第2話『迫りくる陰謀』



剣太郎は隣国への道を進んでいた。道中、霧が立ち込める山々の中を一人歩く彼の心には、揺るぎない決意があった。藩の未来を守るため、彼は言葉で戦を防ぐ道を選んだ。しかし、その道がどれほど険しいか、まだ彼自身も完全には理解していなかった。

一日の旅路を終え、剣太郎は山中の小さな宿場町で一夜を過ごすことにした。辺りは静まり返り、虫の鳴き声だけが響く。その静けさが、剣太郎の心にある不安をかき立てた。



水野剣太郎(内心)

「隣国は本当に和平を望んでいるのだろうか…。いや、疑念を抱くのはまだ早い。私は言葉で彼らを説得しなければならない。」


彼はそう自分に言い聞かせ、旅の疲れを癒すために瞑想に入った。

翌朝、剣太郎は再び旅を続けた。山道を越え、いよいよ隣国の領土に入った。そこは大きな城下町で、商人や農民たちが行き交い、活気に満ちていた。しかし、その活気の裏に隠れた緊張感が、剣太郎には感じ取れた。

町の広場に足を踏み入れると、ふと耳にする声があった。


農民

「隣国から使者が来るらしいが、戦が避けられるかどうか…」


商人

「和平だなんて夢のまた夢さ。戦が始まれば、私たちの生活もどうなるか分からない。」


その言葉を聞き、剣太郎は不安を抱きつつも、表情には出さず、足を進めた。彼が向かう先は、隣国の大名である織田直江が待つ居城であった。

居城に着いた剣太郎は、警護に囲まれたまま城内に案内された。重厚な扉が開かれ、奥へと続く長い廊下を進んだ先に、織田直江が鎮座していた。年齢は40を超え、冷酷で策謀に長けた人物であるという噂があった。


織田直江

「よく来た、水野剣太郎。」


織田は鋭い目で剣太郎を見つめ、声をかけた。その目は相手の心を見透かそうとするように冷たく光っていた。


水野剣太郎

「この度、我が藩主、大石景勝の名において和平の使者として参上いたしました。どうか我々の和平への意志をお汲み取りください。」


剣太郎は深々と頭を下げ、懐から藩主の和平文書を差し出した。織田直江は文書を一瞥し、しばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。


織田直江

「和平…か。だが、水野、そなたは本当に和平が成ると信じているのか?」


その問いに、剣太郎はすぐには答えなかった。織田の目には試すような光が宿っていた。剣太郎は一瞬ためらいを見せたが、すぐに強い声で答えた。


水野剣太郎

「はい。我々は戦ではなく、言葉によって平和を築く道を信じています。」


織田直江

「…その言葉が通じると良いがな。」


織田は冷笑を浮かべ、和平文書を手に取り、ゆっくりと読み始めた。剣太郎は、その冷たい態度に緊張感を覚えつつも、黙って待った。

剣太郎が城を出ると、日が傾き始めていた。織田直江との交渉は一見すると穏やかに進んだように見えたが、その裏には何か見えない力が働いているのを感じた。

道を歩いていると、不意に背後から声が聞こえた。


謎の声

「和平の使者様か…だが、それで済むと思うなよ。」


剣太郎が振り向くと、そこには数人の男たちが立ちふさがっていた。彼らの目には敵意がはっきりと宿っていた。


水野剣太郎

「お前たちは何者だ?」


刺客1

「俺たちは隣国の和平を望まぬ者だ。お前みたいな使者、無事に帰らせるわけにはいかない。」


剣太郎はすぐに刀の柄に手をかけた。男たちは剣を抜き、彼を囲んでいた。


水野剣太郎

「戦を避けたいなら、今すぐ立ち去れ。これ以上の無意味な血は流させない。」


しかし、男たちは笑いながら近づいてくる。


刺客2

「そんな綺麗事が通じると思うなよ、和平使者。」


その瞬間、男たちが一斉に襲いかかってきた。剣太郎は瞬時に刀を抜き、刃を交える。彼の剣は鋭く、敵の攻撃を的確に防いでいた。だが、数の力は侍一人には厳しいものだった。数度の斬り合いの後、剣太郎は腕に軽い傷を負った。


水野剣太郎(内心)

「数が多すぎる…。だが、ここで引くわけにはいかない。」


彼は息を整え、再び立ち向かおうとしたが、突然、背後から誰かが飛び込んできた。


謎の人物

「剣太郎!下がって!」


その声と共に、剣太郎の横を鋭い一撃が通り過ぎ、刺客たちを弾き飛ばした。剣太郎は驚きながらも、その人物の顔を見た。


藤堂葉月

「遅くなってごめんね。でも、一人じゃ無理だと思ってたわ。」


葉月は微笑んで立っていた。その姿は、いつも通り冷静で、頼もしかった。


水野剣太郎

「葉月…ありがとう。助かった。」


葉月は軽く頷き、二人は背を合わせながら残った刺客たちを相手にした。剣太郎と葉月の息はぴったり合っており、数人の刺客たちも次々と倒されていく。

最後の一人が地に伏したとき、二人はようやく息をついた。剣太郎は葉月に感謝しつつも、心の中に暗雲が広がっていくのを感じていた。隣国は表向きは和平を受け入れているが、その裏で何か大きな陰謀が動いているのではないかと疑い始めていた。


水野剣太郎

「隣国は本当に和平を望んでいるのか…?」


藤堂葉月

「彼らが何を考えているのか、私もまだ分からない。でも、藩に戻るまでは気を抜かないで。」



剣太郎は葉月の言葉に頷き、再び藩主のもとへ戻るための準備を整える。和平への道はまだ始まったばかりだったが、すでに多くの試練が待ち受けていることは明らかだった。

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