4-1
「どうやら、僕がやるしかないらしいな」
ファビュラスがベッドから立ち上がった。「どこ行くの?」「そりゃあ、王とメテオ隊長を止めに行くんだよ」部屋に置いてあった装備を身につけた。「その傷じゃ無理よ」ルーナは彼を止めようとしたのだが、彼の考えは変わらなかった。
「僕がやられたら、また治療を頼むよ」
ファビュラスはウィードにそう言ったのだが、ウィードは何も答えなかった。そして剣を持って出ていった。ウィードとルーナは部屋で二人きりになった。しかし話す事は何もなかった。程なくして、彼女も彼を追いかけて出ていった。ウィードは、取り残された。これから自分はどうするべきかを考え始めた時、ベッドの下からテリーが出てきた。
「おい、これからどうするんだ」
怒ったような口調だった。
「どうするって、なんだよ」
「そんなの、自分でも分かってるだろ」テリーは苛立ちを隠せないでいた。
「か、彼女を助けにいくのか、だよ」
シードがおそるおそる口を挟んだ。その後言葉を続ける訳でもなく、それだけ言って口を噤んだ。
「彼女は君に助けを求めているんだぞ」
モックは低く強い声で言った。「でも彼女は本当は、あのファビュラスという男に助けてもらいたいんじゃないのか」「それは、君がそう思っているだけだろう」ウィードを抑え込むような声色だった。ルーナはきっと、本当に、ファビュラスに助けてもらいたいと思っている。これは嘘じゃない。だったら自分は出しゃばるべきではない。そう思っていた。「だいたい、なんで俺が助けに行かないといけないんだ」ウィードは精一杯自分に嘘をついた。
「自分がそうしたいからだろう」
「そ、そう思ったのならそうするべきだよ」
「またそうやって他人を優先するのか」
「他人を優先してる? どこが?」
「いつも自分を殺してきただろう」
「そ、そこがいいところなんだけど」
「自分の望みをいつも忘れている」
「俺の望みは、みんなの役に立つ事それだけだ」
「間違っちゃいないな」
「で、でも間違いじゃないっていうだけだよ」
「君は一つ忘れている。君の望みが、いつもみんなに迷惑をかける訳じゃない。君だって君の望みのために行動していいんだ」
ウィードは昔から、自分に厳しかった。生きるために常に現実を受け入れてきた。だからこそ強い人間になれた。けれども、その生き方はとても辛かった。求められる期待に自分を高めるための努力はとても大変だった。そしていつしか彼は、忘れてしまった。
「たまには自分のために、都合の悪い予想から目を背けていいんじゃないか」
モックがそう言ってくれた時、ウィードの中で抱え込んでいた何かが無くなった。「その通りだな」防具を身につけ、剣を持ち、扉を開けて家から出た。
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