第15話 そして物語は始まる③
王立学園では、学年ごとに成績順にクラス分けされる。
AからFクラスがある中で、突き抜けて優秀な者だけが入ることを許されるのがS特進クラス。
一般的にはSクラスとか特進クラスとか言われる。
Aクラスの上を行くレベルというだけでなく、特進に学年は関係ない。
新入生の第一学年から第三学年までは、一緒に机を並べて勉強する。選ばれるのは学年でもほんの僅か。年によっては、誰も選ばれないこともあるらしい。
そんな成績優秀者だけが入れるトップクラスに、ジュストは入った。
「本当は、手紙に書こうと思ったんだけど、直接言いたくて我慢していたんだ」
「す、すごいよ兄上」
キラキラした目でジュストを見つめると、「ありがとう」と言って微笑み返してくる。
「確か今の特進って、王太子様もいらっしゃるのではなかったかしら」
「え、そうなの、王太子様って、確かジュストの二つ上だよね」
ジュストの手紙にも出てきた王太子。正直あんまり小説では出てこなかったので、関心がなかった。
「特進に入ると、身分が低くてもそれだけで一目置かれるというくらい、エリートなんだ。さすがに私は無理だったな。ステファンも入るなんてスゴイぞ」
「今夜はお祝いね。ジュストの好きなものを作るように料理長に言わなくては」
「そうだな。それでは私も何か記念になるものを買ってあげよう。馬が良いか、それとも新しい剣にしようか」
本当は卒業するときに贈ろうと思っていたが、前倒しで手配しようとラファイエが言う話が大きくなって、ジュストが慌てる。
「そ、そんな大袈裟です。気持ちだけでいいです」
「遠慮しなくていい」
「僕も何か兄上に上げたい。お父様みたいに良い物は買えないけど」
「ありがとう、皆、俺は、この家に引き取られて良かった。俺は幸せだ」
ジュストの目から、うれし涙が溢れた。
「ジュスト、勉強を頑張ったのはお前自身の力だ。私たちに血の繋がりはないが、お前のような息子を持てて誇らしいぞ」
「私たちの自慢の息子よ」
「ぼ、僕も、兄上を尊敬している」
溢れた涙を手で拭い、反対の手でジュストは僕の頭をポンポンと叩いた。
「俺も、ギャレットが大好きだ。父上も母上も大好きだ。モヒナート家の皆が大好きだ」
「だが、特進は甘くないと聞くぞ。油断するとすぐに落ちこぼれるそうだ」
「わかっています。最後まで特進でいられるよう精進します」
「そんなに気負わなくていい。たとえ落ちこぼれても責めたりしない」
「でも、特進で卒業できれば、将来国の要職にも就きやすいと聞きました。なので、出来るだけ頑張ります」
将来モヒナート家を継ぐのはギャレットだと言っていた言葉を思い出す。
特進クラスで卒業したら、たとえモヒナート家を継がなくても、将来は安泰だとジュストは考えているのではないか。ふとそんな考えが頭を過ぎった。
「さあさあ、話はこれくらいで、朝食を食べましょう」
「そうだな」
「兄上、朝食を食べたら学園のこと、もっと色々聞かせてくださいね」
「ああ、でも、俺もまだ通い出して少ししか経っていないから、そんなに話すことはないよ」
「それでも、聞かせて」
ジュストはレーヌに会ったんだろうか。それが気になる。
この前女性との出会いについて仄めかしたとき、何だか怒った感じだったから、話すタイミングに気を付けないと。
そう思いながら、皆で朝食を食べた。
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