第13話 そして物語は始まる①

 一ヶ月後、ジュストとステファンは王立学園に入学した。入学式の前日が入寮日だったため、それに合わせて前日の午後には出発していた。

 ベッドや机など大きな家具は寮に備え付けだし、基本的には制服なので、下着や日用品や文房具などの細々した物だけを持ち込む。

 それに地方の貴族と違い、同じ王都内だから毎週末には帰ってくるので、荷造りはとても簡単だった。


 学園は王都の中心地から少し外れた、学術区域にある。そこは王立学園以外にも、大学や専門の研究機関などが集まっている。

 イメージは、大英帝国のオックスフォードとかだろうか。


 元々の作者が日本人だから、学園の始まりは日本と同じ春。季節も日本と同じ四季があるが、比較的夏も冬も過ごしやすい気候だ。

 あの夏の蒸し暑さや、凍りつくような冬の寒さはなく、これは作者様々だった。

 変わりに春と秋は最高の季節だ。

 学園のイメージは、高等学校と専門学校を併せた感じ。

 貴族の子女は、基礎は家で家庭教師から教わる。家庭教師を雇う余裕がない場合は、親や執事や家令から教わる。

 入学してすぐに試験が行われ、二日後その結果でクラスが編成される。それまでは学園内で好きに過ごすらしい。


 そして入学の翌日、ジュストから早速手紙が届いた。


 こんなに早く届くとは思わなくて、ちょっと驚いた。


 同じ王都内にあるのだから、朝出せば夕方には手紙は届く。


 内容は寮の二人部屋の相方はステファンだということと、寮の食事はまあまあで、寮長がこの国の王太子で、副寮長が宰相の息子だということ。

 それから入学式での学園長の話がとても長くて退屈だった。女子生徒の何人かは貧血で倒れたと書いてあった。

 そして後半はギャレットと離れてどれだけ寂しいかということがツラツラと書かれていた。

 前半がすごく事務的に箇条書きなのに対し、後半はすごい長文だった。


「もう…兄上ったら」


 ちょっとブラコン過ぎませんか?


「レーヌとの出会いは…確か入学式に彼女と廊下でぶつかり、それからクラス編成で同じクラスになったんだったかな」


 最初はただのクラスメイトとしてしか知らなかった彼女を意識するのは、放課後の図書室。


 教師に言われて二人で図書の整理をさせられている時、ジュストが偶然彼女の手首に痣を見つけたことで、彼女のことを気にかけるようになる。


 というような流れだった。


 もう前世のことはあまり思い出せなくなっていて、記憶を思い出した頃に書き出した覚え書きを読んで、そうだったのかと確認していた。


 僕はその手紙に対し、ステファンと仲良くね。

 僕も兄上がいなくて寂しい。

 勉強頑張ってください。兄上なら学年トップだと思うけど。

 帰ってくるのを楽しみに待っています。

 と言うような内容を書いて送った。

 一緒に父上たちからの手紙と共に送ったけど、その後ジュストからの返事はなかった。


 日曜日に家を出て、入学式は月曜日。それからあっという間に週末になった。


「おはよう、ギャレット!」

「え、兄上?」


 土曜日の朝、まだ朝日が昇ったばかりの時間に、ジュストは僕の部屋に現れた。

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