半端者 エピソード3
『イッショにシんじゃおうよ!!』
そう言い放つギビヤに、ギルスは乗った。
『…なるほど、いいね。あの世じゃ、一緒にいられるのかな』
『たぶん!!アタシたちはエイエンにイッショー!テンセイもイッショー!』
『はは、転生か。転生したら、ギビヤとちゃんと双子として、永遠に一緒にいたいな』
『アタシもギルスとイッショがいいー!!』
『ボク、来世はロクザンなんかに負けないほど強くなって、自分もギビヤも守れるようになりたい』
『ギルスかっこいー!!アタシもギルスのことマモる!!だからずっとイッショー!!あ、リゼンもいるとウレシイかも!』
『そうだね。確かに』
そんなやりとりの末に、二人は海に沈んだ。
俺がそれを知ったのは次の日のことで、いつもの海でロクザンたちが何かを囲んでいるのを見かけた時だった。
ロクザンたちが取り囲む真ん中に、打ち上げられた二人の体があった。驚いた。たった十二歳の子供二人が、自分から死んだ。しかも手を繋いで、笑って。
ロクザンは何を考えてる?本気でそう思った。守るってなんなんだ。あんたらはギルスの家を壊したし、双子を生き別れにさせた。人間を守る気なんて、さらさらないんだろう。特別仲が良かったわけじゃないけど、見知った子供の死は心に来るものがあった。
俺はまた、ロクザンが嫌いになった。
だから、攫ってやったんだ。二人の体を。
ロクザンたちは困惑していた。少し目を離した隙に、そこにあったはずの遺体が消えていたからだ。双子さんの体を抱えた俺は、自分の最悪な運命に二人を巻き込んだ。俺は、俺をヴォイドにした研究所へ、二人を運んだ。まだ、生きてほしかった。
俺は新たな二人のヴォイドを生んだ。第二の新たな人生。最悪な人生。目を覚ました二人は、姿を変えぬまま二人一緒にいられる道ができたことを喜んだし、俺に感謝した。罪悪感がないといえば嘘になる。人間にしろヴォイドにしろ、嫌われ者なのは変わらないのだ。
でも喜ぶ二人の顔が、俺は嬉しかった。
「そーいえばリゼン、このまえロクザンのイシャのとこいったんでしょー?なにしにいったのー?」
「カルネラ、だっけ。あの騎士団長に邪魔されたって聞いたけど」
「あぁ」
先日の戦いの最中、俺は騎士団の救護班に所属する敏腕と噂の医者である青年と取引をした。ヴォイド側につくなら街への攻撃を止める。そう言った。
彼ほどの腕前の医者なら、もしかしたら俺たちヴォイドを助けてくれるんじゃないか、と思ったからだ。
「ヴォイドに医者は必要ないだろ。何したの。煽り?挑発?」
「まさか。まぁ、結果的に団長さんを煽っちゃったみたいだけど」
俺たちヴォイドは『失敗作』だ。イカれた研究者の人体実験の失敗作。
研究者は、本当はロクザンを生み出そうとしていた。人間からロクザンへと体を変化させる実験をしていた。
ロクザンを生み出そうとしたら失敗して、代わりに新たな人種『ヴォイド』が生まれた。
ロクザンのように尖らせようとした耳の代わりに、頭から生えたツノ。
ロクザンのように五百年にしようとした寿命は三百年になり、ロクザンのように光の魔法を唱えさせようとした口からは闇の呪いを唱えた。
お手本のような大失敗。真逆の存在。
敏腕の医者なら、俺らヴォイドをロクザンにできるんじゃないか、と思った。
ダメ元でも、やる価値はあると思った。だから話そうとした。でも団長さんに邪魔されたんだけど。
「ねぇ。双子さんはロクザンになりたいとか、思う?」
「は?」
「どういうコトー???」
「ほら、ヴォイドって元はロクザン実験の失敗作でしょ?だからロクザンになってれば…みたいなことって、さ」
「ないな」
「ない!!!!」
「ないの?」
「うん。だってリゼンと敵対するのは嫌だ。それにあんなクズ集団の仲間なんて死んでもごめんだね」
「アタシはベツにイヤじゃないけどー、ギルスとリゼンがいないとこにいくのはヤー!!」
「…そっか」
「…でも、リゼンの命を考えたら、ロクザンの寿命の長さの方がいいのかも、とは思うよ」
「リゼンのイノチ、クルっちゃってるからねー!!」
「はは、そうだね」
俺は双子さんと一緒に砂の城を作りながら、自分の命について考えた。
垂らしていた横髪を耳にかける。
俺の耳は尖ってる。ロクザンの耳だ。
でも俺は魔法が使えない。人間だ。
でも頭からはツノが生えてる。ヴォイドだ。
…俺の体は、三つ全ての人種が混ざっている。
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