。
つまり、それから外れるということは自分の経験が一切役に立たないということ…自分の予想だにしない事柄も起き続けるだろう。
そのことがちょいとばかし怖いが…頼られたんだから頼りになるようにならないとな。
「…取り敢えず場所移動するか、ここで話すのもナンだし…」
「そりゃ勿論。屋上…はちょっと嫌だな。何処かいい場所ある?」
「あー…まぁ、適当な空き教室か、体育館の裏…とか?」
「その二つだと体育館の裏かな、空き教室の鍵が空いてるとは限らないし」
「あいよ」
広げていた弁当を閉じ、それを持っていきながら席から立ち上がる。
いいんちょも俺に続き弁当を持っていきながら教室を出る。その後体育館裏に直行。
そうして、体育館裏で改めて話を聞くことになる。
その始まりの台詞はこうだ。
「結論から言うと、私は彼の提案を受け入れてもいいかもしれない…と、考えている…かもしれない」
とな。
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